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免疫って何?(10)~リンパ球の起源~

免疫シリーズも大詰め、今回はリンパ球の起源に迫ります。

がん情報サイト [1]よりお借りしました。

リンパ球系の免疫細胞や抗体免疫グロブリンは初期の脊椎動物である無顎類の段階で登場していますが、軟骨魚類に進化してから脾臓・胸腺・B細胞・T細胞・形質細胞・IgM(18S 7S)・補体(古典経路)が登場しています。

神経の発達、とりわけ有髄神経の登場とリンパ球の起源が密接につながっていることは容易に想像できます。両者の共通項をるいネット [2]より引用します。

リンパ球系のT細胞は、成熟した免疫細胞となれるのはごくわずかで、未熟細胞の段階で胸腺にて9割以上が淘汰される。(約5%が合格)
胸腺にて淘汰されるT細胞は、MHCを認識できずに自己細胞を攻撃する細胞や、反応が高すぎる細胞で、そのようなT細胞はアポトーシスを促されマクロファージに貪食される。胸腺はいわば正常なT細胞を作り出す教育機関といわれているが、この胸腺と似た性質を示しているのがグリア細胞の一種である星細胞である。

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◆類似点1~正常な成熟細胞を創る教育機関~
胸腺と星細胞の類似点の一つは、未熟細胞から成熟細胞に至るまでの過程に存在する細胞で、正常に機能する細胞を創り出す役割を担っている点。胸腺が正常なT細胞を創り出すのに対し、星細胞は神経細胞の正常な機能や栄養を与える細胞である。

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◆類似点2~神経堤から分化した細胞~
%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%8F%90.gif胸腺と星細胞は、ともに外肺葉(神経提)由来の細胞。神経堤は、脊椎動物の胚に過渡的に存在し、神経管が形成される時期に神経管と表皮の間に位置する組織で、胸腺や星細胞のほか、神経細胞や骨細胞などに分化する細胞でもある。このことからも、免疫と神経系、脊椎等の骨格系は密接な関連をもって進化してきたように思える。

◆類似点3~大量の細胞を作って淘汰する仕組み~
T細胞と神経細胞の類似点は、大量の細胞をまず作り、正常に機能しない殆どの細胞はアポトーシスで淘汰するという過程を経ている点。T細胞はウィルスの多様な変異性に対応するため、遺伝子再構成を経て多様な膜タンパクをもつT細胞を創り出すが、その殆どが失敗作でごく一部の細胞のみが機能する。神経細胞もそれに似た形で大量の神経細胞を作り出し、うまく神経細胞同士が手を結べなかったものは淘汰されていく点

そして、今回最も注目する点は膜タンパクです。

◆類似点4~接着因子も免疫グロブリンも同じ認識分子群の膜タンパク
神経細胞が他の体細胞との伝達経路を作っていくためには、体細胞に応じた接着因子の膜タンパク質が必要。この接着因子の膜タンパク質は遺伝子重複から創られるが、この遺伝子重複から遺伝子再構成へと組み替えを発展させて創ったのがMHCやT細胞受容体、抗体など。つまり神経系の膜タンパク質を作る仕組みを発展させたのが、リンパ球系の膜タンパク質と思われる。

多細胞化が進み、細胞間の役割分化とともに統合機能たる神経系も正確に標的細胞とつながりネットワークを作る機能を必要としました。標的細胞を正確に認識するには、住所表示のように、ひとつひとつの細胞に固有の標識が必要になります。たとえば人間には数百億の神経細胞が存在し、その数だけ標識の種類が必要となります。そのために免疫グロブリンのような多様な組み換え機能を使って細胞膜上に標識を作り、さらに複数の標識の組み合わせによって体細胞の住所表示を可能にしたのでしょう。

また、脊椎動物は外敵から逃れるために感覚機能、運動機能を強化します。同時に情報伝達のスピードをあげるため、有髄神経を作り出しました。

有髄神経はシュワン細胞やオリゴデンドロサイト細胞が髄鞘(ミエリン)をつくり、神経細胞の軸策に巻きつくことで、軸策を絶縁状態にし電気シグナルの伝達速度を速めています。詳しくは下図のサイト [6]もしくはビジュアル生理学 [7]を参照してください。

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シュワン細胞が軸策に巻きついている部分は細胞質がほとんどなく、細胞膜≒油膜が何層にも密着することで絶縁状態を可能にしました。

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通常、自分の細胞同士は接着因子と反発因子を持ち、つかず離れずの関係を保っています。
しかし、シュワン細胞は密着度を高めるために、反発因子を拘禁したのではないかと考えられます。一度獲得した拘禁因子は他の体細胞にもセットされ、通常は発現されないものの、何らかの外的要因で反発因子を拘禁してしまうことが起こります。
http://www.biological-j.net/blog/membrane_protein.jpg

ウィルスが神経細胞に侵入し、神経細胞のグロブリン様の(=高速変異)機能を獲得し、さらに体細胞の反発因子を拘禁する機能を有したら、標的細胞に簡単にくっつき~エンドサイトーシスで取り込まれた後に膜融合してウィルスのDNAやRNAが体細胞内に侵入しやすくなってしまうのではないでしょうか。

そして、そのようなウィルスの登場が、膜タンパクの変異機能(標的細胞認識機能)と膜融合機能(くっつく)を有した神経細胞から、新たな免疫=リンパ球を登場させたのではと考えられます。

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[8] [9] [10]