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哺乳類の集団形成②~「単体型・単雄単雌型」、「単雄複雌型」~

前回 [1]は、親子(母子)関係に着目してみてきました。
哺乳類の雌雄生態・集団形態は、概ね「単体型・単雄単雌型」→「単雄複雌型」→「複雄複雌型」の3型に分類できます。今回は、それに沿って、哺乳類がどのようにして集団を形成していったのかをみていきたいと思います。
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>哺乳類の最大の特徴は、胎内保育機能にあります。しかし、胎内保育と産後保育の哺乳類には、適者だけ生き残ることによって種としてより秀れた適応を実現してゆく淘汰適応の原理が働き難くなるので、淘汰適応が成体後に引き延ばされ、成体の淘汰を激化する必要から、哺乳類は性闘争=縄張り闘争の本能を著しく強化してゆきました。「哺乳類の性闘争本能 」) [2]
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性闘争=縄張り闘争の本能を著しく強化することは、集団や群れを形成する上では一種の欠陥構造として作動します。それが『単体型』の哺乳類の特徴とも言えます。
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>現在発見されている最古の哺乳類は約2億年前の「ハドロコディウム」という種(食虫目)です。・・・【中略】・・・哺乳類登場当時は大型爬虫類(後には小型爬虫類も)に対して隠れ棲むことしか出来なかったので、小型かつ単体という生存様式を取るしかなかったと考えられる事。つまり基本的に、集団をつくるのは防衛のためだが、原哺乳類は余りにも小さく弱者であるため、集団化しても捕食動物に対して見つかりやすくなるだけであった。つまり集団化するメリットがなかったからではないかと思われる。「原哺乳類と原猿の進化について① 」 [3]
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ということで、原哺乳類は集団的な防衛力を確保するよりは、「隠れ住む」ことで生き延びました。

◆「単体型・単雄単雌型」
単体型は、雄も雌も単独行動が基本で、生殖期のみ雄と雌が一緒になる。現哺乳類では、食肉類のネコ科の動物をはじめ多数の事例があるが、霊長類の中では夜行性原猿類の多くやオランウータンが知られている。
単雄単雌型(つがい)は、霊長類の中ではごく少数派だが、昼行性原猿類の一部やテナガザルが知られている。
これらの場合、子どもは雄も雌も親から離れ、母系によっても父系によっても集団が継承されることがない。つまり、単体型・単雄単雌型いずれも、母系でも父系でもない。
リンク [4]

▼左ニシメガネザル [5] ▼中ショウジョウガラコ [6] ▼右ピグミーネズミザル [7]
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哺乳類の集団形成は『単体型』→『単雄複雌型』→『複雄複雌型』という進化の流れになっています。
哺乳類の共通の祖先と言われる原モグラは、『単体型』です。そして『単体型』の哺乳類は、メス同士でも性闘争(縄張り闘争)を行っています。
しかし、その後の『集団型』ではメス同士の性闘争は見られなくなります。
それは何故か? というのが今回の主要なテーマとなります。

◆「単雄複雌型」
一頭の雄と複数の雌(と子どもたち)からなる単雄複雌型の集団(群れ)は、有蹄類をはじめ多数の種に見られる。
霊長類では、旧世界ザルの大半がこれに該当する。集団のただ一頭の成体雄は数年に一度、外の雄との入れ替わる。集団内で生まれた雄は成長すると集団を離れ他集団に加入するが、雌は原則として出自集団を離れることはなく、一つの集団は「母系」によって継承される。
ゴリラは、単雄複雌型だが母系ではない。子どもは、雄も雌も出自集団を離れるため、基本的に集団の継承性はないと考えられている。(リンク [4]

▼左テングザル(旧世界サル 単雄複雌型) [11] ▼右ウマ(有蹄類) [12]
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胎内保育と産後保育の機能を獲得した哺乳類は、その性闘争の激しさから「単体型・単雄単雌型」となりましたが、再度そのオキシトシンにより「母子」間の親和性を「雌同士」の親和性に拡大し「メス同士の性闘争を封鎖」したと思われます。
そのことで可能になった集団形態こそが「単雄複雌型」で、すなわち『母系制集団』だったのです。
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 群れを形成した哺乳類では、メス同士の性闘争は封鎖されているので、メスが出自集団を出て行く習性は形成されにくいと考えられます。しかし、オス同士の性闘争はどの群れにも残存し、この敗者は、基本的には勝者の縄張りから追い出されます。この本能を前提にしつつ、行動半径の広さも相まって、発情前に一旦出自集団を出て行く若オスの習性が形成されたのが『単雄複雌型』だと考えると納得がいきます。この集団形態は言うまでもなく母系制です。(リンク [13]
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次回は、「複雄複雌型」についてみていきます。
   by びん

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