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両生類からホ乳類へ -1-羊膜の獲得

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この画像はこちらから [1]お借りしました

私たちのチームでは、これまで単細胞から多細胞から多細胞への進化、そして多細胞生物の躯体進化として、オスメス分化や免疫機能を扱ってきました。今回のテーマは少し人類に近づいて、両生類からホ乳類へです。哺乳類への進化をテーマにしたのは、実はグループのメンバーがあと数ヶ月であかちゃんを生むからです。新たな生命が育まれる神秘を、生物史をさかのぼって共有することにしました。

第1回目は羊膜の獲得です。両生類からホ乳類に進化するためには、胎生、恒温性、授乳機能など、様々な機能を獲得する必要があります。その第一歩目が羊膜の獲得です。

一般的には、両生類からハ虫類、ホ乳類が進化したといわれていますが、最近の学説では両生類から有羊膜類が進化し、有羊膜類からハ虫類、ホ乳類が進化したと考えられています。ウィキペディアの有羊膜類の記述 [2]を転載します。

石炭紀後期に四肢動物類の両生類から進化した。両生類の中からは陸上産卵する系統が何度も進化しているが、羊膜はこうした系統のひとつで、陸上に生みつけられた卵黄の多い大型卵の中で、胚の呼吸を容易にする呼吸器官として進化したと考えられている。

では、有羊膜類が獲得した羊膜について、さらに詳しく見て行きましょう。興味のある方は、応援もお願いします。
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■羊膜って何?

 羊膜と聞くと、赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいるときに浮かんでいる羊水をくるんでいる膜を思い浮かべると思います。しかし、羊膜類が持っている膜は羊膜一つではなく、卵黄嚢、奨膜、尿膜の4つの膜を持っているのです。

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この画像と次ぎの画像もこちらから [1]お借りしました。

 まず、卵黄嚢ですが、卵黄嚢は魚類や両生類も持っています。これは文字通り卵黄から栄養を吸収するための膜です。胚の発生初期に卵を覆うように発達します。魚類や両生類は卵黄嚢から栄養が取れれば、後は水の中にいますので水分、酸素の補給、排泄物の処理全て特別な器官を発達させる必要はありません。

哺乳類は発生のかなり初期の段階で母胎から栄養をもらうため、卵黄から栄養をとる必要はありません。胚発生の初期に卵黄嚢を発達させますが中身は空っぽだそうです。発生の手順として卵黄嚢側に腸管を発達させ、腸管から心臓が発達するという手順で発生が進むため、栄養を取る必要はなくても卵黄嚢を発達させる必要があるようです。発生は進化を繰り返すという一つの事例です。哺乳類の卵黄嚢はその後、奨膜、尿膜と一体になって臍の緒の一部になるようです。

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卵黄嚢ができ、さらに腸管ができて、腸管の先からできるのが尿膜です。尿膜は最初は排泄物を貯蔵していますが、発生が進むと奨膜と融合し尿奨膜となります。爬虫類や鳥類ではこれが卵殻に密着し血管も発達して呼吸を行うようになります。哺乳類では漿尿膜は胎児性胎盤となり、子宮壁の母性胎盤と合わさって胎盤となります。

卵黄嚢、尿膜の発達と並行して発達するのが羊膜です。卵黄嚢が胚のおなか側に発達するのに対して、羊膜は背中側に発達し、発達に伴って胚を包み込んで行きます。そして、徐々に羊膜の中を羊水で充たし安定した環境を作ります。さらに胚、羊膜、卵黄嚢、尿膜の外側で全体を包むように発達するのが奨膜です。これらが全て、受精卵から他の体と同じように作られて行きます。羊膜や羊水というと母親が包み込んでくれているというイメージだったのですが、卵が自ら作り出し自分を守っているのです。

■なんで羊膜は必要になったのか

これまで見てきたように、羊膜は水中から陸上に上がったことで必要になったと考えれます。両生類・有羊膜類が登場したデボン紀から石炭紀は造山運動が盛んな時期で、陸地が隆起し乾燥化が進んだ時期だとかんがえられています。この時期に陸上の植物が発達したのも陸地の隆起が進んだからだと考える人もいます。

それまで、水辺に暮らしていた両生類が陸上適応し陸上に産卵するために獲得したのが羊膜だと考えられます。卵が陸上に適応するためには、乾燥に強くなること、肺呼吸ができる生体になるまで長時間かかる発生の間の栄養を補給すること、誕生までの排泄物を処理すること、肺呼吸が出来るようになるまで呼吸することが、必要になります。

 これらの条件をクリアするために、魚類・両生類の段階で獲得していた栄養を採るための卵黄及び卵黄嚢をさらに発達させ、排泄物を処理する尿嚢を作り、乾燥から守る羊膜を作り、奨膜と尿膜を使って呼吸も行えるようになったと考えられます。

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