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原猿から真猿へ2~猿の拡散と進化過程~

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前回の記事で、原猿の拡散について触れました。
猿の拡散は私たちが想像していた以上にドラマチックです。
前回の記事 [1]を復習すると、
1.北米で原猿が登場
    
2.地球の温暖化によって、ヨーロッパ、アジアに分布を広げる
    
3.地球の寒冷化によって、アフリカに逃げ込む
    
4.世界中から逃げてきた猿がアフリカに集中。激しい生存競争を経て、真猿が登場
    
5.アフリカで進化した真猿が島伝いに海を渡り南米に漂流。新世界ザルの登場。
今回は、この数奇な猿の拡散に迫っていきます
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①原猿誕生前夜(6500万年前
6500万年前の恐竜大絶命以降、地球を支配していたのはディマトリアと言われる巨大鳥類でした。ディマトリアが支配する地域では原モグラは恐竜時代と同様に小型で夜行性の密猟動物でした。

ところが、この時代にアジア大陸だけはディマトリアが生息していませんでした。当時、ヨーロッパ大陸とアジア大陸はツルガイ海峡で分離され、アジア大陸と北米大陸はベーリング陸橋でつながっていましたが、氷結して動物が移動することは出来ませんでした。
アジア大陸は哺乳類の楽園となり、ここで大型肉食哺乳類ハイエノドントと、げっ歯類が登場します。
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   ディマトリア

②原猿誕生(5500万年前)
5500万年前、地球が温暖化しはじめます。平均気温は、10~20℃も押し上げるほどのものでした。
地球温暖化の最も有力な要因は、海底中のメタンハイドレードの爆発といわれています。マントルの流れによって北米とヨーロッパが分裂を始め、マグマの熱がメタンハイドレードを爆発させました。メタンガスの発生は強力な温室効果を生み、地球が温暖化しました。

この温暖化によって、ベーリング陸橋の氷が溶けハイエノドントは北米大陸に進出します。
体長はディマトリア2mに対して、ハイエノドント50cmでしたが、動きが機敏で集団性の強いハイエノドントがディマトリアを滅ぼし、4000万年前にはディマトリアは地上から姿を消します。ハイエノドントが地上を制覇するのにあわせて、げっ歯類も北米大陸にどんどん広がって行きます。
げっ歯類の北米上陸により、原猿の祖先である原モグラ(プレシアビダス類)は絶滅の危機に追いやられます。両者はほぼ同じような生存戦略を取る哺乳類であり、げっ歯類の方が繁殖力も高く集団性も強いため、原モグラはどんどん縄張りを奪われてしまいます。
このような危機状況のなかで、プレシアビダス類の中から親指が対向し、木の枝をつかめる新しい機能を獲得したカルポレステス(果実を食べる人)が登場します。それまでのプレシアビダス類やげっ歯類は、カギ爪を木にひっかけて木に登っていたため太い枝しか登れなかったのに対して、カルポレステスは木をつかめるようになり細い枝先まで登れるようになり枝先の果実も食べられるようになったのです。
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   カルポレステス 

③原猿の拡散(5500~4000万年前)
地球の温暖化によって、樹冠をもつ森は地球全体に広がっていきます。当時は、南極大陸までも亜熱帯雨林に覆われていたほどです。
そして、ねずみに追われて樹上逃避した原猿は、大きな可能性を手に入れました。樹上には外敵がほとんどおらず、栄養価の高い果実や木の実がたくさんあります。最高の防衛力と生産力をもつ樹上という世界に進出した原猿はたちまち森林を埋め尽くしてしまいます。
緑の星となった地球で、拡大した森と共に原猿もまた急速にその生息域を広げていきました。
またこの当時、北米とヨーロッパの大陸分裂が進み、ヨーロッパとアジア・アフリカがつながりました。これにより北米とヨーロッパのつながりは途絶えて、ヨーロッパの原猿はアジアやアフリカに拡散していきます。
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④寒冷化、そして南方へ(4000万年前)
4000万年前、地球は突如寒冷化し始めました。寒冷化の主要因は海洋循環の変化といわれています。
第一の要因が、インド亜大陸の衝突による海流の変化です。8000万年前に東ゴンドワナ大陸から離れたインドがこの時期にアジア大陸に衝突、ヒマラヤ山脈が誕生しました。
インド大陸の衝突は、同時にインドとアジア大陸の間に横たわっていたテチス海を消滅させました。
赤道付近にあったテチス海は暖流を発生させ、地球を暖める大きな役割を果たしていました。しかし、このテチス海の消滅によって、暖流の流れが堰き止められ、ヨーロッパやアジアで寒冷化が起きました。
第二の要因が、南極大陸の氷河の発達です。
南極大陸が現在の極地に移動したことにより、大陸周辺を周る周局流が生まれました。これによって、今まで赤道付近から流れ込んでいた暖流が堰き止められ、緑に覆われていた南極が一気に氷に覆われていきます。また、南極の寒冷化によって冷やされた深海流流が地球全体を巡り、地球規模の寒冷化が起きました。
以上の要因で地球全体が寒冷化し、原猿の棲む森林が減少し始めました。ヨーロッパ、北米、アジア大陸に生息していたものは棲家を奪われ絶滅したと考えられます。そして生き残ったのは、アフリカや東南アジアの島々に逃げ込んだものたちです。
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⑤なわばり闘争の末、真猿登場(3500万年前頃)
寒冷化の中、アフリカ大陸には多くの原猿たちが逃げ込んだと考えられます。同類闘争が激しくなり、その結果、真猿へ進化するものが登場しました。
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  最古の真猿 カトピテクス

⑥弱猿の適応放散(4000~2500万年前)
アフリカで誕生した真猿は、世界中に拡散していきます。その過程で弱者であった原猿はアフリカ大陸の一部と、マダガスカル、東南アジアの島々に追いやられたと考えられます。
また、一部の真猿の中には、アフリカ大陸から南アメリカ大陸へ移動するものも登場しました(新世界猿の登場)。
島や新大陸に逃げ込んだものは海を渡ったと考えられていますが、どのようにして渡ったのかはよくわかっていません。「いかだに乗ってたどり着いた」「泳いだ」などの諸説があります。当時は寒冷化によって海水面が低下したこともあり、島伝いに海洋を渡り、たどり着いたサルが現地で適応したと考えられます。
このように猿は世界中に拡散し、各地で適応放散していきました。
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図はコチラ [5]からお借りしました。

どうですか
猿の拡散、進化過程にも紆余曲折があり、驚きの連続です。そして、猿は逞しい
樹上逃避した猿達は、楽園である樹上世界で豊富な食料を手にして進化したと思っていたのですが、非常に厳しい生存圧力・同類圧力に晒され進化を遂げたのですね。
次回は、そんな厳しい時代を生き抜いた原猿の特徴に肉薄していきます

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