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人類の拡散と進化シリーズ2~観念機能の獲得~

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                         画像はコチラ [1]からお借りしました。
前回の記事では、何故人類が移動したのか に着目して、移動に踏み切ることが出来た原因を明らかにしました。そこで重要だったのは『言葉=観念の発達』です。
今回の記事では、観念機能に着目して、それを獲得する為に必要となった重要な要素を明らかにしていきます。
いつもありがとうございます。
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■極限的な状況を乗り越える為に
観念機能の獲得には、外圧の変化が大きく影響しています。
樹上から落ちたサルは、それ以前までの暮らしとは180度違う環境に晒されます。過酷な状況に陥った訳ですが、その環境をどのように乗り越えてきたのでしょうか
るいネット [5]から実現論:前史 ヘ.人類:極限時代の観念機能 [6]より引用です。
   

足の指が先祖返りして、それ以前の獣たちと同様、足で枝を掴むことが出来なくなったカタワのサル=人類は、樹上に棲めるという本能上の武器を失った結果、想像を絶する様な過酷な自然圧力・外敵圧力に直面した。そこで、本能上の武器を失った人類は、残された共認機能を唯一の武器として、自然圧力・外敵圧力に対応し、そうすることによって、共認機能(≒知能)を更に著しく発達させた。  
   
極限状況の中で、人類は直面する現実対象=自分たちを遥かに超えた超越存在たる自然を畏れ敬い、現実対象=自然に対して自分たちの生存(=危機からの脱出)への期待を込め、自然が応望してくれる事を切実に願った。つまり、人類は直面する過酷な現実対象=自然を凝視し続ける中で、元来は同類を対象とする共認機能を自然に対して作動させ、自然との期待・応望=共認を試みたのである。そして遂に、感覚に映る自然(ex. 一本一本の木)の奥に、応望すべき相手=期待に応えてくれる相手=精霊を措定する(=見る)。人類が万物の背後に見たこの精霊こそ、人類最初の観念であり、人類固有の観念機能の原点である。直面する現実対象(例えば自然)の背後に精霊を見るのも、物理法則を見るのも、基本的には全く同じ認識回路であり、従って精霊信仰こそ科学認識=事実認識(何なら、事実信仰と呼んでも良い)の原点なのである。  
かくして人類は、生存課題の全てを本能⇒共認⇒観念(精霊信仰)へと先端収束させる事によって、観念機能(→二〇〇万年前の言語機能を含む)を発達させ、その事実認識の蓄積によって生存様式(生産様式)を進化させていった。そして遂に1万年前、弓矢の発明によって外敵と対等以上に闘える段階にまで生存力(生産力を含む)を高めて、過酷な生存圧力を動物一般レベル以下にまで克服した。人類は、ここまで五〇〇万年を費やして共認機能⇒観念機能⇒生存力(生産力)を進化させてきたが、その間、サルの主圧力であった同類闘争圧力は全く働いていない。しかし、忘れてならないのは、同類闘争圧力は働いていないが、極限的な生存圧力と、それ故の期待・応望の同類圧力は極めて強力に働いており、この強力な生存圧力⇒同類圧力こそが、観念機能と物的生存様式を生み出し、進化させてきたのである。

サルは地上に落ちた途端、最弱といってもいい程の存在になり食料確保が極めて困難になります。獣と戦っても勝てる可能性が極めて低い弱者が、隠れ家として探し出したのは生物が寄り付かないような洞窟でした。未知の洞窟の中で自集団が生きていくには、仲間の連帯、調和が第一になります。互いに肯定視をして、役割を受け入れ、生きていくために一丸となっていたと考えられます。
過酷な自然外圧に晒されながらも、食糧、水を与えてくれるのは同じく自然でした。その自然を対象化することが当時の猿人には現実だったのです。現実を徹底的に直視して同化する事で自然に対して可能性を見出したと考えられます。
尋常ではない環境で生き残るために、共認機能に特化して適応してきたのです。
■多面的に可能性収束した猿人
共認機能を特化させることで、共認充足をより深めます。この深める段階で脳容量の増加を実現しました。共認充足を徹底的に深めた段階が、後の観念機能獲得に大きく寄与します。
それでは、共認充足と脳容量増加の関係はどのようになっているのでしょうか
三つの事例を挙げて説明します。

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るいネット [5]から人類の拡散と観念機能の進化①~猿人段階~ [7]より一部引用です。

1.猿人段階(約700万年前~200万年前(一部150万年前まで))
 猿人段階では、観念機能上重要な前頭葉の発達度合いは低く、言語をつかさどるブローカー野も未発達であることから、言語能力はせいぜい現生チンパンジーレベル程度。石器も使用していないことから、観念機能はまだ獲得されていないと考えられる。
しかし、猿人段階でも知能発達=脳の進化は確実に起こっている。
この知能発達=脳進化の原因は大きく3つ考えられる。
1つは、歩行訓練における共認機能の発達。
 完全な2足歩行の形跡は、500万年前のラミダス猿人段階で確認されるが(サヘラントロプス属・オロリン属はまだナックルウォークに近い)当時の人類は言ってみれば「ヨチヨチ歩き」の段階で(それほど2足歩行はバランスが悪い)、日常的に歩行訓練を行っていたと考えられる。この直立歩行訓練の中で親和充足・解脱充足を得ることで、(猿時代に獲得した)共認機能を発達させて行った。

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                         画像はコチラ [8]からお借りしました。
補:歩行訓練は踊りに近かったものだと考えられます。極限状況故、集団内の意識の根底に仲間と自分の区別はなく、「みんな一緒」という意識があったと考えられます。その意識の元では、相手と動きを合わせることが心地よく、歩行訓練(上下に飛び跳ねる様な踊り)が充足源でした。

2つ目は、食生の肉食化(死肉食)。
 脳は大量のエネルギーを消費する為、栄養価の高い食生が必要不可欠になる。肉食は(肉体負荷が高い一方で)エネルギー量が高く、脳の発達の促進が可能になった。

補:脳と他の器官との違いは、エネルギー消費量です。典型的な成人の脳重は約1200gであり、これは全体重の約2%にあたります。しかし、脳は平均的な成人のエネルギー摂取量の20%を消費します。つまり、脳を発達させるには、エネルギーの確保=食性は重要な問題です。霊長類の食性は、大きくは「葉っぱ喰い」と「果実喰い」に分かれますが、果実喰の方が脳容量が大きいことが分かっています。
人類が脳進化に舵を切ることができたのは、栄養価の高い食性(死肉)を確保することができたからでしょう。

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3つ目は、遺伝子の変化。
 DNA解析の結果、約300万年前の猿人段階で全ての生物にセットされている「脳の発達を抑制する遺伝子」が欠損したことが解っている。(脳を発達させることは、出産負荷の増大、エネルギー負荷の増大など生命的負担が大きくなる為、発達を抑制する遺伝子が生物にはセットされている)この遺伝子が欠損したことで、本能的限界を超えて脳を発達させることが可能になった。

脳の発達を抑制する遺伝子は「CMAH」と呼ばれており、チンパンジーから人類に進化する過程で失った遺伝子の一つと言われています。200万~300万年前ごろ突然変異が起きて、CMAHは遺伝子としての機能を失ったといわれています。そして、この突然変異とほぼ同時期に脳が大型化しています。つまり人類は、(他の動物と異なり)脳の成長を抑えていたタガを外し、脳(観念)進化に可能性を賭けたということがわかります。
引用先URL遺伝子を失って進化した人類 [9]

このように、猿人は観念機能の獲得には至っていないものの、後の観念機能獲得に繋がる脳進化・共認機能進化を図っていた。猿人段階は言わば「観念機能獲得の前準備段階」と言え、この猿人段階での知能発達の基礎があったからこそ、原人段階での観念機能獲得が可能になったと言っても過言ではない。
先述したように、脳の過度な発達は生物にとって負担が大きいが、人類(猿人)は、あえてこの危険な脳進化の道を選んだ。
実現論で語られているように、人類は「木から落ちた猿」であり、本能レベルでは全く外圧に対応できない最弱の生物だった(実現論1_6_01)。この逆境状況において可能性収束したのが、(本能ではなく)猿段階で獲得した共認機能の進化=知能の発達だったのである。逆に言えば、本能では全く適応できない逆境状況こそが、知能発達の道を開いたとも言える。

中心軸に共認機能を据えて、立体複層的に共認充足や踊りという経験が構築された事が脳容量の増加へ繋がったと考えられます。それに適応する為に食べ物も変わったのでしょう。
人類が観念機能を獲得できたのも、共認充足を深めるという前段階があったからなんですね。
次回は、観念機能を獲得した原人について追及していきます
お楽しみに

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