2011-05-13

今週の福島原発(5/1~5/10;5/8 3号機の黒煙噴出)

5/8の3号機の黒煙事件にあるように福島原発事故はまだ予断を許さない状況です。特に、直近の報道のおとなしさ(他の事件が多く、原発がほとんど扱われない)から考えても、マスコミ報道とは逆に事態の深刻さが増している可能性は高まっています。
今や自分達で確かな情報をつかんでいかなければ、安心して生活することもできません。
そこで毎週、東電やマスコミからの情報+そこで語られることのないネットの情報や仮説を整理し、福島原発の現状と復旧状況を発信していきます。
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■福島第一原発の現状
1.原子炉が破壊されていった経過
 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により、運転中の原子炉は緊急に自動停止したものの、送電線鉄塔が倒壊、所内の受電設備も損傷した。非常用のディーゼル発電機は津波によって故障し、全電源を喪失。
 そのため、原子炉や核燃料プール内の使用済み核燃料を冷やすことが出来なくなり、燃料棒の過熱、炉内の水位低下、燃料被覆管の溶融、水素の発生、格納容器圧力上昇の過程が進んで、1、3、4号機の建屋は水素爆発を起こして大破、2号機は、原子炉格納容器につながる圧力抑制室が破損し、核燃料棒に含まれる高レベルの放射性物質が大量に外部に漏出した。
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画像は、ワイン・ともちん・ホールイン「2011年03月21日被災地に届け!!その4」からお借りしました。

2.放射能の漏出
 12日15時36分に1号機で爆発が発生し、放射線量は1号機北西敷地境界付近で1,015μSv/hになり政府は半径20km以内の住民に避難を指示した。3月14日3号機でも水素爆発が発生。15日2号機でも爆発音があり、ほぼ同時刻に4号機でも爆発があった。4号機は、15日と16に火災もあった。政府は15日、半径30km以内の住民に屋内退避を指示した。
 大気に漏洩した放射性物質の量は37京ベクレル以上と推算され、4月12日、国際原子力事象評価尺度について、暫定的ながらレベル7と評価されている。なお、2号機から漏出している高濃度汚染水が含む放射性物質の量は、東電発表の水量と濃度に基づけば330京ベクレルである。

3.原子炉の現状
 原子炉の安全性を回復する上で重要なポイントは、止める、冷やす、閉じ込めるの3点であり、1~3号機は停止、4号機は定期検査中で燃料が無い状態であり停止はできている。
 しかし、冷やす機能は破壊されたまま仮設の注水ポンプで何とか冷やしているが、安定した冷温状態65度を保つことはできず、100度を超えている状態が続いている。
 閉じ込めるは、高レベル汚染水の漏出原因も特定されておらず、建屋も崩壊したままの状態である。
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画像はこちらからお借りしました。

■一週間の動き (東電、政府報道を整理)
5/1(日)
<東電>一号機原子炉建屋内の作業環境改善計画を発表
5/2(月)
<政府>参議院本会議において、がれき処理など、復旧のための第1次補正予算案が可決、成立
<東電>一号機原子炉建屋内の作業環境改善作業を開始
5/3(火)
<東電>一号機局所排気のための正圧ハウスの設置
5/4(水)
<東電>一号機局所排風機およびダクトの設置作業開始
<報道>二号機タービン建屋外の立て坑にコンクリート注入
5/5(木)
<東電>一号機局所排風機およびダクトの設置作業終了
5/6(金)
<政府>菅首相、浜岡原子力発電所のすべての原子炉の運転停止を中部電力に要請
<東電>一号機原子炉建屋内の空気の循環を開始
<報道>一号機水棺作業も本格化
5/7(土)
<東電>一号機原子炉建屋内の放射性物質の濃度、4.8ベクレル/cm3から1.97×10-2ベクレル/cm3に減少
<東電>四号機、コンクリートポンプ車により使用済み燃料プールへ放水を行う
<東電>二号機タービン建屋内から集中廃棄物処理施設への高いレベルの放射性廃液の移送を開始
5/8(日)
<東電>一号機原子炉建屋の二重扉の開放(自然通風による建屋の換気)
<東電>三号機、原子炉への注水を給水系配管から行う工事の準備のため、タービン建屋の復水器からの水抜きを実施(~10日まで実施)
<報道>三号機、圧力容器の温度が上昇
<未発表>三号機異変(黒煙を上げる)
5/9(月)
<東電>一号機原子炉建屋内に作業員が入り、放射線量測定を開始
<東電>三、四号機、コンクリートポンプ車により使用済み燃料プールへ放水を行う。合わせてヒドラジン(腐食防止剤)を注入
5/10(火)
<報道>一号機、建屋内計測器修理に着手 安定冷却へ本格作業

<参考>
東電HP リンク リンク
官邸HP リンク
マスコミ報道 NAVER 福島第1原発の最新状況まとめ

ここ一週間の動きとして、
東電は、1号機の自動冷却装置の復旧を目指して、原子炉建屋内の室内環境を図る。機械換気、自然通風により放射線濃度は当初の想定以上に改善。5/10~以降は、建屋内に計器の新設、冷却装置の配管工事を行う予定。工程は予定通り進んでいる様子。
一方、2~6号機の情報は少なく、3・4号機は断続的に燃料プールへ注水を行っている。5/8インターネット上で騒がれた3号機の黒煙発生に関するプレス発表はない。

■今週のネット情報:3号機はどうなっているのか?
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画像は3号機の使用済み燃料プール。一面に散乱したがれき(8日、東京電力)

現場の復旧作業は主に1号機を中心に進められているが、一方で5月に入ってから「3号機の原子炉の温度上昇が止まらないこと」「5月8日午前1時頃、3号機爆発か???」が話題になっている。
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画像は経済産業省:地震被害情報(第133報)(5月10日12時00分現在)及び現地モニタリング情報 

3号機はプルサーマル方式で発電している。プルサーマルではMOX燃料と呼ばれるウラン238とプルトニウムの混合酸化物 (Mixed Oxide) を燃料として使用する。現在、3号機はMOX燃料が514本(1000トン)あるとされており、約10分の1が使用中である。
5/8に噴出した黒煙の中には、二酸化プルトニウムなどの半減期2万4千年クラスの放射性物質が含まれていた可能性が高い。
当時は、東方向へ風が吹いており、太平洋側に拡散したと考えられる。
5/9現在、東京各地のガイガー値に大きな変化は見られない。
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画像は5月9日までの東京渋谷(電力館)における屋外放射線量の推移

黒煙事件に連動してか、この1週間で300度を越えていた3号機のRPV胴フランジが10日に急激に下がった。
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画像はRPV胴フランジの温度変化(5月3日から10日まで)

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画像はコチラ

胴フランジは、蓋の外でねじ止めしている接合部分であり、熱とか力をかけると最ももろくなる部分(だから、熱破壊をおきないようにこの部分の計測をしている)。
この部分の温度が高くなるのは、燃料の一部が溶けて飛び散ったからだと考えられる。
圧力容器が安全に運転できる上限は300度であり、原子炉圧力容器の本体とふたの接続部の設計温度も約300度である。つまり、RPV胴フランジ付近は、設計限界温度を超えている可能性が高い。
このことから、9日に福島原発で見られた黒煙は、爆発ではなく、破断したRPV胴フランジ部から漏れ出した放射性物質入りの蒸気だと考えられる。破断したことにより、容器内の換気が行なわれ、温度も下がったと思われる。
また、燃料の一部はすでに溶けており、底部に溜まっているのではないだろうか。

★現在の東電発表およびマスコミニュースでは1号機の復旧状況がクローズアップされているが、もっとやっかいな状況にあるのが3号機(格納容器の圧力抑制室が壊れている2号機もやっかい)

3号機はプルマーサル方式であり、3月の爆発による激しい損傷も当然ある。今後の状況に注視が必要である。

List    投稿者 MASAMUNE | 2011-05-13 | Posted in ⑪福島原発問題2 Comments » 

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