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チンパンジーの同類殺し

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縄張りをパトロール中のチンパンジー
 
この間、サルの共認機能について調査しています。今日のテーマは、同類殺しという、少々ショッキングな内容ですが、過去投稿を紹介し、共認機能との関係から扱っていきたいと思います。
 


実は同類殺しをする哺乳類は、ライオンなど何種類かいるようです。ライオンの場合は、群れの首雄が変わるとき事件が起こります。子育て中の雌は発情しないため、新しく首雄の座に着いた雄は、前首雄の子を殺すことで、自身の子孫を残そうとするのです。
 
チンパンジーもまた、同類殺しを行うことがあります。しかしチンパンジーは乱婚のため、ライオンのように同類殺しの生物的利益はありません。また同類殺しは子殺しだけでなく、群れの外のチンパンジーに対して行われるようです。
 
父系集団チンパンジーの同類殺し [1] 

一般動物は、同類を殺すことはない。オス(一部メス)にはメスの獲得のために同類のオス同士が争う、「性闘争」の本能が備わっているが、しかし殺すまで戦ったのでは種は滅んでしまうので、敗れたほうが勝者に従う「敗従本能」が同時に付帯されているからである。つまり本能では同類は殺さない。もちろんこれは一般のサルもそうである。
 
ところがサルの中で最も知能が発達したチンパンジーは、規範を破った(浮気をした)メスを(見せしめのために)殺すことがある。更にはチンパンジー集団同士の同類闘争で敵の集団のチンパンジーと殺しあうこともある。(「サル学の現在」立花隆編 平凡社より)本能に無いこの所業は何故生まれたのであろうか?
 
一般のサルは母系集団で成人オスが移籍するが、チンパンジーはメスが移籍する父系集団である。生殖存在であるメスは闘争集団に対する収束力(帰属性)が極めて貧弱であり、自らが生まれ育った生殖集団=闘争集団においてはじめて集団に全的に収束できる。ところが移籍した新集団においてよそ者であるメスは集団に対する帰属性が弱く、従って度々(浮気などの)規範破りを犯すことになったと考えれられる。チンパンジーはそのような集団破壊行為に対して、闘争集団としての規律を維持すべく規範を破ったものに対する「死の制裁」の共認を強く形成する必要があったのではないかと考えられる。そのようにして規範共認によって、本能には無い同類殺しが生まれたのではなかろうか。
 
それ以降チンパンジーは敵に対しても「仲間」を傷つけるものに対して、いわば制裁規範という形で同類である相手のサルを殺害するに至ったのではないだろうか。いずれにしても「共認内容」によって初めて本能には無い同類殺しが可能になったということである

 
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チンパンジーにおける同類闘争様式は、時に殺しを伴う壮絶なものでした。しかも共認内容(=制裁規範)により、それが可能になると考えられるようです。
 
残念ながら「戦争」など人類にも同類殺しはあります。しかし、その原因が共認内容にあるなら、逆に考えると回避可能であることを示しています。

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