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哺乳類の起源と歩み~哺乳類進化のまとめ~

いよいよ「哺乳類の起源と歩み」シリーズも最終回です。今回は哺乳類が逆境の中で進化した過程を、ポイントを整理しながら振り返ります。

哺乳類の進化は、逆境=大絶滅を契機として大きく3段階に分けることが出来ます。

①先哺乳類
デボン期末の大絶滅の外圧を受けて両生類から先哺乳類(単弓類)が進化
②原哺乳類
ペルム期末、三畳紀末の2回の大絶滅を経て先哺乳類は殆どが滅亡。何とか生き残った少数の種が恐竜支配の下で哺乳類の原基となる基本機能を獲得
③現生哺乳類
白亜紀末の恐竜大絶滅後、適応放散し多種多様な種が登場

各時代の外圧状況と獲得した機能を図解にまとめました。
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拡大した画像はこちらです画像の確認 [1]

それでは、各時代のポイントをおさらいします。興味をもたれた方は応援もよろしくお願いします。
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①先哺乳類の登場と繁栄

デボン期末に地球は寒冷化したと考えられています。寒冷化の影響で、両生類は冷たい水中で卵を孵化させる事が困難となり、地上適応していったのが先哺乳類(単弓類)と先爬虫類(双弓類)です。地上適応する上で、先哺乳類は寒冷適応、先爬虫類は乾燥適応の戦略をとりました。

先哺乳類は摂取した食物を熱エネルギーに変え、かつ熱を汗腺によって発散する機能があります。つまりある程度の恒温性を獲得し寒冷下で生き延びられるように適応しました。そして恒温性を獲得した結果、卵胎生=卵を体内で孵して生む種も登場します。

そのようにして寒冷化に適応した単弓類は、変温動物であったために赤道近辺にしか棲息でき無かっただろう爬虫類よりも広い生息域を一旦は確保することになります。石炭紀、ペルム紀は先哺乳類が繁栄した時代であり、様々な種が登場します。

②-1低酸素環境下で先哺乳類は衰退

この先哺乳類はペルム期末と三畳紀末の大絶滅の過程で殆どが滅亡してしまいます。ペルム期末の大絶滅 は、超大陸パンゲアの分裂に伴い火山活動が活発化し二酸化炭素とメタンが大量に吐き出され、気温が上昇し酸素濃度が著しく低下したことが原因だと言われています。

恒温性を獲得していた先哺乳類は変温動物よりエネルギー代謝が高くより多くの酸素を必要とするため低酸素の環境に適応することが難しく多くの種が滅亡します。一部の種だけが横隔膜を進化させ呼吸効率を高め生き残る事が出来ました。一方で爬虫類(=恐竜)は、より呼吸効率の高い気嚢システムを進化させこの低酸素時代に適応して行きます。

三畳紀末に地球は一時寒冷期に突入します。その際に、恒温性を獲得していた単弓類は更に高い恒温性を獲得します。横隔膜と高い恒温性を獲得するまでに至った単弓類が原哺乳類です。しかし、まだ地球は低酸素状態が続く環境下であったため原哺乳類は大型化できず小型化戦略をとることで生き延びます。

そして三畳期末の寒冷期が終わり地球が温暖化するジュラ紀、白亜紀には、先のペルム紀後期の気温上昇と低酸素化の環境変化に適応した爬虫類が大型化し繁栄していきます。

②-2恐竜支配下で原哺乳類が進化

ジュラ紀、白亜紀は恐竜の天下で、弱者となった哺乳類は変温性である爬虫類が活発に活動のできない夜間に、恒温性を活かして密猟捕食の道を選択します。夜間に小さな昆虫を捕食する為に聴覚・嗅覚・触覚を統合する必要がありました。その結果、脳の肥大化を助長し大脳新皮質を獲得しました。

また、子孫を安全に残すために、原哺乳類は外敵の多いこの時期に胎生に転換したと考えられます。ただしこの時期は胎盤機能を有してはおらず、子宮のみの獲得でした。そして、白亜紀後期に高緯度の土地から、地球はまた寒冷地となっていきます。この寒冷化が進むことで、原哺乳類はより高い確率で安全に子孫を残す為に、胎盤機能(胎内で、孵化させた子に、ある程度成長するまで子に栄養を与え、胎内保育をする機能)を獲得しました。

②-3胎生の獲得から性闘争本能を強化

胎生を獲得した哺乳類は、胎児の安全性を高めたことで、卵生に比べ子供(卵)を産む数を減らし、さらに産後保育を行うようになります。その結果、卵生では幼生期に淘汰が行われるのに対して、哺乳類は幼生期に淘汰が行われなくなります。進化のための必要性から哺乳類は成体になってから生命淘汰を行う性闘争本能を強化します。

実際、性闘争を強化した種の方が適応力が高くなるので、性闘争の弱い種は次第に駆逐されていきます。もちろん、性闘争=縄張り闘争の本能は、脊椎動物の前から殆どの動物に存在していますが、哺乳類は、この性闘争(=縄張り闘争)本能を淘汰適応の必要から極端に強化した動物です。

性闘争本能を強化した哺乳類は、闘争存在たるオスがより闘争性を強めると共に、メスたちの外側で外敵に対応した方が有利です。従って哺乳類は、とりわけオスの性闘争(=縄張り闘争)本能を著しく強化し、1匹のオスの縄張りに数匹のメスの縄張りを包摂するようになります。これが、哺乳類に特徴的な首雄集中婚の原型です。

③現生哺乳類の進化も逆境の連続がもたらした

白亜紀末、大隕石の衝突が原因で恐竜は絶滅します。一般的には恐竜が絶滅し、外敵がいなくなったことから哺乳類は適応放散し繁栄したと考えられていますが、実体は違うようです。巨大恐竜がいなくなったあとには、小型の原哺乳類を主要に狙う小型爬虫類や肉食鳥類が生き残り、巨大恐竜の時代以上に危険な生存状態となりました。この危機的状況ゆえに、原哺乳類は急速かつ多様に適応放散を遂げ、現在に繋がる様々な哺乳類が登場することになります。

哺乳類が適応放散していく中で、哺乳類の特徴である性闘争本能を抑制し集団性を獲得する種も登場してきます。大多数の成体を打ち敗かし餓死させる極端に強い性闘争本能は、生き物全般から見て、かなり無理のある本能だとも言えます。全ての生命は集団をつくることで外圧に適応し進化してきました。哺乳類も進化するにつれて親和本能を強化し、親和物質(オキシトシン)によって性闘争本能を抑止し追従本能を解除することで、尋常な集団動物に成っていきました。

適応放散した哺乳類の中から、猿・人類につながる種はどのように進化してきたのでしょうか。適応放散した哺乳類の中でも齧歯目(=ネズミ目)の登場は早く、その旺盛な繁殖力と集団性を武器にして3000万年前には寒冷地を含めて世界中に拡散していたと言われています。その結果、かつて原モグラの主要な縄張りであった地面と落ち葉の隙間はこの齧歯目が制覇したと考えられます。

ネズミに追われるようにして、ほとんど原モグラの形態のまま地中にもぐったのが現在のモグラ(=食虫目)であり、一方、原モグラが持っていた鉤爪を生かして樹上逃避を試みたのが原猿(=霊長目)です。つまり、サル・人類の祖先である初期原猿はネズミにも勝てずに樹上逃避するしかなかった弱者だった訳です。

だいたい4500万年~4000万年前に初期原猿は登場したと言われていますから、この樹上への逃避行は、齧歯目の登場から1000万年に満たない間に、木の枝から枝に飛び移るための四足の親指の骨格の発達、さらには枝を掴めるまでの指の対向性を獲得するに至ります。ここから先の原猿から真猿への進化の過程は、次週以降の新しい特集でお送りします。

乞う御期待!!

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