- 生物史から、自然の摂理を読み解く - http://www.seibutsushi.net/blog -

魚類の性闘争=メスの獲得を巡るオス同士の闘い=

kenka.JPG
魚類のオス同士がメスを巡って闘うって、なかなか想像できない方もいるかもしれません。
 
そもそも性闘争って、なんなのでしょう?端的にまとまっている文章があるので引用します。

生物において、メスの獲得を巡るオス同士の闘いをさす。オスはメスを手に入れる為には、メスが安全に出産し、子育てする為の縄張りを確保しなければならず、従ってオス同士は縄張り闘争も闘わなければならない。性闘争本能はすべての動物に備わっているが、とりわけ哺乳類は、淘汰適応の必要から、性闘争本能をとことん強化した動物である。C.ダーウィンの提唱する、「性淘汰」の現象を、オスの闘争とメスの選択に分解したもので、その内の前者を指す。

新概念定義集 [1]
 
そういわれれば、哺乳類ではおなじみです。人間も例外ではありません。
意外と多様な両生類の世界 [2]では、両生類の性闘争を扱いました。魚類でも性闘争は見られるんです。
 
魚類の性闘争の基本は、繁殖期における縄張り(繁殖場)を巡る争いとなっており、オス・メスの数によって3つのタイプに分けられるようです。けっこういろいろあります。
nawabari.bmp
(上記以外に乱婚型や一妻多夫型があるが、例外的であり、性闘争の範疇外なので割愛)
 
では、それぞれどんな闘いが繰り広げられているのか。見ていきましょう。
その前に応援よろしくお願いします。
ブログランキング・人気ブログランキングへ [3] にほんブログ村 科学ブログへ [4] [5]
 


一夫一妻型「サケ」
 
sake.JPG
 
サケは川で生まれ、海で群れで育ち、産卵期に生まれた川に戻ってきます。川の上流まで辿りつき産卵時期が近づくと、メスは産卵場所を決めて適当な穴を掘ります。オスたちはメスを巡ってけんかが始まります。オスとメスはこの時期特徴的な色・模様を帯びます。勝ったオスはよりオス色が際立つようになり、一方負けたオスはメスのような色・模様を帯びるようになります。これが負けを表わす印になっていて、必要以上に争わないようになっています。勝ったオスはメスに寄り添い、卵に放精することができます。
ハレム型一夫多妻「アマダイ」 
 
madai.JPG

アマダイは集団生活をしているのですが、それぞれが自分の住居周辺を縄張りにしています。侵入者があれば激しく体当たりして撃退します。特に産卵期が近づくと大型のオスの間では王様の座を巡る争いが激化します。勝者だけが群れのメス達を独占してハーレムを支配する王様になることができます。破れたオスは子孫も残せず去らなければなりません。アマダイの社会は競争の激しい一夫多妻制なのです。

旬魚余話 [6]より 
 
 
縄張り訪問型複婚「イトヨ」 
 
itoyo.JPG
  

ふだんイトヨ [7]は群れをなして生活しているが,繁殖期になると,雄は群れを離れ,自分の縄張りを形成する。そして他の魚,とくに同じイトヨの雄が縄張りに侵入してくると威嚇する。背中の棘を立て,すぐ咬みつけるように口を開けて敵に突進して威嚇する。
 
同時にオスは縄張り内の川底に穴を掘って水草の根などを集め、トンネル状の巣を作り、メスを誘って産卵をおこなう。オスは産卵後も巣に残って卵を保護する。
 
敵から卵を守り,卵に新鮮な水流を送る。7~8日の後に卵は孵化する。仔の一匹が仲間の群れから泳ぎ離れると,雄はこの仔をパックリと口の中に取り込み,もとの群れの中に吐き出してやる。次の2週間ほどで幼魚は好き勝手に行動するようになり,数週間の後には,雄は仔の保護に関心を示さないようになり,縄張りを去り,仲間の雄と群れるようになる。

トゲウオの生殖行動

 
以上見てきた魚類は比較的新しい硬骨魚類のなかまです。進化の過程で、一度淡水域に逃げて硬い鱗や丈夫な骨を獲得し、再び海に戻ってきた連中です。進化の結果、多様な性闘争=縄張り闘争になったかもしれません。
 
我々人類につながる系統の魚類はどうだったのでしょうか。古いタイプの魚類とは、淡水域には行かなかった軟骨魚類=サメ、エイです。
 
 
サメの性闘争=縄張り闘争
 
サメにも縄張り意識が強いもの(ex.ホオジロザメ、メジロザメ等)がいますが、多くは単独で広域を回遊していて、縄張りは不明確です。繁殖期になるとメスのフェロモンによりオスたちが繁殖場に集まってきて、順々にメスと交尾をしているようです(下記動画より)。→つまり、サメの性闘争は弱い。
繁殖行動=メスを巡る行動は、下の動画を見る限りでは乱婚型のようです。
 
サメの交尾の動画1 [8]
サメの交尾の動画2 [9]
サメの交尾の動画3 [10]

[11] [12] [13]