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今週の福島原発(8/2~8/9)~福島第一の現況、事故収束への中期見通し、関東土壌汚染

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※福島第一原子力発電所1号機タービン建屋2階 高線量検出箇所(8/2東電)

<今週の福島原発の動き>
8/2 屋内でも5000mSv超 
8/3 高濃度放射線量の検出 
8/4 流量回復へバイパスを設置 
8/5 3・6シーベルトの現場写真を公開 
8/6 処理施設で高濃度汚染水700リットル漏れる 
8/7 汚染水浄化用ポンプの不具合が再発、原因を調査 
8/8 3号機燃料の収束作業を見直し 
8/9 プロセス主建屋へ溜まり水の移送開始

今週の情報で気になるのは、ひとつは原発建屋内でも非常に高い放射線量が計測されたこと。これによる現場作業員の被ばく、作業が著しく困難になることが懸念されます。また汚染水処理については故障や不具合が続いています。1期のシステムに続いて2期のシステムが稼働に入っていますが、うまくいくのかどうか。

今日のメニューです。
1.福島原発の現況と懸念
2.現場のマンパワーは足りるのか?
3.事故収束への中期的な見通しは?
4.関東の放射能汚染はどうなるか?


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◆1.福島原発の現況と懸念

福島原発の事故以降、週ごとに情報を整理してきまいたが、なかなか状況もわかりにくくなっています。そこで、各号機ごとの現状を整理してみました。
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拡大画像→画像の確認 [3]
(表は 日本原子力産業協会 福島第一発電所1~4号機事故収束に向けた対応状況(8/9 12:00版) [4]を参考に作成)

<現在の大きな懸念>(参考:  カレイドスコープ [5]

1)4号機建屋は地盤沈下のために傾いていましたが、懸念されていた5階部分にある使用済み核燃料プールの補強工事は終了しました。東電の計算によれば、耐震強度が2割増した、ということですが、建屋そのものの耐震強度が増したのではなく、あくまでプールが自重で倒壊しにくくしただけです。今後、大きな地震が起こったら・・・という懸念は消えません。

2)3号機はプルサーマルで最も危険なのですが、なにしろ使用済み核燃料プールの状況が分りません。ロボット等で、早急に把握する必要があります。

3)1号機建屋と2号機建屋の間にある、ベントのときに格納容器内の空気を排出する煙突の配管のつなぎ目部分から、10シーベルト以上という高い線量が計測されました。
もし、この配管のつなぎ目に燃料の塊or粉末の集積があるならば、放射性物質の粒子が外に飛び出してくるかも知れません。補強が必要になりますし、台風が心配です。しかし、補強や遮蔽は簡単にはできません。

4)特に心配なのが、作業員の必要人数が確保できなくなる懸念です。10シーベルトの他にも1号機建屋内で5シーベルト/毎時という、とんでもない高線量のスポットが見つかりました。作業員は、近づくことさえできないでしょう。今後、「作業のできる場所」は、徐々に狭められていく可能性があります。

5)おそらく1、2、3号機ともメルトスルーしており、地下の状態がまったくわからなくなっています。地下の岩盤まで到達するような深さまで地下ダムを作って、核燃料から溶け出た放射性物質の地下水流出を防ぐ計画が実行に移されましたが、作業は難航しているようです。

◆2.現場のマンパワーは足りるのか?

現場では高濃度の放射線量が計測されていること、またこれからの作業が非常に長期にわたることを考えると、作業員が続くのかどうか、マンパワーが続くのかどうか、とても心配になります。
被ばくリスクに加えて、過酷な労働条件、ずさんな管理、人材募集のよからぬ話などが漏れ聞こえてくる状況ですが、国家の主導で手を打つべきではないかと思います。

※下請け原発作業員に“中間搾取” 日当、10万円が8千円に [6]
※運転手のはずが原発敷地内作業…あいりんで紹介 [7]
※だまして原発で働かせないよう…東電などに要請 [8]
※東電、暴力団排除宣言 福島第一原発復旧作業から [9]
※「線量計つけず作業、日本人の誇り」 海江田氏が称賛 [10]
※東電を厳重注意…原発事故作業員184人不明 [11]

◆3.事故収束への中期的な見通しは?

国の原子力委員会において、廃炉に向けた中期的な課題の検討がはじまったようです。
東京電力(株)福島第一原子力発電所における中長期措置検討専門部会(第1回) [12] 

通常、最終的な事故収束=廃炉に至るまでには、大きくは、①核燃料の取り出し、②放射性廃棄物の処理が必要になります。
現在は核燃料の冷却作業が行われていますが、そもそもメルトダウン→メルトスルーした燃料がどういう状態でどこにどれだけあるのか、分かっていない中での作業です。それが明らかになるだけでも相当の年数がかかると予測されます。

1979年のアメリカ・スリーマイル島原発事故では、格納容器に作業員が初めて入れたのが1年半後、原子炉の中がビデオ撮影できたのが3年後、汚染水処理を終えるのに3年半、燃料の取り出しを終えるまでに11年かかっています。今回の燃料損傷はそれよりはるかに酷いこと、さらに3基メルトダウンしているわけですから、20年くらいはかかるという予測もあります。
加えて、膨大な放射性廃棄物(瓦礫、プラント、建屋、汚染水、その他副次的に発生する汚染廃棄物など)の処理も難題です。

国、東電、専門家はあくまで「燃料の冷却→燃料取り出し」という通常の廃炉を前提(目標)に検討を進めているようですが、そもそもそうした通常の廃炉手法が可能なのかどうか、それすら全く見通しが立たない状況だと思われます。
もしかすると、(所在が分かっているプールの燃料は取り出し可能だとしても)所在のわからない原子炉燃料の取り出しはもはや不可能で、石棺方式等にせざるを得ない状況かもしれません。

◆4.関東の放射能汚染はどうなるか?

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この調査は、民間の団体である放射能防御プロジェクト [13]が行った調査です。
図の出典はこちら [14]

首都圏約150カ所で、放射性物質の降下による土壌汚染調査をおこないました。これまで放射性物質の拡散状況の調査は、国や自治体なども個別にしかおこなっておらず、東京・千葉・埼玉・神奈川・茨城の首都圏全域で統一的に実施されたのは初めてのことです。今回、土壌調査プロジェクトに参加した市民の皆さんがそれぞれの場所で土壌を採取し、同一の分析機関で 核種検査(ヨウ素131、セシウム134、セシウム137)をおこないました。
その結果、放射性物質がどれだけ多く首都圏にも降り注いでいるかが明らかになりました。

図には、それぞれの場所の放射線量がチェルノブイリでどのように評価される区域かが示されています。その詳細は以下の通りです。(放射能防護プロジェクト木下黄太のブログ [15]より)

参考:チェルノブイリの区分
148万Bq/㎡~ (第1) 強制避難区域   直ちに避難、立ち入り禁止
55万5千Bq㎡~(第2) 一時移住区域   移住(立ち退き)の義務がある
18万5千Bq/㎡~(第3) 希望移住区域   移住の権利が認められる
3万7千Bq/㎡~ (第4) 放射線管理区域  不必要な被ばくを防止するために設けられる区域
採取方法:表面から5㎝を採取。砂場は表面から15㎝を採取。
測定方法:厚生労働省「緊急時における食品の放射性物質測定マニュアル」に準ずるγ線スペクトルメーターによる核種測定。検出限界1Bq。
検査機関は神奈川にある(株)同位体研究所

首都圏でも、移住立ち退きの義務がある一次移住区域、移住の権利が認められる希望移住区域に相当するデーターも観測されています。まさしく、チェルノブイリ並の事故であると同時に、チェルノブイリ並の被爆を受けていると言うことです。
この表からは除外されていますが、豊島区巣鴨では6万ベクレル/kgが観測されており、これはベクレル/㎡に換算すると300万ベクレルを超える(第1)強制避難区域に相当する数字です。

このデータに対するECRR(欧州放射線リスク委員会)科学議長クリス・バズビー博士によるコメント [16]も公表されています。

ファイルのデータは、非常に興味深く貴重なものです。
汚染の深刻度によって、癌の発生率が違ってきます。
最初に想定していたより悪いです。
東京では、発癌率に関しては1%増加と想定していましたが、この結果を受ければ、1.6%から7.8%増加の間だと思います。

[17] [18] [19]