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「放射性物質の内部被爆シリーズ」~細菌と免疫機能~

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前回は乳酸菌の働きについて追求しました
簡単に復習すると
① 乳酸菌を増やすことが健康につながる!
② 乳酸菌には放射性物質を取り除く効果がある!
③ 免疫力を高め、ガン予防!
 
 
体内での乳酸菌の重要性がだいぶ見えてきましたね 😀  
 
今回はその中でも、腸内細菌群が無いと、腸管免疫システムが機能しないという辺りのメカニズムについて、もう少し踏み込んで調べてみました。
細菌による免疫機能の向上の過程は複雑であると同時に、親密な関係があることが分かってきましたので、紹介したいと思います♪
 


■腸内免疫システム 

①病原体の進入!
②広大な面積の粘膜にてキャッチする
③有機酸による酸性の環境で活力をダウンさせる
腸菅膜を刺激
腸管でのIgA抗体生産量増、マクロファージ・リンパ球の活性を高める
 
腸内細菌は、互いに共生しているだけでなく、宿主であるヒトや動物とも共生関係にある。
この多様な細菌群は、消化管内部で生存競争を繰り広げ、互いに排除したり共生関係を築きながら、一定のバランスが保たれた均衡状態にある生態系=腸内細菌叢が作られる。なお、この系には細菌だけでなく酵母など菌類や、細菌に感染するファージなども混在してバランスを形成している。
 
このバランスのとれた状態では、ビフィズス菌や乳酸菌類が優勢になり、腸内が乳酸などの有機酸により酸性になります。病原菌にとっては活力を失う環境を作ってくれますが、それだけでなく、腸内細菌叢が常に腸管膜に刺激を与えて、腸管でのIgA抗体産生量やマクロファージ、リンパ球の活性を高め、免疫システム全体を健全にしているのです。  
このシステムが健全であれば、当然感染症になりにくいだけでなく、ガンなどの生活習慣病や逆に過剰免疫であるアトピーなどのアレルギーにも抑止力として働くことがわかっています。最近の研究で、小児アトピーの子供の多くでは腸内細菌叢が悪く、健常人では腸管から進入できないはずの高分子異種タンパクなどのアレルゲンが、体内に進入しやすいといわれています。

 
 
■免疫調整機能 (免疫グロブリン(抗体)の仕組み) 

免疫をもう少し詳しく書くと、体内に入ってきた病原体から補体や免疫グロブリン(抗体)によって感染を防御する仕組みです。
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細菌やウイルスなどの病原体が体内に入って来ると、貪食細胞のマクロファージがこれを飲み込んで消化します。
そしてマクロファージは、病原体の一部(タンパク質の断片)をその細胞表面に目印として掲げます。 
これをヘルパーT細胞が目ざとく捉え、やはりリンパ球の一種のB細胞に、この病原体に対する抗体(免疫グロブリン)を作るよう、指令します。
指令を受けたB細胞は、形質細胞と呼ばれる細胞に変化し、抗体を作り始めます。
しかし、最初の感染による刺激で出来る形質細胞は数が少なく、従って出来る抗体も量的に多くなく、感染を防ぐのは困難です。
このB細胞の一部は免疫記憶細胞として体内に長く留まります。
2回目に同じ病原体が侵入してきた時、この免疫記憶細胞が刺激され、速やかに抗体産生細胞(形質細胞)に変わり、その病原体に働く特異的な抗体を数多く生み出して、感染の防御に役立ちます。

 
 
■IgA抗体と免疫力 共生細菌群との関係 

腸管には免疫細胞の集合体のようなパイエル板というリンパ小節がありリンパ球が集合している。
このパイエル板を活性化させるのが乳酸菌を初めとする共生細菌群
 
細菌群による免疫調節作用として
①.T細胞調節効果
②.炎症性・抗炎症性サイトカイン調節
③.抗体産生への効果
④.NK細胞活性化の効果の4点が効果としてわかっている。
 
・腸管免疫系への作用の可能性‐IgA増強作用
食品成分として乳酸菌等が実際に経口摂取された場合、最初に接するのは腸管免疫系である。腸管は、栄養吸収器官である一方で、経口的に侵入した病原体に対する生体防御の最前線であるという特殊な性質のため、腸管免疫系においては他の部位とは異なる特有の免疫応答が誘導される。
特異な応答にIgA 抗体の分泌があげられる。IgA 抗体は免疫グロブリンの一種であり、病原菌の腸管粘膜からの侵入阻止、毒素の中和、アレルゲンの侵入阻止などの働きをする。乳酸菌をはじめとした、共生細菌群の摂取はこのIgAの増強に効果がある。 
 
・IgA産生に関わる細胞
最近の研究において、パイエル板内部にも特定の共生細菌群が常在することが新たに発見されている。
IgAは腸管のパイエル板に主な誘導部位がある。IgA抗体の産生は、インターロイキンといったサイトカイン(抗体を生成するようにB細胞に指令を出す信号物質)により増強される。パイエル板にはインターロイキンを強く分泌する細胞が存在する。この細胞は、他の産生細胞とは異なっており、腸管免疫系特有のインターロイキン産生細胞である。また、樹状細胞は、免疫応答の初期段階でT 細胞を活性化し、免疫応答の方向性、性質を制御する重要な細胞であると同時に、B細胞のIgA 抗体の分泌も促進する。
すなわち、パイエル板において特有の細胞がインターロイキン分泌を介しIgA 産生を増強する機構が存在することがわかる。
 
また、宿主免疫系はこれらパイエル板組織内の共生細菌群に対して、粘膜免疫応答を誘導する一方、全身免疫応答はまったく誘導しないことが明らかになり、組織内に限局して同細菌が存在していることが支持された。

 
 
■微生物によって放射性物質を分解する

放射性物質の半減期は長く、半永久的に保管し続ける必要があると言われます。
しかし驚くべきことに、微生物を使って放射性物質を分解することが可能であるようです。
高嶋康豪氏が所長を務める高嶋開発工学総合研究所が、耐放射性細菌の微生物を利用して、セシウムの分解・消失に成功しています。
高嶋氏が発案した放射性処理方法は、複合発酵法(EMBC-FT)と呼ばれ、好気性細菌、嫌気性細菌など複合細菌を培養し、細菌にとって最適な発酵状態を形成した後に、耐放射性細菌を発現・育成する方法です。これによって、細菌を無限増殖させ、細菌の持つ浄化作用を極限まで高めることが可能となります。過去に台湾で低レベルの放射性廃液処理実験において、セシウム137を40%以上分解・消失させたという実績もあるようです。
 
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          低レベルの放射性廃液処理実験結果
 
以上より、腸内細菌による放射性物質への防御策は、免疫機能の向上だけに留まらず、菌そのものが放射性物質を分解・消失させる力があると考えた方がよさそうです。

 
 
 
■まとめ
 
IgA抗体による腸内免疫の向上をまとめると
 
→乳酸菌による腸内免疫応答
→リンパ節の1部であるパイエル板が刺激
→インターロイキンの分泌(指令物質)
→T細胞・B細胞の活性化
→IgA 抗体の増強
→病原菌の腸管粘膜からの侵入阻止・毒素の中和・アレルゲンの侵入阻止
というのが今回の大きな流れでした。
 
今回紹介したのは共生細菌群による効用の一部でしたが、他にもマクロファージの活性、リンパ球の活性、これら腸内細菌叢を形成し免疫システム全体を健全保ってくれるなど、ほ乳動物の種を超えて、粘膜免疫システムの誘導・制御ならびに腸管組織の恒常性維持に重要な役割を担ってくれています。そもそも細菌との付き合いは、人類、更には哺乳類以前、おそらく生物の進化過程には常に細菌との共生があったと思われます。
見方を変えると細菌の棲家として存在しているとも言えるのかもしれませんね。
 
また最後に紹介した放射性物質を分解に関しても、まだ研究段階ではありますが段々と注目が集まり始めています。
培養が難しいなど、いくつかの課題は在りますが、今後の活躍に期待していきたいと思います。
 
次回はいよいよ「放射性物質の内部被爆シリーズ」の最終回になります。
今までの要点をしっかりとまとめていきますので、お楽しみに~
 
 
引用サイト
■http://takashima.tidt.fool.jp/
■http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%85%B8%E5%86%85%E7%B4%B0%E8%8F%8C
■http://www.riken.jp/r-world/research/results/2010/100401/index.html

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