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原猿から真猿へ ~原猿って何?~

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画像はコチラ [1]から
先週までは「哺乳類の起源と歩み」というテーマで、我々の祖先である哺乳類の進化の歴史(歩み)を見つめなおしました。
哺乳類の進化の歴史は決して順風満帆ではなく、厳しい外圧に適応し続けるといったものでした。外圧に適応できず淘汰された者の方が多いという事実がその厳しさを物語っています。適応するために本能と矛盾する機能を獲得したこともあったようです。
『外圧⇒適応』を塗り重ね、積み重ねて獲得していった『機能群・本能群』は今も我々の中で作動しています。
「哺乳類」を学んだことにより、現在の我々の『機能群・本能群』を知ることができました。
今回のテーマは「猿」の進化の歴史です。猿の進化過程を学ぶことで、現在の我々の『心』について知ることができます。
本記事はまず猿の起源である原猿について切開していきます。興味がある方はぜひ読んでいってください。 😀


1.原猿ってなに?
原猿は霊長類の中でも原始的なグループのサルのことをいいます。特徴としては夜行性、単独で生活する種が多いこと。現存する原猿には、ロリス、ガラゴ、キツネザル、メガネザルなどがいます。大きさはネズミ大から中型のイヌぐらいまでで、主に虫やトカゲなどを食べています(キツネザルは植物食)。

1)古原猿の特徴(古原猿:化石で発見された原猿)

●プルガトリウス(7000万年前)
・霊長類の共通祖先といわれ、最も古い霊長類。復元した見かけはネズミに似ているが、系統的にはネズミとは異なり、サルにつながるもの。鼻づらが長く、44本の歯を持つ。するどいカギ爪を使って、木の上に登り、果物や昆虫を食べていたと考えられる。生息年代は、白亜紀後期~第三紀前期。化石の発見地は北アメリカ、ヨーロッパ。体長は10cmほど。
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●ノタルクトゥス(5000万年前)
・樹の枝を足でつかめる猿の祖先。キツネザルやロリスなどの原猿類の祖先にあたるアダピス類に属する。他のアダピス類と同じく長い指に母指と足指をもち、物を握ることができ、樹上生活をしていたものと思われる。また、尾は長く、長い四肢、柔軟な背中をもち、敏しょうに動いたと考えられる。生息年代 は、古第三紀(始新世前期~中期)。化石の発見地は北アメリカ。体長は40cm。
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2)現存する原猿の特徴

●スローロリス
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写真:リンク [2]
体長約20~30cm。動きは鈍く、夜行性。単独生活を行ないます。主な生息域はインドシナ半島、インドネシア。果実や昆虫を食します。

●ショウガラゴ
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写真:リンク [3]
体長15~20cm。動きは俊敏で、夜行性。単独または少数の群れをつくり生活します。主な生息域は東アフリカ、中央アフリカ、アフリカ南部。昆虫や果実を食す。

●ワオキツネザル
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写真:リンク [4]
体長約40cm。主に樹上生活だが、地上移動を行なうこともあります。昼行性で、5~20程度の群れをつくり生活します。マダガスカル南部にのみ生息。果実、昆虫などを食します。

(参考)
◆現存する原猿の分布と生態 リンク [5] 
◆原猿類の生態 リンク [6]

2.原猿の機能的特徴
1)対向指の獲得(握力の獲得=樹上生活の実現)
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霊長類の祖先である、古原猿は当時現在のネズミ程の体長しかなく、夜行性(密猟捕食性)でした。
しかし、繁殖力の旺盛なげっ歯類に縄張りを追い出され、樹上への逃避を試みました。樹上に生活圏を求めていった中に、4本の指と向かい合わせにできる親指(対向指)を発達させたものが現れました。
この対向指の獲得により、握力を獲得し、細い枝先までしっかり握ることができ、枝先にある果実など食べることができました。

2)視覚機能の発達
・前方に向いた目=立体視
上記のような樹上生活をする上で、獲得した機能として「前方へ向いた眼窩」があります。
樹冠で木々の間を移動する際に隣の木の枝までの距離を正確に把握することが必要になりました。
それには、立体視をするために視野を重ねることが必要になりました。その結果眼窩を正面に並べるという特徴を持つようになりました。

・色覚
色覚については原猿は二色色覚を持ちます。
樹上生活圏を獲得した原猿でも、初期段階はネズミと同じくらいの個体体長であったため、やはり猛禽類などから身を隠さずにいられるほどの状態ではなかったと考えられます。
その為、しばらくは夜行性であった。現に現在の原猿も多くは夜行性です。
ここから、真猿へと進化していくにつれて、個体も大きくなり、昼間に活動することが可能になり、3色色覚を獲得していくようになる。

(参考)
◆色盲だった原猿が、真猿となって再び色覚を回復させたのはなんで?② リンク [7]

3)行動や食性の特徴
原猿は基本的に夜行性で、食虫性(昆虫や小型は虫類を餌とする)を特徴とします。これは夜行密猟捕食であった原モグラと同様です。
ただし、キツネザルの仲間は昼行性で、食性も植物食(果実、種子、葉など)に移行しており、真猿類に近い特徴を持ちます。

4)集団形態
原猿の集団形態(生活単位)は、原モグラと同様に「単独型」が基本ですが、いくつかのバリエーションがあります。

例えば「ポト」は単独生活が基本で、縄張り侵入者に対しては、異性は許容する傾向がありますが、同性は撃退します(母子関係にあっても同様)。警戒心が非常に強く、攻撃されると、頭突きと体当たりを何度も行います。「ショウガラゴ」は基本的にポトと同様単独生活が基本ですが、血縁関係にあるメス同士は自分の縄張り内にいても許容します。「ワオキツネザル」は数頭~20数頭の母系集団で生活し、集団内の雄は3歳頃になると自分の群れを離れます。

キツネザルの仲間は、群れをつくり様々な声で同類同士のコミュニケーションを図ることが知られていますが、この点でも(単独生活を基本とする他の原猿よりも)真猿に近いと言えるでしょう。

●ポト
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写真:リンク [2]

3.猿の拡散と分布(進化過程)
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現在の猿の分布はアフリカを中心に、南アジア、南米に広がっています。猿の進化もアフリカで始まり、徐々にアジア、南米に広がったのだろうと思ったのですが、もっと大きな進化のドラマがあったようです。

原猿が対向する指や、立体視などの基本的な機能を獲得した時代の化石は実は北米で見つかっているのです。

簡単に猿の進化と分布の流れを整理すると、北米で樹上機能を発達させた原猿は、地球の温暖化=巨大な広葉樹林の広がりに伴い、ヨーロッパ、アジアに分布を広げます。

しかしその後、寒冷期が訪れ巨大な広葉樹林は減少し北米、ヨーロッパ、アジアの原猿は絶滅します。生き残ったのは、寒冷化で陸続きとなったアフリカに逃げ込んだ猿たちです。

当時のアフリカには世界中から逃げてきた猿が集中し、激しい生存競争にさらされていたようです。その中で原猿から真猿への進化が進みました。
アフリカで進化した真猿が島伝いに海を渡り南米にもたどり着いたのが、新世界ザルであると考えられています。

参考:
◆NHKスペシャル「地球大進化46億年・人類への旅 第五集 大陸大分裂 目に秘められた物語」
◆サルがサルになった日 リンク [8]
以上、普段なじみのない原猿についてまとめてみました。少しは身近に感じてもらえましたか?
来週からは原猿から真猿に至るまでの進化過程を書いていきます。我々の『心』という機能はどんな過程で獲得していったのか?『心』ってそもそもなんなのか?気になりますよね
それでは次回をお楽しみに 😀

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