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微生物から学ぶ生命の摂理 ~生命はその始原から共同体として存在してきた?~

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カテーテルに生成した黄色ブドウ球菌のバイオフィルム [1]
今週は、細菌、微生物関連のエントリーが続いていますね。
腸内細菌と健康の関係 [2]
抗生物質とプラスミド [3]
プラスミドはどこからきたのか?1-プラスミドってなに?- [4]
プラスミドはどこからきたのか?2-不完全な生命同士の遺伝子交換 [5]
真核生物でプラスミドがなくなったのは、なんで? [6]

今日は、細菌の共同体「バイオフィルム」に着目してみます。
細菌=「単細胞生物」というと、その言葉のイメージから、一匹一匹が単独で生きているかのような印象があるかもしれませんが 🙄 ・・・・・、どうもそれは事実ではないようです
実は、自然界の細菌のほとんどは「バイオフィルム」に集まって生息しているらしいのです。
このバイオフィルムは、生命始原の存在様式、生命の摂理を考察する上で、極めて重要な示唆を与えてくれる現象だと思います。

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バイオフィルムというのは・・・例えば川の石ころの表面はヌメっていますよね。そのヌメヌメの中にはたくさんの微生物が集まって生きているのですが、それをバイオ(生物の)フィルム(薄い層)といいます。これは、自然界の至る所にごくふつうに見られる現象で、水まわりのヌメリ、配管内のヌメリもそうですし、歯に付く歯垢もそうです。
また、感染症の一種として、体内にもできることがありますが、このバイオフィルム内の細菌は抗生物質に対して(バラバラの細菌に比べ)数百倍の耐性があるといわれています。

夏井睦氏のWebページ:新しい創傷治療 [9]
『バイオフィルム入門 -環境の世紀の新しい微生物像-』(日本微生物生態学会バイオフィルム研究部会 編著,日科技連)の書評 [10]より引用します。 

1.世界にはいろいろな物があるが,物には必ず表面がある。表面があれば必ず微生物が付着する。

2.「表面」と水が接するところでは,複数の細菌が表面に付着して微生物共同体を作る。これがバイオフィルム。

3.バイオフィルム内では複数種類の微生物が共存している。

4.金属でもプラスティックでも,それを水(媒質)の中に入れると,その直後からイオンと有機分子の付着が始まり,ついで細菌の付着が起こり,次第に増えていく。細菌は細胞外多糖(Extra cellular polysaccharides, EPS)を産生し,他の細菌・微生物が共存できる環境を作る。

5.細胞外多糖類からなるマトリックス内部には複数種の細菌コロニーが存在している。コロニー間を密度の低いポリマーが埋め,そこは水が自由に移動するwater channelsとなっている。これは多核細胞生物体に極めて近い構造体であり,それがバイオフィルムの本質である。

6.バイオフィルム内の酸素濃度,イオン濃度はwater channelからの距離,表面からの距離で異なり,μmのオーダーで勾配を作っている。このため,多様なニッチ(生態的地位)が生み出され,好気性菌と嫌気性菌など異なった代謝系を持つ細菌がμmオーダーで棲み分けている。

7.バイオフィルム内では他種類の細菌が高密度で生息していて,お互いに代謝産物やエネルギー,情報のやりとりをしていて,遺伝子の交換も起こっている。このことで,単独の細菌にはない機能を生み出すと同時に,多種多様な環境変化にも対応できるようになる。

8.抗生物質のMIC,MBCは単一の浮遊菌で求められた値であるが,これは現実の細菌の生存形態(バイオフィルム)とは異なるものである。細胞レベルの浮遊菌の薬剤感受性はバイオフィルムに適応できないは当然である。

上記ページにあるように
「現実の細菌たちは一匹一匹でウニョウニョではなく(単細胞生物はバラバラに自由気ままに生きている訳ではなく)バイオフィルムを作って共同生活をしている」
「変化の激しい環境で生き抜くために,細菌たちはお互いに身を寄せ合い,生きるために情報を交換し合い,必死になって生き延びようとしている」

というのは、目からウロコですね

また「すべての細菌の99%以上はバイオフィルム社会に住んでいる」 [11] とも言われています。

このような事実を見ると「単細胞生物」という概念は果たして正しいのだろうか?(誤解を招く概念でないか?)と思いますよね 🙄
むしろ、★単体を越えた次元で連関することによって生命として存在している=「超個体」★という概念イメージで捉えたほうが正しいように思います。

また一般的には、生命の進化は、「単細胞生物から多細胞生物へ」なわけですが、イメージとして★生命はその始原から個体を越えて共生体・共同体として存在してきた★と捉えることは非常に重要な認識でしょう。

※コチラの投稿もあわせてごらんくださいね。
原始生命と群れ【仮説】 [12] 
生物と「群れ」 [13]  

[14] [15] [16]