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今週の福島原発(6/8~6/14)~/浄水場、下水処理場の汚染~

今週も福島原発の最新状況を報告します。

<今週の福島原発の動き>
東京電力 福島第一原発事故関連NHKニュース [1]
福島第1原発の最新状況まとめ [2]
6/8 福島第一原発事故でIAEAに報告書を提出
   東電虚偽報告所長を注意
6/9 汚染水浄化システム設置完了
   海水浴場の基準値検討へ
   11ヶ所ストロンチウム検出
6/10 汚染水処理装置の試験運転後に水漏れが発覚、運転停止
6/11 2号機の換気装置を稼働(放射性物質の大気中濃度を下げる)
6/12 汚染水の浄化装置、ポンプ異常で試運転延期
6/13 汚染水浄化装置を補修・点検を行い改善
   新たに6人被ばく限度を越えた疑い
6/14 内部被ばくの23人を作業から離脱

今週のポイントは、「たまり続ける高濃度の汚染水の処理を担う浄化装置の動き」と「作業員の被爆」です。
今日はこれを切り口に分析していきます。
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■原発作業員の放射線被ばくが心配
6/13東電は、福島第一原発で3月に緊急作業にあたった作業員の放射線被ばくの一次評価を発表した。
福島第一原子力発電所緊急作業に伴う被ばく線量について 平成23年6月13日 東電発表 (リンク [5]リンク [6]
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(福島第一原子力発電所緊急作業に伴う被ばく線量について)
6/10現場の運転員2人の大量被ばく問題(678.08mSvと643.07mSv)が発表されたが、さらに多くの作業員の被ばく実態が明らかになった。今回新たに判明した上限値250mSvを超えた6人のうち、最大は497.6mSv、ほかの5人は425.5~264.7mSv。このほか、200~250mSv未満の作業員が6人、100~200mSvも88人となっている。国は内部被ばく100mSv超で作業員を緊急作業からはずす方針としている。
なお、3月に現場作業を行った3726名のうち2367名のデータ(残り1359名は未測定or未評価)。
4月以降に現場に加わった作業員は含まれていない。4月以降は、3月の爆発直後よりはマシだろうが、当然ながら高い放射線量の中で仕事をしていることに変わりない。
原発事故の緊急作業には、これまでに計約7800人が従事しているが、作業員の被ばく実態の全容はまだ不明である。
作業員の上限値250mSvも事故後に緊急事態で設定された苦肉の策であり、決して安全基準ではない。原則は緊急作業でも5年間で100mSv、緊急作業以外は年間50mSvだが、これも当然ながら安全基準ではない。
原発現場で格闘している作業員の健康への影響が大変心配であるが、一方で原発事故収束までの作業マンパワーの確保が必要というジレンマ。放射能のいう「見えない敵」との闘いが続いている。
■放射能被ばくの影響は未知数
放射能被ばくには「ここまでなら安全、大丈夫」という概念は存在しないと考えるべきだろう(基準値より上なら危険、下なら安全といえる類のものではない)。福島の年間20mSvも、これまでの一般人の年間1mSvも誰も安全とは言い切れない。被ばくの影響として、白血球の減少や癌のリスク増加が言われているが、今後どのような影響が出てくるかは未知数としか言いようがない。おそらく(疫学的な因果関係の証明は困難であろうが)数十年にわたってあらゆる病気が増える可能性が高いのではないか。
原子力=人工放射能は、今の人類が扱える代物ではない。
※参考投稿
低被曝線量での人体への影響 [8] 
鼻血・下痢・発疹は被曝症状 [9]
本当に怖いのは癌よりも子孫消滅! [10]
密かに調査されていた内部被曝の危険性 [11]

■浄水場、下水処理場の汚染
福島から200kmも離れた東京で、浄水場発生土、下水汚泥や汚泥焼却灰等から高濃度の放射性物質が検出され、深刻さが増している。

・「浄水場発生土」とは、浄水処理の過程で、水中に含まれるにごりの成分を取り出し固めたものであり、通常は田畑の土に再利用される。
・「下水汚泥」とは、微生物を利用した下水処理の各過程で、沈殿またはろ過等により取り除かれる泥状の物質で、有機物(=汚)と無機物(=泥)からなる。下水から容積比で5~8%排出される。
・「汚泥焼却灰」とは、下水汚泥を脱水・減量化し、安定化させるために焼却したものであり、廃棄量を減らせるだけでなく、ブロックなどの建材にも再利用される。

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   (23区の下水道流域区分 拡大図コチラ [12]

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   (汚水処理施設の概要)

東京都が公表したデータによれば、浄水場・下水処理場は上水や下水が濃縮され、放射性濃度は非常に高い。
既に民間事業者は浄水場発生土及び下水汚泥等の再利用化を停止しており、都も処分先の確保に苦慮している(6/6には、国に緊急要望書を提示)。
(参考)
東京都水道局 [13]
東京都下水道局 [14]

〇東京都の浄水場発生土の放射線量(3/28、4/14、4/27)
ヨウ素131 :平均 31,347(Bq/kg) / 最大 88,400 (Bq/kg)(金町浄水場)
セシウム(※):平均 6,914(Bq/kg) / 最大 14,650 (Bq/kg)(金町浄水場)
(※)放射性セシウムとは、セシウム-134とセシウム-137の合計値
〇東京都の下水汚泥の放射線量(5/18~19)
ヨウ素131 :平均 67(Bq/kg) / 最大 120(Bq/kg)(清瀬市下宿)
セシウム134:平均242(Bq/kg) / 最大 960(Bq/kg)(江戸川区臨海町)
セシウム137:平均261(Bq/kg) / 最大1000(Bq/kg)(江戸川区臨海町)
〇東京都の汚泥焼却灰の放射線量(5/18~19)
ヨウ素131 :平均 - (Bq/kg) / 最大 370 (Bq/kg)(清瀬市下宿のみ検出)
セシウム134:平均7,108(Bq/kg) / 最大 26,000(Bq/kg)(江戸川区臨海町)
セシウム137:平均7,883(Bq/kg) / 最大 29,000(Bq/kg)(江戸川区臨海町)

■循環型海水浄化装置の設置工事開始
 福島原発では、5/30からスクリーンエリアに循環型海水浄化装置を設置する工事が始まりました。スクリーンエリアといわれても何のことか分からないと思います。調べてみたら分かり易い図がありました。下の図をご覧下さい。スクリーンエリアは原子力発電所が冷却水として海水を取り込む取水口のことだったのです。
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画像:スクリーンエリア
 今回の福島原発事故で、放射能に汚染された水が海水に流れ込んだのがここです。5月11日に3号機から高濃度汚染水が流出し、19日の測定値では、セシウム134の濃度がシルトフェンスの内側で基準の1800倍の11万Bq/l、シルトフェンスの外側でも基準の170倍の1万Bq/lでした。
5月20日福島第一原子力発電所 物揚場前、1~4号機スクリーン、1~4号機取水口内、海水核種分析結果(速報値) [15]
その後、3号機からの流出は少なくなったようですが、2号機からの流出を含めて、相変わらず流出は続いているようです。6/14のデータでは2号機シルトフェンス内側で基準の33倍の2千Bq/l、3号機のシルトフェンス内側では16倍の940Bq/lになっています。
6月14日福島第一原子力発電所 物揚場前、1~4号機スクリーン、1~4号機取水口内、海水核種分析結果 [16]
そこで、この汚染された海を浄化しようというのが、今回の循環型海水浄化装置の設置です。シルトフェンスで放射性物質の拡散を抑えながら、海水を循環させて放射性物質による汚染を除去しようとしているのです。その状況がこちらです。
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画像:拡散防止強化策
参考:東京電力福島第一原子力発電所第3 号機からの高濃度の放射性物質を含む汚染水の流出及び対応について [17]
放射性物質を濾過する吸着塔は東芝製で大きさが2.3m四方の立方体。内部に放射性セシウムの吸着剤であるゼオライトを3段に重ねてあり、そこにくみ上げた海水を通すと、ゼオライトの表面の微細な穴にセシウムが吸着されます。1基で1時間あたり30m3の浄化能力があり、これを2号機と3号機の間に2台設置しました。
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画像:海水循環型浄化装置
参考:東電、海の放射性物質除去に挑むより [18]
循環型海水浄化装置を設置したと聞くと、対策が進んでいるのかと期待しましたが、その実態は、汚染水の流出を止められず、どれだけ効果があるか分からない対策を場当たり的に実施している感じがします。

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