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意外と多様な両生類の世界

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NationalGeographic [1]より
 
いまグループで脳を探求していて、サル・人類に特有の共認機能や人類だけが持つ観念機能の実体に迫ろうとしています。しかし、いきなりそこにアプローチするのは難しいので、まずは共認や観念以外の部分である本能について、その構造と脳内のありかを明らかにしようと試みています。
 
そして、いま本能の進化史の解明に着手しています。生物史をひもとき、本能の構造を明らかにするなかでわかってきたことは、本能の最基底部には、生命誕生以来の本能である、危機逃避本能、代謝⇒捕食本能、分裂⇒生殖本能、同類認識による追従⇒集団本能がありそうだ、ということです。
 
生物は生物史を通じて、それら本能を基盤として、新たな本能を開発して進化していきます。本能の解明とは、その全容の構造化にほかなりません。
 
その追求の過程で、登場時期が不明な本能が出てきました。動物などでおなじみの、オス同志がメスをめぐって闘う“性闘争”の本能です。哺乳類では一般的に見られますが、それより前の両生類や魚類ではどうなのでしょうか。それを明らかにするために、まずは両生類の生態に迫ってみます。
 
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■両生類の一生
両生類には、カエルとイモリとサンショウウオがいます。世界に三種類しかいないのです。水にとどまった魚類と陸上に進出した哺乳類・爬虫類のすき間=ニッチに辛うじて適応した弱者たちだということでしょう。
●誕生
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カエルの卵            アカハライモリの卵    オオサンショウウオの卵 ヒダサンショウウオの卵
 
両生類は一般的に卵生で、ゼラチン質に包また卵を水中に産みます。イモリの仲間には体内で卵をかえす卵胎生のものもいます。卵胎生のものは母胎内で変態まで完了し幼体で生む場合もあります。その場合、幼生は母親の卵管の中で無精卵を食べたり (ex.ファイアサラマンダー)、卵管の上皮に増殖する分泌物を食べて成長します (ex.アシナシイモリ)。こうなると胎生に近いですね。哺乳類はまぎれもなく両生類から直接進化したことがわかります。おまけに、卵生のアシナシイモリでは、生まれてから幼生は、母親の表皮(三日で再生)を食べて育つそうです これなどは、哺乳類の授乳に通じます。
 
また、コモリガエルは背中で成体まで育てます。背中からカエルが生れてくる貴重な映像はこちら⇒背中からカエルが生まれる [5]
  
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ファイアサラマンダー           アシナシイモリ              コモリガエル
 
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動画はこちら⇒母親の皮膚を食べるアシナシイモリの幼生 [6]  
 
●幼生
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カエルの幼生(オタマジャクシ)   トウキョウサンショウウオの幼生  イモリの幼生
 
オタマジャクシに追従本能は見られるのか?水溜りにたくさんいる場合、群れているように見えますが、各個体が勝手に動き回っており、群れをつくって泳いでいるようには見えません。また、彼らは雑食性で水草や藻類のほか、動物の死体なども食べ、とくにエサが少なくならなくとも共食いをする場合がめずらしくありません。イモリの幼生も共食いをします。彼らは、口に入りそうな動くものには何にでも食いつく習性があるようで、それが共食いにつながるようです。どうも、両生類の幼生は同類認識=追従本欧を封鎖しているようにみえます。
 
 
●成体
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ニホンアマガエル           ニホンイモリ(アカハライモリ)        オオサンショウウオ
 
両生類の成体は様々な場所に生息します。オオサンショウウオのような水生種から水に浸かると溺れてしまう陸生種まで多様です。食性は動物食で、昆虫類、節足動物、甲殻類、貝類、ミミズ、両生類の卵や幼生等も食べます。ツノガエルはねずみだってたべちゃいます。
【画像】ねずみを食べるベニツノガエル [7] 
 
 
●繁殖期・産卵
両生類はカエルなら2~3年で繁殖をはじめます。寿命は野生で10年程度。オオサンショウウオは何十年も生きるようです。両生類は、繁殖期にオスどうしの闘いが見られることがあります。とくに顕著なのがオオサンショウウオです。彼らは、繁殖期が近づくとオスが川を上り、最適な産卵場所(岩陰の穴など)を確保し、他のオスが近づくと追い払います。メスがやってくると受け入れ、メスの産卵中も穴の外をオスが守り、メスに近づこうとする他のオスの脚に噛み付くなどして激しく追い払います。近くにオスがたくさん居る場合には、防ぎきれず隙を見て巣に入られ、射精されてしまうということも起きるようです。
 
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脚に噛み付いた瞬間
 
↑画像ではわかりにくいので興味あるかたは動画⇒NHKエコチャンネル [8](3:30当たり)でご確認ください。
 
イモリでも繁殖期になると、オス同士は縄張り争いをすることがあります。お互いに立ち上がってレスリングを行うこともあります。
 
また、カエルは繁殖期にいわゆる“かわず合戦”と呼ばれるメスの奪い合いが起こります。カエルはメスの上にオスがのっかり、メスが卵を産卵すると同時にオスが放精する形態をとりますが、メスの背中をめぐってオス同志がもみ合うようすがよく見られます。
 
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モリアオガエルの産卵           ヒキガエルのかわず合戦    
 
動画で見たい方は⇒【画像】かわず合戦 [9](これの5:00以降がわかりやすいです。)
 
                               
 
両生類は性闘争をします。それは弱者だったからでしょう。彼らは砂漠の水たまりでも繁殖できたり、小型のまま隠れ住むニッチを獲得し、したたかに生き延びてきました。外敵からの圧力低下に対して、内的な淘汰圧力を高めるため生み出されたのが性闘争という様式です。その結果、上で見てきたように生殖の様式など多様な進化をとげてきました。
 

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