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人類の拡散と進化シリーズ8~人類における言語機能の獲得と直立歩行訓練について~

~はじめに~
前回のブログ記事で
http://www.biological-j.net/blog/2010/10/001022.html [1]
http://www.biological-j.net/blog/2010/10/001019.html [2]
「人類の拡散と進化シリーズ6・7~人類はどのように言語を作っていったのか~」
を取り扱ってきました。
その内容にあるように、人類は高い外圧状況(生存圧力)において「言語」を使い
周りとの「共認充足(活力源)」の1つとして生き抜き、言語機能を高めてきました。
今回はその言語機能(=発声)について、以下のような追及していきます☆
1.「人類における発声の仕組み」
2.「赤ちゃんの成長過程と言語機能の獲得~足蹴りと笑い~」
3.「言語機能と脳の仕組み」
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図1:赤ちゃんの笑顔
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1.人類における発声の仕組み
まずギターに例えて、音の出る仕組み(構成)を確認してみると、
ギターの「弦」を「指やピック」で弾くことで振動させ音を鳴らす。
しかし、「弦」を弾くだけでは音は小さいため、その音(振動)を「ボディ」に共鳴させて音を増幅(大きく)している。この音の出る仕組みは発声においても変わりはなく、ギターの構成要素を大きく3つの発声要素に当てはめると、
①空気を吐く(呼吸)「肺」…「指やピック」で弾く
②音源となる「声帯」   …「弦」
③音を増幅させる「共鳴腔」…「ボディ」
 ※以下の人間における「発声の仕組み」の図2,3を参照。
発声のプロセスとしては、まず息を吸い、「肺」に入った空気を吐き(押し出し)「声帯」を振動させる。
これにより音が生み出され、さらに声道(胸・鼻・口・頭なども)といった「共鳴腔」で音を増幅させている。
図から見ても分かるように人類やその他動物も、発声(音を出すこと)が可能な体の仕組みが出来ているのです☆
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図2:発声の仕組み1(簡易版)
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図3:発声の仕組み2(詳細版)
2.赤ちゃんの成長過程と言語機能の獲得~足蹴りと笑い~ 
 上記では「発声の仕組み」について紹介したので、ここでは
「人類の赤ちゃんの成長過程においてどのように喉の構造が変わっていったのか?」
そして、「どのように言語機能を獲得していくのか?」について紹介します☆

※光るナス ~赤ちゃんが言語を獲得するまで その6~
http://blog.livedoor.jp/nagayanonasu/archives/54891869.html [6]から引用

~引用開始
>下アゴやノドを包んでいる骨格が短期間に急速に成長して、気管の先端部が沈んでいきます。そして軟口蓋とのあいだで、咽頭が拡がってくる。また、舌は大人並みですからあまり発育をとげないので、発達する口腔のスペースとのバランスは大人のものに近くなっていきます。
舌は大きくなった口腔の中でゆとりを持って運動するようになって、そのすきまに歯が生えてくる。このノドの劇的で急速な変化のあとで、ようやく赤ちゃんは口を使って共鳴した音をかなりの音量で出せることが、物理的に保証されるようになるわけです。
~引用終了

生まれて間もない頃の赤ちゃんの喉の構造は、チンパンジー型、つまりすぐに多様な言語を発声できる形にはなっていません。
そのため出来ることといえば、泣くかせいぜいゲップをするかくらいです。
 ※「人とチンパンジーの喉」の図4、「大人と赤ちゃんの喉の構造」の図5を参照。
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図4:人とチンパンジーの喉
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図5:大人と赤ちゃんの喉の構造

ここで「発声の仕組み」で紹介したように、人類の言語(発声)は声帯・声道の中で音を
増幅・振動させる事によって多様な音の組合せを行っています。
しかし、この仕組みは同時に気管と食道とを繋げる空間を広げる事と同義である為、
口から取り入れた食べ物が誤って気管に入ってしまう可能性も高くなります。
気管に食べ物が入り込んだらどうなりますか?
そう。咳き込みますよね。
つまり、十分な肺活量が確保されて、異物を取り除くのに十分な息を一気に吐き出せるようになって、始めて安全に食事や発声が可能な喉になるのです。
そのため、生後の赤ちゃんは、まだ肺や喉が未発達であっても、気管ではなく食道にスムーズに母乳を運ぶために、
チンパンジー型、つまり食べ物が気管に入りにくい形状を優先させているのです。
 ※ちなみに人類以外の殆どの動物も、このチンパンジーと同じような気管・食道の構造により、
  食べ物と呼吸とを使い分けています。
それから、生後3、4ヶ月頃になると、喉の構造に急速な変化ができ、徐々に「笑い声」を発することができるようになります。
赤ちゃんが最初に発声する多音節の発声、つまり言語の条件を備えた最初の行為は、実は「笑う」という行為なのです。
しかし、赤ちゃんの「笑い」は決して単独で現れるのではなく、身体(脚)を何度も何度も繰り返し動かしながら「笑う」のです。
最初の内は、脚のリズミカルな反復運動に「笑い声」の反復が追いつかないそうですが、
生後3ヶ月~6ヶ月頃には何度も何度も繰り返す過程で「笑い声」も長い間続けることが
できるようになるようです。
 ※この頃、大人が胴を支えてやって赤ちゃんを直立させてみると、トコトコ二足歩行を始めていきます。
また生後6ヶ月~8ヶ月頃から脚の反復運動が一定期間続けると、今度は次第に手の反復運動を始め、それと同時に喃語を発声するようになります。
 ※喃語というのは、「バアバア」とか「ンマンマ」とか「ダアダア」といったような、
  いわゆる赤ちゃん自身が発する赤ちゃん的な言葉のことをいい、複数の音節が見られます。
 ※「笑いと手足の動きの同期」の図6を参照。

このように、赤ちゃんは「笑い」という親和行為(≒感覚機能)に、身体の反復運動(≒運動機能)を織り混ぜること、徐々に言葉を発信することができるようになるのです。
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図6:笑いと手足の動きとの同期

3.言語機能と脳の仕組み
上記で紹介したように人類の赤ちゃんは「運動機能の発達(身体の反復動作による発声基盤の獲得)」や「感覚機能の発達(「笑い」などによる周りとの親和行為)」により徐々に「言語」を発声することが出来ます。
しかし、発声に必要な運動機能や感覚機能が獲得されたからといって、それが言語の獲得における決定打になる訳ではありません。 
様々な発声を可能にする能力があったとしても、そもそも「どのような声(音)を出せばいいのか」を判断する能力が無ければ、それは全く意味を成さないからです。
そこで、人類における言語機能と脳の仕組みについて紹介します☆
 ※本ブログに記載されている「脳」関連の記事もご参照下さい。

※言語の起源を再検討する
http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/koudou-shinkei/ninchi/research/dev/dev-1.html [10]より引用

~引用開始
これについては、ミラーシステムという認知神経科学的研究から提唱されている概念が、貴重な示唆を提供してくれている。
ミラーシステムは、ブローカ野とその相同領域に存在するミラーニューロン、運動前野および縁上回を中心とする頭頂葉の部位から構成されている。他者の行為を認知する際に、それを自分自身の行う運動パターンをもとにして理解するためのネットワークである、「なぞる」という語によって、ほうふつとするような認識にコミットしている。
(中略)
しかも、行為の意味理解は、実は、人間がことばの意味をカテゴライズする作業と密接に結びついている。
私たちが、1個の球体を目にして「ボ-ル」という音の配列を耳にしたとしても、それが対象のどういう属性に対応しているのかということを適切に把握することは、理屈の上ではほとんど不可能に近いはずである。
にもかかわらず子どもは、けっこう効率良く、含意するカテゴリーの絞り込みを行っていく。そこには、ことばを教示してくれている他者の対象をめぐる行為の情報が関わっている。
つまり、相手が対象といかに関係しているかを観察し、その働きかけを自分自身の身体に引き移した上で、新奇なことばの意味を認識しようとする。それゆえ、もしミラーシステムが存在しなかったならば、人間はとても今日のような膨大な語彙を個々人で習得することはできなかっただろうし、運動性の言語中枢がシステムに組み込まれているのも、言語の進化を考える際、決して偶然の結果ではなかったと類推せざるを得ないのである。
(中略)
現在のところ、リズミックな音の産出を動物は大脳基底核のような部位によって実行できることが判明している。
その機能が、先述のミラーシステムと有機的に連係するようになった段階で、随意的に発声できるようになった
フレーズは、意味を持つようになったのかもしれない。意味とは、音を交換する者同士における、その音の理解のしかたが共有されるということにほかならない。それを促したのが公共的な 会話状況の創出であったと推測するのは、さして無謀なことではないだろう。
~引用終了

つまり、言語を獲得する過程では、サル時代に形成された「他者の意図を理解する機能」が不可欠であろうという推測がなされています。
この様に「他者との共認形成⇒充足体験」を通じて言語の意味内容と発声パターンが結び付けられていく中で、徐々に言語機能を獲得していくのです。
4.まとめ
上記のように、現在の人類が多様な言語を発声できるようになったのは、
共認充足を基礎とした「感覚機能の発達(笑いなどの親和行為)」や
「運動機能の発達(足蹴りや踊りなど直立歩行訓練による発声基盤の獲得)」により
「言語機能の発達(おしゃべり)」をおこなってきたからこそなんです。
その様な共認充足源もあったからこそ、人類は約500万年前の高い外圧状況から生き延びてきたんですね☆
次回は赤ちゃんの言語機能の発達(喃語から母国語に至る過程)について追及していきたいと思います☆

5.引用・参考
※引用1:るいネット「言語機能の獲得と直立歩行」
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=195755 [11]
※引用2: 発声の仕組み図解
http://structure.nuae.nagoya-u.ac.jp/old/research/bio/bio_mecanizmu-j.htm [12]
※引用3: 赤ちゃんの喃語
http://hatioji-web.hp.infoseek.co.jp/dv05.html [13]
※引用4: 光るナス
http://blog.livedoor.jp/appie_happie/archives/51126536.html [14]
※引用5: 言語の起源を再検討する
http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/koudou-shinkei/ninchi/research/dev/dev-1.html [10]
※写真引用:長屋の光るナス
http://blog.livedoor.jp/nagayanonasu/archives/54894719.html [15]
※参考1: 変異するニューロンと膨大なネットワークが無限の思考=観念機能を作り出す!?
http://www.biological-j.net/blog/2008/03/000424.html [16]
※参考2: 大脳新皮質を著しく進化させたサル・人類
http://www.biological-j.net/blog/2007/04/000184.html [17]

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