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哺乳類の起源と歩み~逆境の連続が哺乳類を生んだ②「原哺乳類の登場」

まずはこれまでの復習です。

3月11日の記事:哺乳類の起源と歩み~生物史は大絶滅の歴史であり、逆境によって進化してきた [1]のポイント。
☆生物史とは「大絶滅の歴史」である。
☆生物は大絶滅をはじめとした「逆境によって進化してきた」のである。

3月18日の記事:哺乳類の起源と歩み~逆境の連続が哺乳類を生んだ①「先哺乳類の誕生」 [2]のポイント
☆哺乳類、爬虫類とも逆境によりそれぞれ進化した。中でも哺乳類は寒冷化という逆境に適応するために恒温性と(卵)胎生を獲得した。
☆哺乳類は両生類から直接進化したと考えられ、爬虫類の系統とは別である。

デボン期末から始まる1億年もの寒冷化という逆境に適応した、先哺乳類はペルム期に大繁栄の時代を迎えます。しかし、ペルム期末には新たな逆境が先哺乳類を襲い哺乳類は主役の座を爬虫類(恐竜類)に譲り渡し、雌伏の時を迎えます。この新たな逆境が、先哺乳類の進化を促し、原哺乳類が登場するのです。
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先哺乳類を襲った逆境はなんだったのか、そこで原哺乳類はどんな進化をとげたのか、興味をもたれた方は次ぎに進む前に、応援もお願いします。
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2.低酸素化の難

2.5億年前地球は火山活動活発化の結果酸素不足に陥る。その際恒温性である単弓類は極めて生存上困難な事態に陥る事になる。つまり体温維持のため常に高エネルギーを消費するためすばやい動きが出来なくなるのだ。彼らも低酸素状態に対しては、横隔膜を作る等ある程度適応を遂げているが、それでも対応できなかったのであろう。最盛期には3m以上あった大型の単弓類はほぼ絶滅し、辛うじて小型化したのものだけが生き残る。その後原哺乳類にいたるまで、基本的に小型化戦略をとらざるを得なくなり、爬虫類に主役を譲ることとなる。

●ペルム期末の大絶滅
2.5億年前はペルム期末の大絶滅が起きた時期であり、全生物の95%以上が絶滅したと言われています。

原因は、超大陸パンゲアの分裂に伴い火山活動が活発化し、二酸化炭素とメタンが大量に吐き出され、気温の上昇と酸素濃度の著しい低下を引き起こしました。
ペルム期に35%程度あった酸素はメタンと反応し15%程度にまで急減したと言われています(生物が呼吸困難を起こすのは15%ぐらい。ちなみに現在の酸素濃度は21%程度、富士山頂で13%程度です)。
参考:古世界の住人、ペルム紀の大絶滅 [6]ウイキペディア、P-T境界 [7]

その後酸素濃度が回復するまでに約一億年かかったと言われています。この間外圧に適応すべく爬虫類(=恐竜)は気嚢システムを誕生させ、哺乳類は横隔膜を発達させました。それでも哺乳類は完全に適応できなかったため、小型化戦略をとりなんとか生き延びることができました。

○トリナクソドン
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全長約50cmの、ネコほどの大きさの小型肉食動物。腹部の肋骨が消失し、横隔膜によって胸郭と腹郭が分けられた。そのため、より効率的に呼吸することが出来た。(この画像は古世界の住人、トリナクソドン [8]からお借りしました)

3.寒冷期に於ける原哺乳類の登場と恐竜の制圧下での進化

2億2千万年前ごろより地球は一時的に寒冷期に突入する。その際に一段と高い恒温性を獲得したものが原哺乳類である。しかし彼らは10cmしか体長が無い(アデロバシレウス等)。その後温暖化に向かうにつれて大型爬虫類が繁栄していく。かかる中において弱者である哺乳類は恒温性を武器に夜行密猟動物として辛うじて生き延びていく。(変温性の爬虫類は太陽の当たらない夜は極めて動きが鈍くなる)。夜行の密猟捕食の動物となることで(食料は小型の虫)、聴覚を発達させ、その結果脳を発達(大脳新皮質の獲得)させた。しかし恒温かつ大量のエネルギーを消費する脳によって、生き残った哺乳類はほぼ一貫して体長は小さいままであり、かつ寿命は2年間と極めて短命である。
(恐らくこの初期哺乳類の段階で既に胎生に転換している。但し胎盤は無く子宮のみ)そして胎児の安全を確保する=多産と引き換えに、生体後の淘汰を強めることでより適応的な遺伝子を残すために性闘争本能をより強化したのもこの時期であろう。

●三畳紀末の寒冷化
2.2億年前(三畳紀後期)より地球は一時寒冷期に突入します。その際に、これまで恒温性機能を獲得してきた単弓類は更に高い恒温性を獲得します。この機能を獲得するまでに至った単弓類が原哺乳類です。
しかし、まだ地球は低酸素状態が続く環境下であったため原哺乳類は大型化できず、代わりに先のペルム紀後期の気温上昇と低酸素化の環境変化に適応した爬虫類が大型化し繁栄していきます。

●低酸素の環境~大型爬虫類(恐竜)の台頭~
この時代の逆境化において、原哺乳類は現存する哺乳類と進化するのに必要な機能を二つ獲得します。
一つは、夜間密漁行動における聴覚の発達→大脳新皮質の獲得
二つは、胎生の獲得
です。

大型化した爬虫類(恐竜)が繁栄するに伴い、弱者となった恒温性機能を持つ哺乳類は変温性である爬虫類が活発に活動のできない夜間に密漁捕食する道を選択することを余儀なくされます。
その際、夜間に活動し捕食をするために、原哺乳類は視覚以外の感覚器(とりわけ聴覚)を発達させます。
夜間に小さな昆虫を補食する為に聴覚・嗅覚・触覚を統合する必要がありました。その結果、各機能の神経細胞が肥大化していき、脳の肥大化を助長し大脳新皮質の獲得という進化の要因となりました。
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参考:夜への進出~「聴覚」と「大脳新皮質」の進化~ [9]

また、子孫を安全に残すために、原哺乳類は外敵の多いこの時期に胎生に転換したと考えられます。ただしこの時期は胎盤機能を有してはなく、子宮のみの獲得でした。そして、胎児の安全性を高めたことで、卵生に比べ数を減らします。そして、卵生では幼生期に淘汰が行われるのに対して、生体になってから生命淘汰を行う性闘争本能も強化して行きます。

3-2.寒冷化へ対応するために胎盤を獲得

更にその後1億2000万年前位から、高緯度の土地から順に寒冷化が進んでいく、哺乳類はこの寒冷化への対応のひとつとして胎児の出生確率をより高める胎盤(胎児への栄養補給)を獲得し、現在生存する哺乳類の基礎的機能をほぼ整えることになる。

●白亜紀後期からの寒冷化
1.2億年前より、高緯度の土地から、地球はまた寒冷地となっていく。この寒冷化が進むことで、原哺乳類はより高い確率で安全に子孫を残す為に、胎盤機能(胎内で、孵化させた子に、ある程度成長するまで子に栄養を与え、胎内保育をする機能)を獲得しました。最初に胎盤機能を獲得したと思われるのは体長15センチほどのエオマイアだと考えられています。
この機能を獲得したことによって、原哺乳類は哺乳類の基礎的機能を備えることとなりました。
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(この画像は古世界の住人、エオマイア [10]からお借りしました)
まとめ
先哺乳類が新たな逆境を向え、原哺乳類が登場したペルム期末(2億2千年前)から白亜紀中期(1億2千万年前)の時代をまとめると次のようになります。
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ペルム期末の大絶滅の原因となった低酸素の逆境で、哺乳類は小型化の戦略を取り、夜行性の密猟補食動物となることで大脳を発達させます。そして胎児の安全性を確保するために、胎生(子宮、胎盤)の発達や、生体後の淘汰(性闘争本能)といった現在の哺乳類につながる主要な能力を獲得していったのです。
ポイント
☆原哺乳類はペルム期末の低酸素と言う逆境の中で現代の哺乳類につながる機能を獲得した。
☆低酸素に適応するため小型化戦略をとり、結果的に大脳、胎盤、性闘争本能を発達させた。

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