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休眠は積極的な行動

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乾眠するネムリユスリカ
休眠とは、えさ不足や乾燥、気温の変化などの環境の変化に適応する機能です。
クマムシやカブトエビの卵など、ガラス化することで何十年も休眠を続ける生物もいます。
詳しくは最強生物クマムシ!? [1]を参照してください。
wikipediaによると

休眠 (きゅうみん、dormancy)とは、生物の生活環における一時期で、生物の成長・発生過程や、動物の身体的な活動が一時的に休止するような時期のことである。この間、生物は代謝を最低限に抑えることで、エネルギーを節約する。

休眠は代謝を低下させることで劣悪な環境から時間的逃避を図っているとみることも出来ます。
休眠には乾眠、冬眠、受精卵の着床の猶予などの発生休止、植物では種子、発芽の停止など様々な手法があります。バクテリアも低温時などに休眠し、休眠システムは原始的な適応方法なのです。
 
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カブトエビの卵や植物の種子のように生殖と休眠をセットにすることも生物界ではよく見られるようです。藻類が原型なのでしょうか。

藻類では温度、光、栄養、乾燥などの環境が個体の生活に適さない条件に変わると、生き残るための手段として、細胞内に胞子を形成し休眠状態に入る(シスト化)。胞子形成と同時に鞭毛を失って、活動期の細胞と比べると数倍も大きな球状体に成長する。細胞は、培養槽全体が真っ赤になるほどヘマトクローム(アスタキサンチン)を合成し蓄え、乾燥や光ストレスにも耐える準備をするのである。
 東洋酵素化学株式会社 [5]

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シスト化したクラミドモナス

クラミドモナスは二匹合体すると厳しい環境下で休眠し、(DNAのシャッフル後)、環境条件が好転すると減数分裂してまた活発に動き回るようです。一倍体が活性状態、二倍体が休眠(防衛)状態ということでしょうか。飢餓状態で合体する、飢餓状態で休眠するというのは、(雌雄に特化・分化をとげていない)生物界を通じてかなり普遍的な適応戦略だったのではないでしょうか。
  「飢餓物質」⇒「合体」⇒「休眠態」の適応法則 [6]

休眠というのは単なる発育停止ではなく、ストレス耐性の向上や、行動、代謝の変更といった様々な現象を伴う。行動や代謝の分子基盤がキイロショウジョウバエで明らかにされつつある今、休眠に付随したこれらの現象を分子進化生物学的な視点からみてみるのも面白いと思う。
とある昆虫研究者のメモ [7]

耐性卵やクマムシなどはガラス化した状態から水を得て活性化し始める段階で、DNAをはじめとしたタンパク質の損傷が生じ、通常は元通りに修復されるのですが、一部変異が生ずることもあります。DNAをシャッフルする接合などもあわせて考えると、休眠とは外圧の変化に適応するために時間的な逃避だけでなく、外圧に適応すべく変異を促進する機能だと言えるでしょう。

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