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今週の福島原発(5/18~5/24)工程表の妥当性、メルトスルー

今週は、先週からの東電の工程表見直し(1号機から3号機のメルトダウン)によって、日本の情報公開の不確定さ(隠蔽)がますます目立つようになり、代替エネルギーや新たな核実験など日本内外部での動きが目立つ一週間でした。
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<今週の福島原発の動き>
5/18 ・IAEA調査団(12カ国14人)が福島原発を視察
5/19 ・3号機に立ち入り、放射線量調査(作業時間10分のみ、放射線量160~170mSv/h)
5/20 ・2号機、「循環注水冷却」整備工事を開始
   ・1~4号機は廃炉、7~8号機は増設中止を発表
5/21 ・汚染水ためるメガフロート到着(容量1万トンのみ)、配管の設置作業
   ・3号機、汚染水250トン(放射線総量20兆ベクレル)が流出と発表
5/22 ・2号機、注水経路変更に伴い取水口近くのピット(穴)穴埋め
   ・1号機建屋上空の粉塵採取(2、3号機上部は持ち越し?)
   ・放射線量、東北関東各地で上昇
5/23 ・IAEA調査団(6人、韓国の原発専門家で構成)が日本に到着、福島県など現地調査へ
   ・2号機、循環注水冷却に向け資材搬入開始
5/24 ・地震直後の福島原発の状況を最悪の状況を想定して解析
<今週のその他の原発関連の動き>
5/18 ・放射性セシウム閉じ込め材料の開発に成功(日本)
   ・原発作業員の一割が内部被爆検査を受ける(1人から3万ppm)
5/23 ・神戸大名誉教授、ソフトバンク孫社長、小出氏など「脱原発」主張派4人が、参院行の政監視委員会に参考人として出席(エネルギー転換を主張)
   ・米、x線を用いた新式の未臨界核実験成功。原発の安全性主張
5/24 ・もんじゅ再摘出準備作業開始(6月中旬めど)
   ・釧路沖のクジラ(最終捕食者)から31ベクレル/kgのセシウム検出
今までの経緯を見ると、いつまでも確実な処置ができてない東電の方法には「本当にこの方法で確実にできるのか?」という疑問が残ってしまいます。
そこで、今週の論点はこれから東電が行っていこうとしている方法についての妥当性を検証していきたいと思います。
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まず、現状の放射能汚染水の状況把握をしましょう。
①放射能汚染水の現状
■放射能汚染水はどのくらいあるのか?
東電の推計発表(5/18)によれば、既に汚染水の総量は「10万トン」を超えています。原子炉建屋とタービン建屋、作業用トンネル(トレンチ)にたまったものの推計で、そのうち原子炉などから漏れた高濃度汚染水がたまる1~4号機が計8万4700トン。現在も原子炉内の燃料を冷やすために1日約500トンの注水が続いており、格納容器から漏れ続けるとすると、処理対象となる汚染水の総量は年末までに20万トンに達します。
■どんどん増えていく汚染水
圧力容器と格納容器の損傷が確実であり修理ができないことから、汚染水は物理的にどんどん増えていくでしょう。予定されている処理施設では、1日1200トンの処理能力が想定されているようですが、これで追いつくかどうか。いずれにせよ、処理には膨大な時間とコストを要するのは間違いありません。
さらにこれからの梅雨の時期、原子炉建屋に降った雨が汚染水となって、その嵩が一気に増えるという問題も懸念されます。
■汚染水は漏れ続けている
汚染水は原発内部にとどまっているだけではありません。地震の影響で建屋躯体にもヒビが入っているはずであり、地中や海へかなり流出しているのは間違いありません。当然ながら地下水や海流を通じて汚染は拡大しています。
※“死の汚染水”10万トン…地中に広がる恐怖「梅雨が怖い」 [4]
■汚染水だけでなく、核燃料が建屋外へ流出している可能性も?
※核燃料露出の1号機は既に人類未体験ゾーンへ 解説:小出裕章氏(京都大学原子炉実験所助教) [5]
小出氏は、1号機で炉心が溶融し、圧力容器も実質的にまったく水が無い状態に陥っていることは、核燃料が圧力容器はもとより格納容器からも外部に出ている可能性が大きいとの見方を示した上で、これは人類が未だかつて経験したことのない事態であるため、これをどう収束させることができるかは、誰にも予想がつかないと語っています。
※2011.05.17 元原子炉設計者 福島原発のメルトスルーを示唆  後藤政志氏(元東芝・原子力プラント設計技術者) [6]
「格納容器が壊れている。従って、現状、原子炉の放射能は直接、大気中に放出され続け、底からも汚染水がダダ漏れ。地下水にも浸透している恐れがある(つまり、メルトスルー)。格納容器は塞げない。きわめて危機的状況。」
メルトダウン→メルトスルー→地下への燃料流出・・・→地下水脈接触による水蒸気爆発も予想されるそうです。
②循環注水冷却は可能なのか?
東電・政府の原発収束に向けた最優先事項は、循環注水冷却装置を構築することです。汚染水の増加を食い止めながら安定的に燃料を冷却することができれば、原発問題は収束に向けて大きな一歩を歩むことができるといわれていますが、果たして循環注水冷却は可能なのでしょうか?
■汚染水の地下への漏洩対策
通常時の冷却と違って、今回の冷却システムは原子炉建屋やタービン建屋そのものを利用する半密閉型のシステムです。しかし、原子炉建屋やタービン建屋は本来、水をためる設計にはなってはいません。両施設の床やピットは地震の影響でひびが生じ、現在もそこから大量の汚染水が土中(→海)に流れ出しています。循環システムが構築できても、建物のひびから汚染水が土中へと漏洩していく可能性が高いです。
東電は流出防止策として、原子炉建屋などの周囲の地下に、深さ約30メートルの壁をつくる対策を掲げていますが、流出が十分防げるかは不透明です。
■放射能濃度が高くて作業時間が限られる
東電は、冷却システムを構築する際、既存の配管を使用しようと考えていますが、おそらく地震によって配管の継手はいたるところで亀裂が入り、まともに利用することはできない状況でしょう。当然新たに配管を取り付けたり、ポンプや熱交換器などを新設する必要があります。
しかし、建屋内の放射線濃度は現在も非常に高く、5/18の時点で2号機で50mSV/h、3号機で160~170mSV/hと言われており、作業員は10分程度しか作業できないと言われています。
排気ファンを設置して、空気中の放射能濃度を下げることに成功したと考えられていた1号機も原子炉周りは600~700mSV/hを計測し、大半の場所でも数十mSV/hと放射能濃度は高いまままとなっています。
作業時間が限られるため、作業員の被爆・工程の遅れが予想されます。
■散らばった燃料の冷却はできるのか?
循環注水冷却装置は、燃料が圧力容器に残り続けていることを前提にして、安定的に冷却水を循環させるシステムです。しかし、燃料が建屋内に散らばっているのであれば、果たしてどれだけ冷却効果があるのか、どうやって計測するのか、誰も分かりません。東電もこのようなリスクは把握しつつ、「それでも可能性がある限りやるしかない」という心理状況にあると考えられます。一方、京大の小出氏は、冷却装置の実現は不可能と断言し、石棺の可能性を示唆し始めています。
■汚染水はどう処理するのか?
現在は、一部は集中廃棄物処理施設へ移送、そこも近く満水になるため、建屋内にそのままためておくしかない状態(先日到着したメガフロートも容量1万トン)。発表では6月中旬頃には汚染水の浄化施設が完成、汚染水から放射性物質などを除去して原子炉の冷却に再利用する「循環注水冷却」を稼働させるといわれていますが、うまくいくかは未知数です。
※福島原発の汚染水を浄化できる粉末を開発 [7]
金沢大学の太田富久教授らが、放射性物質で汚染された水を、能率的に浄化できる粉末を、1か月程度の間に開発し、話題になっています。現在、フランスのアレバ社に依頼している、福島第一原発の放射能漏れ事故による汚水処理も、この粉を使うと、20倍早くできるといいます。これは朗報?
 このように、現状、循環注水冷却には多くの困難が残存し、放射能汚染水の拡大が止められない状況になってしまっている。駄々漏れしている状況があるにもかかわらず、なぜ、こうまでして注水を続けるのでしょうか。もし、注水をやめたらどうなるのでしょうか?
■3号機、水蒸気爆発の可能性?
京都大学の小出氏は3号機で水素爆発のおそれがあると指摘しています。
NEWSポストセブン [8]より引用
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福島原発3号機 水蒸気爆発で放射性物質が大量飛散する恐れ
(前略)
 3号機は現在、圧力容器の温度が不安定な状態となっている。4月中は110度前後で安定していたが、5月7日には200度を超えた。5月16日の早朝には141.3度に下がったが、依然200度以上の高温の場所があり、不安定な状態が続いている。
 東京電力は、3号機で再臨界が起きないようにホウ酸の注入を15日から始めました。京都大学原子炉実験所・小出裕章助教は、3号機では実はこんな危険な状態が起こり得るといっています。
「もし燃料がまだ圧力容器に残っている状態で、給水作業が何らかのトラブルで止まってしまった場合、水蒸気爆発が起こる恐れがあります」
 水蒸気爆発とは、溶けた燃料が大量に冷たい水にふれることで急激に蒸発して飛び散るように爆発する現象。
「もし水蒸気爆発が起きてしまうと、セシウムなどの放射性物質が爆風によって、いまとは比べものにならないほど大量に飛散してしまうでしょう」(小出助教)
※女性セブン2011年6月2日号
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小出氏が指摘するように3号機の温度の不安定さは、他のものに比べて顕著です。
グラフは東京電力からお借りしました。
1号機 [9]
2号機 [10]
3号機 [11]
現在、3号機は燃料の大半が溶けて圧力容器の底に溜まっていると考えられます [12]。小出氏の指摘は圧力容器内の給水が止まれば、圧力容器底に解け落ちた燃料の温度が上昇し、設計温度302度を越えたところで、容器を突き破り格納容器へ落下すると、そこにある水(圧力容器から漏れ出たもの)が一気に蒸発し、爆発に至るということだと考えられます。
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現段階では、給水が安定的に行なわれているため爆発の可能性は低いですが、3号機の温度の不安定さや5/8の黒煙事件 [13]などから考えると予断を許さない状況です。

[14] [15] [16]