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「放射性物質の拡散予測」シリーズ ~「放射性物質154兆ベクレル」から、核燃料の放出量を推定する

nuclear_20110510.jpg [1]
核燃料破損の予想図(漏れた燃料は大きな水蒸気爆発を起こしていないことから、溶融して粉末状になっているのではないかと推測される)
画像は、ココ [2]からお借りしました。ありがとうございます。

 5日に福島第一原発から大気に放出された放射性物質の推定値は、ヨウ素131が毎時0・69テラ・ベクレル、セシウム137が同0・14テラ・ベクレル。(中略)国際的な事故評価尺度(INES)で使われるヨウ素換算値で、ヨウ素とセシウムの合計量を計算し直すと、放出量は同6・4テラ・ベクレル(24時間で154テラ・ベクレル)となることがわかった。http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110423-OYT1T00667.htm [3]

上記の数値を元に、どの程度の核燃料が外部に漏れているのか、試算してみます。

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 3月11日から本日5月10日までの61日間に上記の割合で各放射性物質が放出されたと仮定すると(154兆ベクレルは、実際には状況が落ち着いてからの数値ですが)、

・ヨウ素131
0.69×24時間×61日=1010.16テラベクレル
・セシウム137
0.14×24時間×61日= 204.96テラベクレル

上記の値を「市民のための環境学ガイド」 [7]の方程式に則り放射性物質の量に換算すると、

・ヨウ素131
1010.16テラベクレル÷4600テラベクレル/g= 0.2196g
・セシウム137
 204.96テラベクレル÷3.21テラベクレル/g=63.8505g

それらの量から分裂前のウラン235量を推定すると、ヨウ素131の収率2.83%、セシウム137の収率6.09%により、(※核分裂生成物がどの核種になるかはある確率で決まる。この確率を収率という。ウィキペディア [8]より)

・ヨウ素131
 0.2196g÷2.83%=  7.7597g
・セシウム137
63.8505g÷6.09%=925.3696g

上記を足すとウラン235の換算量が導けます。
7.7597g+925.3696g=933.1293g

さらに、燃料ペレット中のウラン235含有率を3%とすると、

933.1293g÷3%=31.1043kg

となります。上記は、放出量が落ち着いた4月5日の時点での割合からこれまでの総量を合計したものなので、実際にはより多くの放射性物質が放出されたことになるでしょう。

すなわち、るいネット投稿 [9]「ウランの一部は空中に放出され、大半は内釜の底にたまると共にその一部は高濃度汚染水と一緒に外部に漏出し続けていると考えられる」の量は、少なくとも31kgと推定されるのです。

核燃料31kgとは、燃料棒一本を184kgとすると、17%強に相当。また、燃料棒または使用済み燃料棒が破損していると伝えられる1~4号機の燃料の総量が651.35t(※1号機が73.6t、2~4号機が100.83t、ただし4号機内には使用済み燃料棒しかない リンク [10]より)であることから、少なくとも核燃料全体の0.005%が放出されたことになります。

ちなみにチェルノブイリでは、

ソ連の科学者は、チェルノブイリ4号炉が二酸化ウラン燃料および核分裂生成物を約190kg内包していると報道した。このうち放出された物質量の評価については、13 – 30%の範囲でばらつきがある。(ウィキペディア [11]より)

つまり、24.7~57kgの放射性物質が放出されたことになります。チェルノブイリは爆発的に飛散したため、80万人を超す死者が出ましたが、福島第一原発でもすでにチェルノブイリと同等の放射性物質が漏洩していることになります。ただ広く拡散していないだけ、なのです。

次回は、原子炉から漏れた放射性物質がどのように拡散していくのかについて、考えます。

 

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