2011-05-21

体内に摂取する可能性のある放射線物質は?

~魚や海草から摂取されやすい放射性物質~
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前回の内容で、各放射線物質が体内でどのように取り込まれていくか大よそ見えてきました
今回は、食べ物からどの放射性物質がどのようにして私達の体内へと取り込まれていくか、水産物に絞って、その経路を追及していきたいと思います

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■現在の状況

ワカサギから870ベクレルの放射性セシウムが検出、シラスからも560ベクレルと850ベクレルの放射性セシウムが検出されたということが発表されました。
又、国際環境NGO(グリーンピース)の調査によると、福島第一原発から50キロ離れた沖合で採取した海藻アカモクなどから、1キログラムあたり最高で13,000 ベクレル以上の放射性物質を検知。
沿岸海域においても、福島第一原子力発電所の南約30㎞から65kmの場所で漁港で譲り受けたアカモク、コンブ、フクロノリなどからも、1キログラムあたり最高で23,000ベクレル以上の放射性物質が検出されています。

今後も新たな海産物から、高濃度の放射線物質が検出されていくことが予測されますが、
生物の循環サイクルの中でどのようにして放射性物質が蓄積されていくのでしょうか?
 
■海に放出された放射性物質はどこに向かうのか?

海洋に排出された放射性物質の中で、量が多いのはヨウ素とセシウムです。これらは水溶性なので、水に溶けて、海流と一緒に移動します。
 
大きく区分すると2通りになります。
1.外向きの流れに取り込まれ、外洋へ
2.沿岸流に取り込まれ、沿岸伝いに拡散

 
1 福島周辺の冷たい水は黒潮の温かい水と混ざりませんので、黒潮が大きく離岸しない限り、犬吠崎よりも南に汚染水が進入するのは難しいと思われます。外向きの流れに取り込まれた放射性物質は、親潮にぶつかって南下した後、黒潮にぶつかって太平洋の真ん中に押し出されます。
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福島、茨城、宮城は、汚染水の通過経路となる可能性がありますが千葉沖の黒潮が壁となる為、千葉より南部は汚染の可能性は低いと考えられます。
 
2 放射性物質を含む海水の一部は、外側の流れに乗らずに、沿岸に滞留します。ゆっくりと希釈されながら、沿岸を漂います。大気から陸上に落ちた放射性物質が、雨に流されて、河川から海へ流れ出してきます。原発近傍の沿岸地域では、放射性物質が海底の砂や、海草類に取り込まれて、汚染が長期化する可能性があります。


■生態系における放射性物質の濃縮について
 1 濃縮係数

海洋に放出された放射性物質は、プランクトンや魚に取り込まれます。その後、放射性物質は食物連鎖を通じて、海洋生態系を循環します。生物の種類によって、放射性物質の取り込みやすさが異なります。それぞれの生物が、放射性物質を体内に蓄積するかは、濃縮係数というパラメータで表現されます。
濃縮係数=生物の体内の放射性物質の濃度/環境の海水中の濃度
IAEAのレポートに、様々な水生生物の濃縮係数の一覧表があります。海洋の生態系汚染の主役の放射性セシウムの濃縮係数は以下の通りです。たとえば、動物プランクトンの濃縮係数は40ですから、海水中のセシウムが10/BqLなら、動物プランクトンの体内はその40倍の400Bq/Kgに汚染されます。植物プランクトンから、海産ほ乳類まで、食物段階が上がるほど高くなる傾向があります。
動物プランクトン 40
藻類 50
エビカニ 50
貝類 60
魚 100
イルカ 300

 2 食物連鎖を通じた放射性セシウムの移動(捕食者への時間遅れの汚染蓄積)

チェルノブイリ事故で汚染されたキエフの貯水湖では、餌となる小型魚(上)のセシウムの値は事故の後すぐに上がったのですが、捕食魚(下)のセシウムの値は翌年になって跳ね上がりました。食物連鎖を通じて、上位捕食者に時間遅れで放射性物質が伝わったのです。

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     [小型魚]
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     [捕食魚]

チェルノブイリの事故後で、日本近海の表層海水の汚染のピークは1月後、スズキの汚染のピークは半年後、マダラの汚染のピークは9ヶ月後でした。
福島周辺海域では、植物プランクトンを食べる小型魚がすでに高いレベルで汚染されています。小型魚は多くの魚の餌になりますから、今後は生態系内での放射性物質の移動に注意する必要があります。
ここまででわかったのは今後更に汚染は拡大していき、現在は基準値未満の魚でも、数ヵ月後には高濃度になり食べれなくなる可能性があるということです。
気になるピーク後の推移はどのようになっていくのでしょうか。


 3 魚介類の放射線濃度の推移

魚が放射性セシウムで汚染されたからといって、その魚を未来永劫食べられなくなるわけではありません。チェルノブイリの湖でも、被食魚は事故後2年、捕食魚は事故7年後で、日本の暫定基準値(500Bq/Kg)よりも低い値まで汚染が減少しました。海産魚は、淡水魚よりも、放射性物質の減少が早く、影響を受ける速度も遅いと考えられています。その理由は、湖は閉鎖系なので、水中の放射性物質の濃度が下がりづらいことと、淡水魚は浸透圧調節のために、カリウムやセシウムなどのイオンを積極的に体内に取り込むのに対して、海産魚は体内の浸透圧調節のために、カリウムやセシウムなどのイオンを積極的に排出するからです。チェルノブイリの事故で、日本近海の海産魚の放射性セシウムの濃度が上昇しました。事故以前の濃度レベルに回復するのに要した時間は、スズキで1.7年,マダラでは2.5年でした。


■ まとめ

・海水の汚染の流出を食い止めるのが重要→安全性の議論ができるのは、汚染の進行が止まってから
魚は環境の100倍の濃度にセシウムを濃縮する→海水からセシウムが不検出でも安心できない
・放射性物質は、食物連鎖を通して循環する→食物連鎖を通じた移動に注意
・海水魚に蓄積されたセシウムが半分になるのに50日かかる→数ヶ月~数年オーダーで汚染は残る

また、今回の福島原発事故では、「ヨウ素、セシウム、ストロンチウム、プルトニウム」が直接海にでていて、チェルノブイリとは大きく状況が違っているということも付加えておきます。
現在魚からヨウ素とセシウムが検出されて、基準を超えていますが、もしかするとストロンチウムやプルトニウムも基準を超えているかも知れません。
これらは骨にたまるので、小魚のように「骨ごと食べる」ものはやめておいた方がよいでしょう。
特に、海底に沈むセシウム、ストロンチウム、プルトニウムは魚ばかりではなく、貝、海藻にも取り込まれることが報告されていますので、福島周辺の水産物はなるべく避けたほうが賢明かと思われます
放射線物質が海の中で、どのように汚染拡大していくかがおおよそ見えてきました
次回の記事では、福島原発の現在の空気中の放射線物質の流出度合に基づいて、空気中と陸産物からどのような経路でどのような放射線物質が体内に取り込まれる危険性があるかをまとめていきます。
 
 
以下サイトより引用
http://www.greenpeace.org/japan/earthquake/monitoring/3rd/#result3
http://katukawa.com/?page_id=4304
http://onndannka.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/post-f7da.html

List    投稿者 mizuguti | 2011-05-21 | Posted in ⑪福島原発問題No Comments » 

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