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原猿から真猿へ6 ~闘争集団の形成~

前回の記事は、共感機能の獲得について書きました。
私たちの心の土台となる共感機能は、本能を超え出るしかないといったとんでもないほどの不全から獲得したものだったということがわかりましたね
数回にわたって紹介している、「実現論:前史 ニ」も後半に入ってきました。
共感機能を獲得し心の原初を獲得した原猿たちは、単独生活から集団生活に変わっていきます。その過程はどのようなものだったのでしょうか?
今日は共感機能の獲得過程を再度おさえてから、外圧の変化、それに伴う共認統合の進化を現在のサルと対比させながら見ていきたいと思います。
【過去シリーズ記事】
原猿から真猿へ1 ~原猿って何?~ [1] 
原猿から真猿へ2 ~猿の拡散と進化過程~ [2] 
原猿から真猿へ3 ~真猿への進化を、現存する原猿の特徴から探る~ [3]
原猿から真猿へ4 ~原猿が陥った「本能不全」~ [4]
原猿から真猿へ5 ~共感回路の獲得~ [5]
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■共感機能の進化の流れ
原猿における共感機能の進化の流れ [8]より引用

共認機能は、初めは敗け猿たち(≒若オスたち)の間で、形成されました。そして常に、この敗け猿の中の強者が老首雄を倒して次の首雄になることを通じて、共感機能の遺伝子がオスにもメスにも遺伝してゆきます(注:その変異はY染色体以外の染色体にあるからです)。そして、その様な漸進的な変異が何万回となく繰り返されて、共感機能が発達してゆきます。この若オスたちの進化は適応態に達するまでずっと続きます。

前々回紹介した様に、樹上逃避機能を獲得した原猿の若オスたちは、縄張りは持てないけれども死ぬことも出来ず、過剰な緊張や怯えや飢えの苦痛など、全ゆる不全感に恒常的に苦しめられる、本能不全の状態に陥りました。
本能ではどうにもならない(従って本能を超え出るしかない)という未明課題に直面した原猿たちは、同一視→共感回路を獲得することでこの不全を乗り越えて行きます。
この獲得した機能は、遺伝子を通じてメスにも遺伝していきます。そしてそれが何度も繰り返され、より共感回路が発達していきます。
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■共感を土台とした集団の形成

次に首雄とメスですが、首雄は多数の若オス達と絶えず性闘争・縄張り闘争を繰り返しており、強い不全感を孕んでいます。従って共感充足の欠乏も強いと考えられます。それに対してメス間の縄張り闘争は、メスの縄張り数がオスの3倍あり、メスに加わる闘争圧力はオスに加わる圧力の1/3以下です。従ってメスの不全感は首雄の不全感より小さかったでしょう。
従って、まず首雄の性(本能)的期待+共感充足の期待が先行し、それに応える形で(メスも共感欠乏を孕んでいますので)同居するようになっていったのだと考えられます。そして結果としてその方がメスにとっても、出産時の安全や食糧確保上、有利(より適応的)であったので、その方向(同居し、雌雄相互の期待・応合回路を更に進化させてゆく方向)に進化していったのでしょう。

首雄の強い不全感→首雄の共感充足期待△・メスの共感欠乏△⇒同居(集団の形成)
このような流れから徐々に原猿は集団化していきます。現在の原猿と照らし合わせても、より発達した原猿の方が複雑な集団を形成しているのは表からも明らかですね。
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より詳しい内容は参考投稿を参照してください。
参考:原猿から真猿へ3 ~真猿への進化を、現存する原猿の特徴から探る~ [3]
   原猿から真猿へ4 ~原猿が陥った「本能不全」~ [4]

☆では、共感回路を獲得した原猿のさらなる進化過程を見ていきましょう。

■環境外圧の変化⇒種間闘争・同類闘争の激化
約5000~4000万年前、地球は温暖化していました。当時は、南極大陸までも亜熱帯雨林に覆われていたほどです。これを期に原猿は世界中に拡散していきました。
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4000万年前、地球は突如寒冷化し始めました。寒冷化の主要因は海洋循環の変化といわれています。それまで地球全域に広がっていた森は、北から徐々に縮小していきます。ヨーロッパ、北米、アジア大陸全域に生息していた原猿たちは棲家を失い南に追いやられていきます。環境外圧の変化によって、種間闘争・同類闘争が熾烈化していきます。
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参考:原猿から真猿へ2 ~猿の拡散と進化過程~ [2]
同類闘争が激化すると、単体より集団で適応する方が有利になってきます。よって猿たちは共感統合を母体とした集団を作るようになります。

■+統合の獲得
ニ.サル時代の同類闘争と共認機能 [9] より引用

 親和(スキンシップ)は皮膚感覚を発達させ、より不全感を解消する効果が高い+(快=ドーパミン)感覚回路を親和回路の周囲に形成していった。この+回路(ドーパミン)は、全ゆる不全感覚を捨象する(マヒさせる)事が出来る。従って、不全感を捨象すべく解脱収束したサルたちは、生存課題であれその他の何であれ、そこに障害=不全がある限り、それを捨象すべく+回路に収束する。これが、共認統合に次ぐ、サル・人類の意識の、第二の統合様式たる+統合であり、全ての捨揚統合の原点である。

集団を形成したオス同士たちは、集団内外の怖れや怯えを解消すべく、共感回路を強化していきます。そして共感回路を母体とし、皮膚感覚、親和系の脳回路の強化して+統合(捨揚統合)機能を獲得します。この+統合により不安を捨象し、闘いに打って出るようになります。ハイテンションになりイケイケな状態になる回路だと考えてください。
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<チュウベイクモザル:写真はコチラ [10]からお借りしました。>

■闘争系共認統合の獲得

 原猿弱者たちは、この+回路によって怖れや怯えや危機逃避をマヒさせ=捨象し、仲間+縄張り闘争+へと+共認収束することによって、遂に闘争集団を形成し、縄張りを確保する事が可能になった。(これは、麻薬で怖さをマヒさせて闘いに打って出るのと同じである。人類に見られる闘いの前の踊りも、同じ効果を期待したものである。)こうして約3000万年前、遂に同類闘争(縄張り闘争)を第一義課題とする真猿集団が形成された。親和収束⇒+収束を母胎にして、より上位の闘争系・集団系の課題を共認し、その闘争共認に従って役割を共認し規範を共認してゆく、この第三の統合様式たる闘争系の共認統合こそ、サル・人類集団を維持させている主要な統合様式である。

猿の集団規範が本能ではなく共認であることを示している事例にハヌマンラングールの事例があります。
京大の杉山氏が観察した事例に若オスが徒党を組んでボスオスと戦うというものがあります。1匹のボスオスが複数のメスと子供からなる群れに、若オス7匹が攻撃を仕掛け旧ボスを追い出し、その後一番強い若オスが他の若オスを追い払い、新ボスになると言う流れです。
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<ハヌマンラングール:写真はコチラ [11]からお借りしました。>
このハヌマン君は、地域によって複雄複雌の集団を形成しますが、繁殖期にはボスが他のオスを追い出す単雄複雌の集団を形成します。
このように本能に加えて共認も集団形成に使われていきます。
<参考>
tips100:ハヌマンラングールの子殺し(『子殺しの行動学』杉山幸丸、1993、講談社学術文庫) [12]
書評:HUREC AFTERHOURS 人事コンサルタントの読書備忘録【362】『サル学の現在』 [13]
ハヌマンラングールの子殺し [14]
峠おやじの「ぼやき日誌」 [15]

■闘争共認などの上部共認は解脱を母体として形成されている

 要約すれば、樹上に進出したサルは、同類闘争(縄張り侵犯)を激化させ、飢えと怯えの不全感から解脱すべく、相手との期待・応望回路=共認機能を進化させていった。こうしてサルは、本能を超えた共認によって、はじめて自らの意識を統合することができた。サルが形成したこの全く新たな共認機能について忘れてならないのは、不全感から解脱する為の解脱共認(親和共認を含む)こそが、全ての共認の原点であり、その母胎の上に闘争共認や規範共認が上部共認として形成されているということである。

事例を挙げながらサルの共認統合の様式、それに伴う集団形成の変化を見ていきました。環境外圧の変化により同類闘争が激化したサルたちは、それに適応するために共認機能を進化させ、ついに闘争共認を形成し集団をつくるまでに至りました。
忘れてならないのは、全ての共認は解脱充足を土台にしているということです。
解脱を土台として、課題共認や闘争共認などの上位の共認を獲得ていきました。これは現代の人類にもつながっている構造です 😀 。
以上のように本能を超え出る不全を乗り越えるために獲得した共感機能を母体としてサルは進化していきました。さらに環境の変化により、種間+同類闘争が高まり、+回路や闘争共認を獲得して進化を塗り重ねた結果、真猿へと進化していきました。
外圧に対して常に適応していった過程がよくわかりますね 🙂 。
次回は共認統合について、もっと掘り下げてみていきます。楽しみにしておいてくださいね。
(masamune)

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