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「放射性物質の拡散予測」シリーズ 2~現在の拡散状況

茶葉や牧草、魚など広域で基準値を超える放射線量が確認されています。今後の拡散予測をする前に今回は現在、どのように拡散しているかを押さえていきます。
文部科学省から5月11日現在の累積線量が発表されました。
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引用元はこちら [1]
計画的避難地域を超えた地域はさほど線量が高くなさそうです。引用元には年間予測値も掲載されており、20ミリシーベルトを超える地域は限定的です。
一方、海洋汚染の広がりはどうなっているのでしょうか。
同じく文部科学省が宮城、福島、茨城県沖で5月9~14日に採水したデータではほとんどがセシウムは未検出となっており、福島第一原発付近の沿岸で基準値を超える120ベクレル/リットル(基準値90Bq/L)が検出された程度です。
では本当に危険性は小さいのでしょうか?

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文部科学省が発表した積算線量の推定は以下のように行われています。

・爆発が起き大量の放射性物質が飛散した3月12~15日のデータは加味されていない。
・屋内の放射線量を屋外の0.4倍に低減するとし、屋内には16時間滞在すると仮定した。∴実測値の0.6倍とする。
・計測は地上3~20mの高さで行われることが多く、地表面より小さい数値になる。
・3月16日から3月17日~4月7日の計測開始日までの積算線量は線量変化が最も急な浪江町の計測ポイントの変化率を参考にして類推している。(線量変化の詳細不明)

一方で、福島県内の学校などで計測されたデータ [5]からは安心できる状況にないことがわかります。

・福島、郡山市などで4月5~7日の間に年間20ミリシーベルト≒毎時3.8マイクロシーベルトを超える数値が多数検出されている。
・福島市内では5月に入っても毎時3マイクロシーベルトを超える学校が4カ所、全てのポイントで2マイクロシーベルトを超え続けている。

言うまでもないことですが、突然引き上げられた基準=年間20ミリシーベルトを超えなければ安全など誰も信じることはできないでしょう。

さて福島以外の地域ではどうでしょう。
カリフォルニア、ハワイ、アラスカ等でも微量ながらセシウムやヨウ素などの放射性物質が検出されています。アラスカ(Nome)でCs-137が最大0.13pCi/m3検出。
ワシントン州でも牛乳から放射性物質が検出されるなど世界中に拡散しているようです。
参照:メディエイゴ weekly topic [6]
   EPA(アメリカ環境保護庁) [7]

アメリカまで拡散するならば国内も相当量拡散しているのではないかと容易に想像がつきます。
まずは関東地方の土壌汚染、牧草汚染の状況から
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岩手、宮城、群馬、茨城の牧草から暫定基準値(1キログラム当たり300ベクレル)を超えるセシウムが確認されています。

・宮城・丸森町の町営牧場の牧草から検出されたのは、国の暫定規制値の5倍以上にあたる1,530ベクレルの放射性セシウム。
・岩手県北西部盛岡市の隣の滝沢村でも359ベクレル、県南部では基準値を下回るものの261ベクレルが検出されています。

神奈川県では県西部の小田原市の足柄茶から基準値500ベクレルを超える780ベクレルが検出されるなど東北、関東で広く放射性物質が拡散していることがわかります。

ところで広域に拡散していることも問題ですが、ホットスポットと呼ばれるエリアが存在します。
週刊現代「実はこんなに高い あなたの町の「本当」の放射線量
公式発表は「低く出る」よう細工をしていた」
によると

 福島原発からの距離もあまり過信しないほうがいい。放射性物質は、必ずしも同心円状に拡散するわけではない。「風向きなどの気象条件や、平地・山間地といった地形によって、高いレベルで汚染される『ホットスポット』が生まれる」(長崎大学先導生命科学研究支援センター教授の松田尚樹氏)からだ。
 たとえば、茨城県ひたちなか市より、福島原発からの距離が約70km遠い守谷市や、千葉県我孫子市、柏市や流山市のほうが、放射線量の数値は高い。若林氏が解説する。
「水素爆発で多量の放射性物質が空気中に飛散した後、たまたま風向きの影響を受けて葛飾区や柏市などの数値が高めになったのだと推測しています。しかし、風向きの影響だけなら、すでに風は通り過ぎて数値が下がっているはずなのですが、それが下がっていない点を考えますと、おそらく降雨の影響があって土壌に染み込んでいるからでしょう」

緑の多い山間地などは高い数値が出る傾向があります。草に付着した放射性物質は、表面の細かな毛につかまって、風が吹いてもなかなか飛んでいかない。

 高い建物に囲まれたエリアは、吹き溜まりができやすく、東京で言えばビルの谷間にある公園や小学校などでも高い数値が出る可能性がある。倉石氏が続ける。
「高いビルが建つ地域にはビル風が吹きます。これは、ビルの間だけを舞ってまたビルの間に戻ってくる風なので、外には飛んで行きにくい。渋谷のような都心でも、大震災の前より数値は上がっていて、もし私に小さな子どもがいたら、都心にある砂場では遊ばせたくありません。いくら少ないといっても、以前より多いのは確かだからです。

最後に海洋汚染の実態はNGOグリーンピースが調査 [8]しています。
その結果、

・沿岸部では福島県久ノ浜港から勿来港まで10000ベクレル/kgを超える計測不能の高濃度な放射性物質がアカモクやわかめなどの海草類から検出され、茨城県河原子港でも987ベクレル/kgが検出されています。
・沖合では福島第一原発から南東52km地点で浮遊しているアカモクから10000ベクレル/kgを超える放射性物質が検出されています。

今後、汚染水は親潮や黒潮にのって希釈されながらも広域に拡散していきます。
魚の放射性物質の生物濃縮については水産庁が問題ないとの見解を撤回しました。
原発は再臨界~爆発の可能性は小さくなったように報道されていますが、放射性物質はまだまだ漏れ続けているようです。
次回からはこれからの放射性物質の拡散予測や被曝量の予測などを追求していく予定です。

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