2009-08-07

上陸に伴って造血機関が骨髄へ移ったのはなんでだろう

redbloodcells01.jpg
画像はこちらからお借りしました。
生物の陸上進化をテーマに追及していますが、今回は、硬骨魚類から哺乳類にいたるまでの造血機構の進化過程についてレポートします。
まず、硬骨魚類から哺乳類まで、それぞれどこで造血しているのかというと、・・
<硬骨魚類>
腎臓 脾臓で造血
<両性類> 
有尾目(イモリとか)は脾臓
無尾目アフリカツメカエルは肝臓 脾臓
無尾目ウシガエル、ヒキガエル、トノサマガエルは腎臓、骨髄
<爬虫類>
トカゲは脾臓
カメは骨髄 脾臓
<鳥類>
ニワトリは骨髄
<哺乳類>
骨髄 脾臓がほとんど。
ただしクジラのような水生哺乳類は腎臓で、骨髄造血は退化。
となります。
参考HP
肝臓も造血器官があるようですね。種によって何が標準なのかはいまいち確信がもてないですが・・
ちなみに、トノサマガエルのような無尾両性類は、変態前は腎臓、変態後は骨髄で造血しています。
ここから見えてくるのは、
 上陸を境にして、腎臓から骨髄に造血器官が移行。
 脾臓で造血しているのはほぼ共通。
という点です。
まず、1つ目。上陸を境に造血器官が腎臓から骨髄に移行したのは何でだろ? :roll:
両生類の変態前後で造血器官が変わることや、水生哺乳類では骨髄の造血器官が退化し腎臓に造血器官がある点をみれば、上陸と骨髄造血に関係があるとしか思えない。これは何だ??

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まず、基礎知識として。
人の造血器官を見ると、造血を担う造血幹細胞は骨髄にあります。骨髄といってもすべての骨ではなく、胸骨、肋骨、脊椎、骨盤など体幹の中心部分にある骨に造血幹細胞があります。
また、

発生直後から骨髄で造血されているわけではなく、骨髄造血が始まるのは胎生4ヶ月頃からである。それ以前は初期は卵黄嚢で、中期は肝臓と脾臓で造血される。なお、肝臓と脾臓は造血機能を完全に失うわけではなく、血液疾患時には造血が見られることもある。

ウィキペディアより引用
のように、骨髄以外の造血機構も私たちの体には備わっているようですね。ちなみに、急に走ると横っ腹が痛くなりますよね。あれは、急激な運動によって酸素が必要になったとき、脾臓に蓄えられている血液が緊急対応として送り込まれ、脾臓が縮んでいくことで起こる痛みのようです。
一方、私たちの腎臓の働きを一言でいうと細胞外液の調整機関といえそうです。何を調整しているかというと、水分調整、PH調整、イオン調整、ミネラル濃度の調整、老廃物除去があります。加えて特筆すべきなのは、骨髄への造血幹細胞への司令塔の役割も担っているということ!腎臓から造血ホルモンを分泌し、骨髄にある造血幹細胞に赤血球の増産を指令しているんですね。
つまり哺乳類では、血液は主に骨髄で造っていますが、その造血の指令塔は腎臓がになっている。そして、魚類では腎臓が造血器官を担っていたということは、上陸の段階で造血の指令と造血の仕事を行う機能が役割分化したようにもみえます。
しかし何で造血器官を骨髄に移したんだ?
           
なかなか手がかりになるものがないのですが、少し切り口として参考になりそうなのが、西原克成氏の論文。氏いわく、上陸劇による造血器官の変容の引き金となったのは、「6倍となった重力作用」「21倍になった酸素」「水から空気への物性変化」という。なかなか難解で理解しにくいところもある論文ですが、上陸によって骨髄へ造血器官が移行する過程をサメで実験した部分を紹介します。

上陸劇でもうひとつの激変が海水中の浮力に相殺されて見かけ上1/6Gとなっていた重力作用が陸上で1Gとなり水中の6倍になったことである。これは直接循環系に作用して、心臓ポンプが水中のままの強さだと血液がめぐらなくて死んでしまうのである。鰓で空気呼吸がうまくいかず窒息して酸素不足になると、苦しまぎれにのた打ち回ると血圧が急上昇する。その結果、偶然にも血圧が高まり血液がめぐるようになり、生き永らえることができる。空気中でのた打ち回っているうちに、3・4番目の鰓線が、血中の酸素濃度と血圧と心臓ポンプの関連のもとに機能するようになり、これらが頚洞に変容する。血圧が上がると、流動電位が上昇し、これにより内骨格の軟骨が自動的に骨化し、骨髄腔ができると、腸管造血系の一部がここに移る。これらの一連が重力への対応で起こる。もとより酸素の取り込みと咀嚼による栄養吸収の飛躍的上昇がなければ起こりえないのがこの骨髄造血の発生である。

西原克成 「重力と進化-真正用不用の法則」より引用。
流れをまとめると、上陸によって重力が6倍になる。その結果体の下部に血が滞り窒息。それを克服するためにのたうちまわって血圧を上昇させる。その結果血流がめぐるようになる。その結果流動電位(※)が起こる。流動電位によって電位差ができると軟骨の骨化がおこる(←何でだ?)。と同時に骨髄腔ができる(←これも何でだ?)。で造血器官の一部が腸管から骨髄腔へ移る(またまた何でだ?)。ということらしい。しかしサメってすげー。
※ちなみに流動電位とは、界面電気現象の一つで、細管や多孔質の媒体に液体を圧力をかけて流したとき,流れの方向に電位差を生じるもの。
                  
で、・・・上陸時に造血器官が骨髄へ移動したのは間違いないとして。
改めて単純に考えると、水生から陸上への変化はなんと言っても海がない=ミネラルがないということが一番ではないだろうか。
軟骨から硬骨の変化は、淡水域に逃げた魚がミネラル不足になり、骨にミネラルを貯蔵したところにある。つまり、骨は内なる海の原料庫のようなもの。陸上にのぼり体液として内なる海を維持するためには骨の貯蔵庫としての役割は一層増したことだろう。
つまり仮説としては、魚や水生の両生類のころまでは造血器官が内臓器官にあったのは、水に接することができたから。陸上にのぼり、内なる海を作る貯蔵庫&製造所である骨に造血器官を移したのは、造血とミネラルは切っても切り離せない関係にあるからではないだろうか?
このあたりの仮説がどうなのかを、次回は検証してみたいと思います。

List    投稿者 nannoki | 2009-08-07 | Posted in 1)海から河へ、そして陸へ(魚類→両生類)No Comments » 

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