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両生類からホ乳類へ-4-胎生(胎内保育)機能と胎盤の進化

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写真はコチラ [1]から
「両生類からホ乳類への進化過程」を追求するにあたって、
「胎生=胎内保育」機能に改めて注目 してみたいと思います。
「妊娠」という現象は、ヒトとして基本的な生命現象なわけですが、考えてみると・・・ 🙄
精子と卵子の合体(受精)から、わずか10ヶ月程度で約3kgの胎児、同時に約0.5kgの胎盤がつくられるという驚異的な生理現象です。
最近の進化学説によれば、最古の胎盤をもつ哺乳類(有胎盤類)の登場は、白亜紀前期の「エオマイア」(リンク [2])あたりのようです。

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まずは基本事項から・・・

■胎盤のはたらき
・胎盤とは、哺乳類の雌(人間の女性も含む)の妊娠時、子宮内に形成され、母体と胎児を連絡する器官。
・母体由来の基底脱落膜と胎児由来の絨毛膜有毛部とから構成されている。胎盤と胎児は臍帯で連絡されている。
・胎盤の主な機能は母体側と胎児側の代謝物質交換、ガス交換や胎児側への免疫学的支援である。また、ホルモンを産生し、妊娠を維持する。
・胎盤は分娩時、胎児のあとに後産として娩出される。

※こちらも参考までに→ プラセンタとその歴史 [5] 

■哺乳類の胎盤
・哺乳類の胎盤はどれも同じようなものかと思っていたのですが、動物種によって胎盤の形状はいろいろ異なるようです。
散在性胎盤…馬、豚など
多胎盤…反芻類(牛)など
帯状胎盤…食肉類など
盤状胎盤…ヒト、猿、マウス

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 ウシの胎盤(多胎盤) リンク [6] 
・例えばウシの胎盤は、ヒトのそれとは随分異なっていて、小さな胎盤が70個~100個くらい胎膜に分布。また胎盤と膜の構造も異なっていて、母体との免疫の受け渡しは行いません。なので、ウシの赤ちゃんは母ウシの初乳から免疫をもらいます。この初乳を飲みそびれると、ウシの赤ちゃんは感染症で死んでしまうそうです。
※参考: tikusan.com胎盤のおはなし [7]

・哺乳類の胎盤が多様化した理由は、各々の動物が適応していった外的環境が背景となり、それによって食性、出産、子育て、集団形態等が変化していったためと思われます。

■哺乳類以外で、胎生の生き物も結構いたりする・・・
・胎盤が多様化していく以前の状況、その起源について調べはじめたところ、ちょっとびっくりですが、哺乳類以外の胎生の生き物が・・・結構いることを知りましたので、いくつか紹介します。
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  イタボヤ リンク [8] 
・ホヤの仲間、イタボヤ類は無性生殖(出芽)と有性生殖の両方を行いますが、有性生殖の場合、卵胎生または胎生で、受精・胚発生は親である個虫の体内で行われます。オタマジャクシ形幼生にまで発生すると、親群体の共同出水腔から泳ぎ出ます。
・ホヤは脊椎動物のルーツともいわれる(※最近では異説もある)原始的な生物ですが、この段階で、胎生の原型?とも思われるような機能が???

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イタチザメ リンク [9]
・軟骨魚類のサメには卵生だけでなく、卵胎生、胎生の3種類があります。胎生のサメは、メジロザメ科、シュモクザメ科、ドチザメ科の一部に見られます。
・イタチザメ(メジロザメ科)の場合、妊娠期間は9~12ヶ月と長く、多くて80尾、少なくても10尾の子供を出産します。胎盤を持っており、これで母親から胎仔に直接栄養を供給できます。
・ちなみにイタチザメは、サメの中でも最も危険な部類で、雑食性で何でも食べるため、ホホジロザメに次いで被害が多いらしい。(強靭な顎と歯で、ウミガメの甲羅も噛み砕いて食べる。他にサメやエイ、硬骨魚類、海鳥、クジラ、イルカ、甲殻類などを捕食。また食べるのは生物だけとは限らず、ドラム缶やボトルなどが胃中から見つかることもある。死骸も好んで食べる・・・)

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クセノトカ エィセニィ リンク [10] (小さく見えるのが出産直後の赤ちゃん)
・硬骨魚類にも胎生の魚は存在します。グッピーなどは卵胎生で有名ですが、それとも異なり、稚魚と母親が臍の緒でつながっていて母体から栄養を吸収してある程度成長してから生まれてくる真胎生の魚です。
※参考: 日本胎生魚協会 真胎生魚 の仲間たち [10] 

・また節足動物であるサソリの一部リンク [11] 、有爪動物であるカギムシの一部リンク [12] も胎生と言われています。

●このように見てくると・・・「胎生」自体は哺乳類の専売特許というわけではなく、脊椎生物の比較的初期段階でその原基となる機能を獲得していた可能性があると思われます。
●哺乳類は、その原基となる胎生機能を基盤に胎盤を発達させ、胎内保育へと可能性収束していったということになるでしょう。
●次の疑問は「哺乳類が胎生に可能性収束したのは、何で?」というあたりですが、ここは次回以降に委ねたいと思います

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