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オスとメスの違いって何(6)~これまでの中間まとめ1~

「オスとメスの違いって何?」を何回かのシリーズで記事を書いてきましたが、今回は少しこれまでの流れを整理してみたいと思います。

 (1)オスとメスはどうやって決まるのか? [1]
まず(1)では、性染色体によってオスとメスが決まるのは哺乳類と鳥類のみであり、それ以前の爬虫類や両生類、魚類は、温度や体格差、PHなど周りの環境要因によって決まる種がいることを紹介しました。
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爬虫類の温度依存による性決定

性決定の仕組みは種によって非常に多様ですが、生物がオスとメスに分かれた初期は、性の分化がはっきり決まっていたのではなく、環境要因によって、最適の適応戦略がとれるよう柔軟にオスメスが組み替えられるものとして始まりました。そして進化した種ほど、オスメスの役割固定を高めていくベクトルに貫かれていることが伺えます。

では、この環境要因によって性が決まる仕組みとは、どのようになっているのか?
それを(2)では扱いました。



(2) 性決定因子の働きがオスとメスを分ける [2]
旧い種から順番に整理すると、【1.雌雄同体型】【2.性転換型】【3.孵化時環境決定型】【4.遺伝子決定型】となります。このうち1~3は性染色体を持っていません。つまり、性の本質的な決定因子は性染色体ではないことを意味しています。

どのように性は決定しているのか?なんでや劇場では以下のような仮説が提示されました。
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なんでや劇場資料

【1.雌雄同体型】
雌雄同体のDNAにはオスメスどちらにもなれるように、DNA上の造卵形成因子と造精形成因子が同時に作動し、同一個体に2つの生殖腺から卵巣と精巣を形成します。

【2.性転換型】
これが性転換型になると、造卵(精)形成因子の働きを拘禁する造卵(精)拘禁因子が形成されます。この拘禁因子が、温度、体格、PH等の影響によって拘禁因子の強弱が生じ、造卵or造精のどちらかの形成因子を拘禁することで、卵巣か精巣のどちらかに統一されることになります。

【3.環境/遺伝子決定併存型】
さらに、爬虫類などの環境/遺伝子決定併存型では、相同染色体間で造卵(精)拘禁因子の強弱の偏りが生じます、造卵拘禁因子が弱くなっていったのが、後のホモ染色体(X染色体)につながり、造精拘禁因子が弱くなっていったのが後のヘテロ染色体(Y染色体)となっていったと考えられます。温度やPH等の環境要因がこの拘禁因子の強弱関係を変化させ、オスメスを決めていったのではないかと思われます。
ここまでが爬虫類までの性決定の仕組みです。

では、なぜ鳥類、哺乳類は性染色体によってきまる仕組みにしたのか。
それを(4)で扱いました。

(4) 性染色体で性決定するのはなんで? [4]
そもそもX染色体、Y染色体とは何か?
X染色体(ホモ)が2対ある場合は、もし片方の染色体が異常をきたしても、ペアとなるX染色体により修復することが可能となります。女性の方が男性よりも遺伝病が少ないと言われる所以です。つまりX-Xは安定した性染色体といえます。

一方Y染色体はX染色体の10%未満(ヒトの場合)と、非常に短い染色体です。Y染色体も元々はX染色体と同様の相同染色体でしたが、相同性が欠失すると、交差(組み替え)が起こらなくなるため、どんどん遺伝子を喪失し、さらに変異を蓄積していったのではないかと考えられます。

まとめると、X-X染色体(ホモ)は安定的な染色体で、X-Y染色体(ヘテロ)は変異を蓄積していく遺伝子といえます。

では、哺乳類は雄が変異を担うようになったのは何故か?

哺乳類は、胎生という淘汰圧が働きにくい生殖様式を持つゆえ、オス同士の性闘争本能を強化することで淘汰適応を実現しています。(「哺乳類の性闘争本能」 [5]

そこでは、オスの相対的な強さこそが決定的ですが、その差は常に僅差です。しかし、その僅差が圧力源であり、最先端の適応様式となった以上、獲得した変異はオスの染色体に蓄積していった方が適応的だったのではないでしょうか。(参考:「外圧適応態」 [6]

つまり、安定を担う雌の役割と、変異を担う雄の役割を特化させていったのが哺乳類といえます。

では、その雄が獲得した変異は、種としてどのように継承されていくのか?
それを(5)では扱いました。

次回へ続く・・

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