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緊急テーマ:『放射能の内部被曝とは?』 2

今日は縁あって、福島県飯野町から来られた方と少しお話をする機会がありました。
お話を伺って、安心感と危機感の両方を同時に抱きました。
飯野村は、現在ギリギリ計画的避難地域から外れたエリア。つまり、福島原発から30kmの外側に位置するところです。現地ではインフラもほぼ復旧し、通常生活に戻りつつあるが、子ども達はしっかりマスクを付けて外出しているそうです。しかし、大人は徐々にマスクを付けずに外出している方も増えつつある。放射能の危険性についても、さほど気にされない方と、まだまだ危険だ、という方とに分かれ始めているとの事。
電気は通ったものの、まだネットには繋がらない状態という話も伺いました。テレビでは、曖昧な安全宣言を多く見掛ける状況ですから、全く目には見えない放射能への対応をどうすれば良いのか?ますます不安が募るばかりです、と仰っていました。
そこで、今回は私たち素人でも根拠に基づいた判断基準を持てるように、改めて内部被曝に関する様々な情報の整理を行ってみました。


1.放射能の飛散状況
事故後の原子炉(圧力容器)内部では、既に燃料棒が崩壊し、粉々になったペレット(ウラン235とウラン238の固まり)が水中に散乱していると言われています。これは、制御不能な状態で核分裂が発生している事を意味し、それ故にひたすら注水を続けるしかない状況となっているのが現状です。
核分裂とは、核が二つに分裂し、熱エネルギーと2~3個の中性子を発生する事。
この二つの分裂片は、分裂と同時に別の元素に変化します。
image1.jpg [1]
画像はこちらのサイト [2]からお借りしました。
「ヨウ素」の片割れは「イットリウム」
「クセノン」の片割れは「ストロンチウム」
「セシウム」の片割れは「ルビジウム」
「バリウム」の片割れは「クリプトン」
等々。これらの分裂片は、それぞれが強いエネルギーを持っており、エネルギーを放出して安定しようとする。この放出するエネルギーが放射線になる。
今回の事故によって拡散している放射性物質の主なものは、
放射性ヨウ素(ヨウ素131)
放射性セシウム(セシウム134、セシウム137)
放射性ストロンチウム(ストロンチウム90)
そしてあまり耳にした事のないもので、放射性気体のキセノン133
その他にも多数の物質が発生しているが、特に気体や軽い物質が大気中を舞い、風に乗って広範囲に届いたものが、遠くアメリカにおいても既に検出されています。報道ではヨウ素・セシウムという名前ばかりを良く耳にしますが、これらは飛散しやすく、かつ計測しやすい物質なのだそうです。また、ヨウ素やセシウムと言っても放射性では無いものも含まれるので、元素名だけでは判断できません。
2.半減期とは?物質ごとの変化を押える
放射性原子は、放射線を発射すると同時に、違う種類の原子に変化(核崩壊)します。
下記に、各元素ごとの実際の変化を示します。()内の期日は、元素が変化して半分になっていくおおよその期間、物理学的半減期を示します。
ヨウ素131 [3](8日) → キセノン131になり安定
セシウム137 [4](30.1年) → バリウム137になり安定
ストロンチウム90 [5](29. 1年) → イットリウム90 → ジルコニウム90になり安定 
キセノン133 [6](5.2日) → セシウム133(放射性では無くなる)
半減期とは、あくまでも自然界において元素が変化するであろう目安の一つです。よって、観測されてから8日で半分に減る、と単純に計れるものではありません。また、セシウム等はチェルノブイリでの土壌調査において、むしろ年月と共に増加してしまった事が報告されています。
セシウムの「環境的半減期は180~320年」 [7]
これは、土壌中の細菌や植物などに取り込まれた影響等によるもの。放射性物質は、生体内に取り込まれて濃縮される事もあれば、尿・便・汗等を通じて排出されるもの(生物学的半減期)もあり、一概には評価できない難しさがあります。
3.体内への侵入経路と被爆の危険性
上記の放射性物質で最も厄介なのは、やはり内部被曝によるものでしょう。
体内への侵入は、呼吸による侵入、そして経口摂取による侵入の2パターンがあります。
特に植物に取り込まれやすい性質を持っている物は、牧草→牛→牛乳→人の食物連鎖によりチェルノブイリなどにおける深刻な被害を齎しました。
それらは体内で通常時に必要とされる元素に似た物質として取り込まれ、それぞれ
・ヨウ素は、甲状腺に多く蓄積(生物学的半減期5日程)
・セシウム137は、カリウムになりすまして筋肉に多く蓄積(生物学的半減期100日)
・ストロンチウム90は、カルシウムになりすまして骨に蓄積(長期的残留)
  
といった形で吸収されてしまうのです。
2-47-1.gif [8]
参考:放射性ヨウ素による内部被ばくの模式図 [9]
  
そこで微量ながらも放射線を放出し続ける為に、細胞内のDNAが破損し、癌の原因となってしまうのです。むしろ、短期間に変化しやすい物質を多く取り込んだ場合の方が、危険性は高いとも考えられます。
勿論、人間にも自己修復機能は備わっているので、細胞の一部が放射線による破壊を受けたとしても、即座にそれらを修復、あるいは淘汰させるといった免疫機能の働きは期待されます。この、自己修復の速度と放射線による癌化速度(細胞破壊)との兼ね合いが、安全性ラインの分かれ目となるのだと思われます。
成長途上にある子供や、免疫機能を抑制している妊婦さんほど危険度が高い理由が、お解り頂けるでしょう。
4.応急処置は?
明らかに内部被曝を受けてしまった場合は、応急処置が必要です。
放射性物質によって医学的な対処療法がありますが、これは素人判断では危険な領域なので、ネット情報などでの独自の判断は避けるべきだと思われます。
ただ、事前対策として効果の高い食品がある事も事実。天然由来のヨウ素を元々含んでいる昆布を毎日一切れだけ食べるとか、味噌汁が効果的にヨウ素を減少させるといった事例もあります。しかし、昆布も食べ過ぎるとそれ自体が病気の原因にもなってしまう。
ので、結論としては和食をより好みせず毎日適度に食べる、というのが最も適切な対策となるでしょう。
5.今後はどうする?
色々と整理してみたものの、やはり複雑で対処が困難である事は変わりありませんね。
という事で、もう少し明確な目安を示しておきます。
現在、発表されている色んな単位がありますが、一つの目安は
50000ベクレル/kg = 約1mSv(ミリシーベルト)
放射性ヨウ素131を含んだ食品が、妊娠中の女子に許容される内部被ばく量の上限。
ベクレルというのは、1秒間に原子核が崩壊する数を表す単位。
つまり、1kg中に50,000回の放射線が放出される量、という事になります。
シーベルトは体内への影響度を示す数値の為、厳密には部位ごとの計算値によって結果が変ります。
今、原発近辺で復旧作業にあたって頂いている作業員の方は、上限100mSvを目安に作業時間を制限しているようですが、これを逆算すると、100mSv=5,000,000ベクレル/kgとなってしまいます。もちろん、これは外部被曝ですから、内部被曝と同様の評価とはなりませんが、体内で500万もの放射線が放出されれば、とてつもなく危険である事は想像できると思われます。
あるいは、自然状態において絶対に在り得ないような事が、今現実に起こっているのだ、という事も実感頂けるのではないでしょうか。
現在、東京都で計測される放射線量は、概ね0.07μSv/h程度。
1時間0.07μ × 24時間 =1.68μSv = 0.00168mSv
子どもの場合の危険率を10倍としても、0.0168mSvとなります。
空気中の線量がこの程度であれば、現段階では殆ど心配する必要は無さそうです。
ただし、特に女性や子どもの内部被曝に関しては、水・食品・牛乳などの経路に十分な注意が必要。
その目安となるのが、50,000ベクレル/kgという数字です。体内に一度で1mSvの被爆を受けると、影響が出てきてしまう、という数値として認識しておいた方が良いでしょう。
さて、長くなりましたが、今後は食品による浄化、あるいは自己修復機能との関連性等を、もう少し具体的に押さえていきたいと思います。皆さんも、具体的に計算をしてみたり、物質変化や放射線の放出、といったものをより明確なイメージとして捉えられるようになっていきましょう。マスコミの安易な安全宣言には乗っからない。みんなで議論し、この量になったら気を付けようね、といったやり取りをして行く事が、一番の安全対策です。
そして、日本食が身体にも放射能にも良い、というのは朗報。美味しい食事を、素敵な仲間達との会話と共に頂く、というのが最も適切な対策である事も、付け加えておきます。

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