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今週の福島原発(8/16~8/23)~地下水遮水壁の検証、放射性物質の現況、関東の放射能汚染~

今月も17日に福島原発の進捗状況が発表されました(リンク [1])。
まだ予断を許す状況ではありません(ex.京大の小出助教は水素爆発の危険性を指摘しています [2])が、汚染水の処理装置の運転開始など、嬉しいニュースも増えてきています。
今回は、工程表の中でも
 1.地下水の遮水壁の工法検証
 2.メルトダウンした炉心はどのぐらい放射性物質が残っているか?
を検証し、2に関連する事項として
 3.関東の放射能汚染はどうなるか?
をまとめていきます。
1週間の要点(リンク [3]
8/17 新しい汚染水処理装置の運転開始
8/18 追加浄化装置の本格稼働
8/19 浄化装置「サリー」の単独運転開始
8/20 建屋の水位が低下? 新浄化装置、順調に稼働
8/21 1号機周辺温度が100度を下回る状態が継続できている
8/22 3号機の注水減を検討中
8/23 原子炉への注水方法変更
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 1.地下水の遮水壁の工法検証
今回、遮水壁に採用されるのは「鋼管矢板」といわれる工法です。
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画像は コチラ [6] と コチラ [7] からお借りしました。
 
鋼管矢板工法は鋼管を連結した仮設の壁で、土圧や水圧に耐える力が大きく、港湾・河川(岸壁・護岸・波除堤)、都市土木(土留め・締切り)、橋梁(鋼管矢板基礎)などに広く使用されています。
鋼管の連結部分が遮水のポイントとなりますが、最近では性能のよい止水材が開発されており、大きな問題はなさそうです。
 
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 ↑工事範囲 画像はコチラ [8]からお借りしました。 
 
工事は海まで囲い埋め立てるようですが、おそらく地中埋設物を避けるためでしょう。築年数が古いこともあり、地下埋設物の位置が図面と異なることが多発しているようです。(参考:リンク [9]
 
遮水壁は鋼管を幅800メートルの板状につないでいくため、全工程が終了するのに2年かかると言われています。もともと年末に行なわれる予定でしたが、8/10から海側の工事が始まりました。
 
地下埋設物の問題が課題としてありますが、工事が終われば汚染水の海洋流出防止に効果がありそうです。速やかな工事になるよう応援していきます。
 
 
 2.メルトダウンした炉心はどのぐらい放射性物質が残っているか?
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画像はコチラ [10]から
 
これまでに放出された放射性物質は分かっているだけで450京ベクレルあります。
 

参考:ウィキペディア「福島第一原子力発電所事故」(リンク [11]
・原子力安全・保安院は、事故により放出された放射性物質の総量は計算上85万テラ(85京)ベクレルと解析している
・2号機から放出された高濃度汚染水が含む放射性物質の量は、東電発表の水量と濃度に基づけば330京ベクレルである
・6月3日、東京電力は、1 – 4号機および集中廃棄物処理建屋の地下にたまっている放射能汚染水の放射能が推定で72京ベクレルに上ると発表した。

 
一方で、福島第一原発で被害があった1~4号機にある放射性物質の総量はどのくらいだろうか。「原発放射の基礎知識」よれば100万キロワット級の原発のもつ放射性物質は約1万3600京ベクレルとされています。
福島第一原発の発電量は1~4号機の合計で280万キロワットであり、単純計算すると、約3.8万京ベクレルとなる。これまで放出された放射性物質が450京ベクレルだとすると、これまでに放出された放射性物質は総量の1.2%となり、原子炉建屋内にはまだ、そのほとんどが保存されていることになります。
 

参考:原発放射能の基礎知識(リンク [12]
・原子炉の中の燃料棒にたまっている核分裂生成物のもつ放射能は、100万キロワット級原発の場合、半減期1時間以上の主な放射性物質のものだけで約1万3600京ベクレルもある(1京は1万兆)。
・東海地震の震源域にある浜岡原発では、4基の原子炉が運転中で電気出力は合計360万キロワット。4基あわせて5万京ベクレルをこえる放射能をもつ放射性物質が内臓されている。

 
福島第一原発にあるウランの総量についてはこちらも参考になります。
福島第一にあるウラン燃料の量って!? 2466t 広島型原爆の1233倍、チェルノブイリ 19倍 [13] 
 
 
 2’.広島や長崎の原爆と、福島原発事故との放射性物質の残留時間の違いは?
参考 リンク [14]
 
放射性同位元素は、崩壊するときに放射線を出します。
短い時間でたくさん崩壊する(=半減期が短い)ものほど、たくさん放射線を出します。
 
したがって、半減期のとくに長いもの(たとえば未反応のウランやプルトニウム)は当時拡散したままほとんど減ってはいませんが、当時も今も放射線の量は少なくなっています。
 
一方、半減期の短い核反応生成物は、投下直後に大量の放射線を出したけれど、もはや残っていません。
 
広島原爆はウラン型なのでプルトニウムは含まれていません。長崎原爆はプルトニウム型でしたが、使われたプルトニウムは8kgです。これが核爆発で拡散しましたので、濃度は非常に低くなっています。
 
チェルノブイリとの違いは、なによりもまず放射性物質の量の違いです。原子爆弾は一瞬の核分裂連鎖反応に過ぎませんが、原子力発電所は運転中継続して核分裂を起こしています。チェルノブイリで放出された放射性物質の量は広島原爆の800倍と言われています。
 
今回の福島原発ではいったいどのくらいの放射線量が放出されているのでしょうか?
 
ネット界での意見を紹介します。 
●東電の事故収束に向けた進歩状況資料(8月17日政府・東電統合対策室)から
 

東電の事故収束に向けた進歩状況資料の中で掲載されている「放射性物質の現時点での放出量を評価」を見ると、大気中に放出されている量だけで、現状約2億ベクレル/時の放射性物質が放出し続けていることになる。事故後3月15日から現在までの計測(11日の事故当時が最も放出していたと思われるがデータは存在していない。)では約1000万分の1まで減少している。しかし、それでもまだ2億ベクレルもの放射線量が出続けているのだ。
この放出量グラフをもとに現在までの総放出量を計算してみると、約1京ベクレル(約10030兆ベクレル)の放射線量が出されたことになる。(海水への流出を考えればそれ以上になる。)

 
 
ぼんたかさんのHP(リンク [15]

広島原発で放出された放射線量は106兆ベクレルと計算している。それを元に考えれば、概算、すでに10個の広島原爆が大気中に放出されたということになる。

 
 
●(東京大学アイソトープ総合センター長の児玉龍彦教授)
参考 リンク [16]
 

…熱量で見て広島原爆の29.6個分の放射線総量が漏出しています。ウラン換算では20個分のものが漏出しています。…
 
…原爆による放射能の残存量と、原発から放出されたものの残存量は1年経って、原爆が1000分の1程度に低下するのに対して、原発からの放射線汚染物は10分の1程度にしかならない。…
 
…今回の福島原発の問題はチェルノブイリ事故と同様、原爆数十個分に相当する量と、原爆汚染よりもずっと大量の残存物を放出したということが、まず考える前提になります。…
 
…トロトラスト(造影剤)の場合は、第一の段階でP53の遺伝子がやられて、それに続く第2、第3の変異が起こるのが20年から30年かかり、そこで肝臓癌や白血病が起こってくることが証明されています。…
…1991年に最初、ウクライナの学者が甲状腺癌が多発しているという…統計学的に有意だということが分かったのは、20年後です。…
 
これらは、内部被爆が重大な疾患を伴ってでてくるのは20年後ということ示している。初期段階では鼻血や下痢が見られるが、知っての通り一定量放射性物質を取り込むとあるとき急性疾患が現れる。そのため、特に20年後に親になる世代はできるだけ放射性物質を取り込まないよう努力していく必要があるだろう。

 
 
●東海地震で原発が崩壊したら原爆が万個単位で空に放たれる!!
参考 リンク [12]
 

東海地震の震源域にある浜岡原発では、4基の原子炉が運転中で電気出力は合計360万キロワット。4基あわせて5万京ベクレルをこえる放射能をもつ放射性物質が内臓されている。
いたるところに原発を抱える日本は原爆地雷国しか思えない。

 
 
 3.関東の放射能汚染はどうなるか?
前回の記事「4.関東の放射能汚染はどうなるか? [17]」の中で、関東土壌汚染調査マップについて触れましたが、、、
先週、神奈川県川崎市の児童プール近くで高い放射線量が検出されたとの情報がありました。
●平間公園のプール付近、高い放射線量のスポット 
参考 リンク [18] リンク [19]
 
8/18川崎市は、市営の平間児童プール(同市中原区上平間)に隣接する管理棟横にあった落ち葉から1キロ当たり1万2400ベクレルの放射性セシウムが検出されたとして、19日からプールの利用を中止すると発表。
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(画像は川崎市会議員 竹田氏のブログ [20]より)
 
地面の状況は、表面は乾いた葉等で覆われていますが、それを除けると湿り気がある土壌。プールサイドに散っていたり、プールに浮いていた落ち葉も、この場所に集積されていたとのこと。空間線量も0.5μSv/h以上、1.0μSv/h近い値を示す所もあったもよう。
 
※文部科学省が定める一般公衆の年間線量限度1mSv(ミリシーベルト)以下は、時間当たりでは、自然界の放射線量0.03~0.1μSv/h(マイクロシーベルト/時間)を含んでも、0.19μSv/h(マイクロシーベルト/時間)。
 
※今年6月に発せられた国の通知では、下水汚泥は、放射性セシウムの合計値が8,000Bq/kg以下であるならば、跡地を居住等にしないこととした上で、土壌層の設置、防水対策等の適切な対策を講じた埋立処分を可能としている。1キロ当たり1万2400ベクレルという値は、これの1.5倍。
 
こうした事態を受け、公園等の放射能対策を進めているようですが、上記以外の場所からも(一カ所ですが)、基準を超える放射線量が検出されているようです。
※川崎市、市内公園の放射線量の測定展開と結果速報 リンク [21]
 
 
また関東だけでなく、新潟でもこんな情報が、、、
 
●雨水の泥から2万7000ベクレル!「新潟県の保育園と幼稚園でセシウム検出」 リンク [22]
 
新潟県十日町市は22日、市が保育施設の土壌などの放射性物質調査を行った結果、市立白梅保育園(春日町)で雨水を集める槽にたまった泥から1キロ・グラム当たり1万8900ベクレル、私立愛宕幼稚園(川原町)で草葉の堆積物から同2万7000ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表した。8000ベクレル超~10万ベクレルは管理型処分場での仮置き対象となり、市は県と処分方法について相談する。
 
 
雨水や泥、落ち葉などが集積しやすい所に、放射性物質が流されて集まり、濃度が高くなっている場所があるようです。
福島から比較的離れた地域においても、こうしたホットスポットが今後いくつも見つかる可能性が高いと思われます。

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