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セミに異変???夜に鳴く「夜ゼミ」

yorusemi.jpg
 
最近、夜寝ていて気がついたんです。セミが鳴いている…。
気がつくのが遅いかもしれませんが(汗)
蝉が夜なくなんてことは、これまでなかったはずです。なんかオカシイ。
 
ということで、昨年の素数ゼミ [1]に続くセミ第二弾。「夜ゼミ」
 
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セミが夜鳴くのは10年ほど前から
ネットで検索してみると、大阪だけでなく東京や埼玉でも見られる現象のようです。ある研究者の方によれば10年ぐらい前から起きている現象らしいのです。

普通セミは昼に鳴くもの。しかし都心部に住んでいる人ならセミの声を夜間に聞く機会も多いはず。この「夜にセミが鳴く現象」について、セミの生態学に詳しい埼玉大学の林正美(まさみ)教授によれは、この現象は都心を中心に10年くらい前から指摘され始めており、特にここ4、5年はその傾向が強まっているとのことである。

Garbagenews.com [5]より)
 
 
セミが夜鳴くのは昼間と勘違いしているから?

ではなぜ夜間にセミが鳴くのか。林教授によればその理由は大きく二つあるとのこと。一つは「夜の気温が高いから」。セミは24~26度の気温で良く鳴くのだが、最近は25度を下回らない熱帯夜が増える傾向にある。これがセミを夜鳴かせる一因なのだという。
そしてもう一つは「街灯などで夜でも明るいから」。ネオンや街灯などで明るい場所が多い都心部では、夜間でも昼間に近い明るさにある場所が多い。これがもう一つの要因。「暑く明るい」。この条件が整っているので、ニイニイゼミやアブラゼミなどは昼間と勘違いして鳴くのではないとしている。
  
ちなみに大阪では東京と同じように「暑く明るい」条件が揃っているが、東京ほど夜間のセミは聞かれないという。これについては、大阪地域ではニイニイゼミやアブラゼミはあまり生息しておらず、クマゼミがほとんどであり、クマゼミは夜にはほとんど鳴かないからだとのこと。

Garbagenews.com [5]より)
 
ネットを検索すると、上記と同じ内容となっています。「夜鳴くセミ」は小学校四年生の国語の教科書にも紹介され、そこでも同じ理由で夜鳴くとされています。
 
しかし、昼に適応した昆虫が、簡単に夜の活動に移行できるのでしょうか。
そこで、調べてみると、興味深い事実がみつかりました。
 
 
バンコクのセミは夜に鳴く!
タイ・バンコクのセミは昼鳴くことはないそうです。タイ人に「日本では昼に鳴く」と説明するとタイ人は「それは、蝉ではない!」と返されるそうです。(女社長のバンコク奮闘記 [6]より)
バンコクでは蝉が夜鳴くのは常識のようです。やはり、気温が高いとセミは昼よりも夜鳴くようになるのでしょうか。
しかし、気温が高いといっても、大阪と熱帯地方のバンコクが近い状況なのか?
そこで、タイと大阪の気温を調べて見ました。
 
 
大阪や東京の気候は、タイに近づいている。
タイ・バンコクの夏は4月。月間平均気温は30.3度、平均最高気温38.1度、平均最低気温24.0度、平均湿度72%。(2008年データ:在タイ日本国大使館 [7]より)
一方、大阪は8月の月間平均気温が28.0~29.9度、日最高気温35.0度、日最低気温24.7度、月平均湿度63~64%となっています(2005~2009年、気象庁 [8]より)。日本の都市部ではヒートアイランド現象で、モンスーン気候のバンコクの夏と気温や湿度は変わらなくなっています。
 
そうなると、今後都市部のヒートアイランド化が進むと、日本のセミももっと夜に鳴くようになるということになります。
でも、それはセミが今後“勘違い”し続けるということ?
タイの蝉に至っては暑過ぎて完全夜型に適応してしまったのでしょうか。

 
ここで、発想を変えてみます。
 
セミは元々、熱帯地方の昆虫です。そうなると、タイにいるセミの姿の方が本来なのでは?
 
 
セミの先祖は夜行性
Wanze.jpg
セミという昆虫は形態学上はカメムシ目 [9](上記写真)に分類されています。ストローのような口で植物の蜜を吸う動物の一群が彼らの仲間です。
 
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画像を拡大して見る [10]
(画像はJT生命誌研究館 [11]よりお借りしました)
進化系統樹上もカメムシの子孫にあたります。そのカメムシは今でも夜行性です。セミも元々はカメムシと同様、夜行性だった可能性が高いと思われます。夜行性ゆえに、鳴くことでメスを呼び寄せるという行動様式もしっくりきます。夜なら天敵である鳥類にも捕まらない。
 
つまり、現在見られる蝉たちは、元々は夜鳴いていて、熱帯地方から各地に拡散し、寒冷地適応する過程で昼型に移行していったのではないでしょうか。
 

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