- 生物史から、自然の摂理を読み解く - http://www.seibutsushi.net/blog -

生物と「群れ」

こんにちは、NISHIです。
先日の記事にもあるように「生物の原点は個体でなく群体にある」という認識は、生物史を学ぶ中で得られた重要な認識でした。
今日の記事は、この生命の原点である群体=「群れ」に関してです。
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画像はこちら [1]から頂きました
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突然ですが、家で飼育している熱帯魚水槽を見ていて気がついたことがあります。
それは、水槽内にいる魚は「群れない」と言うことです
飼育している魚は、アマゾンの淡水に生息している小型魚で、自然の状態では常に群れた状態でいます。それが水槽の中では殆ど群れを形成しません 🙁
でも、水槽に人影が近づくと、急に群れて泳ぎだします 😀
このことから、生物は外敵のいない無圧力空間では「群れない」と言うことが解り、同時に「群れ」は外圧適応の為であることが解ります。
更にもう一点。
ある時、全く別の店で購入した同種の魚を水槽に入れたのですが、このような場合でも、人影が近づくと魚は見事に群れました
別の店で購入したこれらの魚が、同じ産地から送られてきた魚である可能性は非常に低いと考えられるのに、全く問題なく群れを形成するのは不思議です 🙄 そう思って、別の種類の魚でも試してみましたが、やはり同じ結果になりました
この場合は、ブリード(人工的に孵化・飼育されたもの)とワイルド(自然環境から採取されたもの)のミックスだったので、もはや産地など全く関係ありません。
このことから「群」は同種である限り、生まれや出自に関係なく形成されることが解り、非常に根源的な本能に基づいていることが解りました。(恐らく「群」を決める要素は、「集団規模」のみと思います。)
つまり「群」とは、徹頭徹尾「外圧適応」(中心的には危機逃避)の為の形態であると言えます。
この視点に立って、「群」を考察して見ると、2つの面白い点が見えてきました。

1.「群」は速い。
 なぜ外敵がいると群れるのでしょうか?数が多くいるから、少々食べられても群全体として問題ないとか、群れることで存在を大きく見せ、外敵に威嚇する等が考えられますが、その論理ではどちらも整合性が低いと考えられます。
群れていない単独の方が、外敵に見つかる恐れが低い場合も多いし、群れても外敵には襲われているので、必ずしも威嚇には繋がらないからです。(もちろん威嚇として成功している事例も多く存在します)
ではなぜ群れるのか?
これも観察の中で気が付いたのですが、「群」は(単体よりも)移動速度が「速い」のです!。だから外敵に対して群れるのです。
恐らく、群体による水流の流れの変化(一匹では水流の流れを全面的に受け止める必要があるが、群では群全体で水流を受け止め、大きい流れを生み出す。)が、移動速度の上昇に繋がっているのでしょう。
水流の方が抵抗が強いので、水中動物の方がより高い効果があるのは間違いないですが、陸上動物でも同じ構造があると考えられます。
また、この「群による流れの変化」は、F1のスリップストリームと同じように、群の内側にいる生体の体力を温存することにも繋がるので、そういう意味でも外敵適応力が高いのだと考えられます。

2.「群」は「免疫力」が上昇する。
 これも観察する中で、おぼろげながら感じたことなのですが、どうも「群」は「免疫力」を上昇させるようです。
水槽で単体もしくは数匹を飼っているだけだったり、比較的荒い性質の魚と単体~数匹を混泳させている状態では、かなり病気になり易いのですが、比較的構成数の多い群を飼育している状態では、めったに病気になりません。この原因としては、2つの要因が考えられます。
一点目は、群れることで、外敵圧力に対するストレスが弱まり、免疫細胞が活性化すること。人間でも同じですが、免疫系はストレス(不安)に極めて過敏に反応します。群れる仲間が存在せず、生存可能性の低い外敵圧力下では、免疫細胞が活性化せず、容易に病気になる構造にあると考えられます。
もう一点は、群れることで、ウィルスや病原菌が群全体に繁殖→その分、抗体製作スピードが上がると言うこと。ウィルスの感染などは一気に群全体に広がります。これは適応上不利だと感じますが、早期に多様なウィルスに感染することは、それだけ抗体製作も早くなり、群全体では適応力が上昇すると考えられます。
これは人間の子供の実験でも解明されており、集団遊びを幼少期から積極的に行っている子供程、免疫力が上昇することが判明しています。

このように見てくると、生物にとって、外圧適応上「群」が如何に重要であるかが見えてきます。
更に「群」に関して、るいネットの投稿で、以下のような興味深い記事の紹介もありました 😀

日経サイエンス「群れが生み出す知能」 [5]るいネット「群れ知能」 [6]よりの紹介)
アリやハチ,シロアリといった社会性昆虫は,コロニーをつくって生活している。コロニーの昆虫は1匹1匹が自分の計画を持っていて,群れ全体が高度に組織化されているように見える。個々の活動を結びつけるのに何ら管理されている様子はない。実際,社会性昆虫の研究者は,コロニー内での協調行動が自己組織化されていることを発見した。つまり,社会性昆虫のコロニーでは,さまざまな状況に応じて,個々の相互作用から全体の協調が生み出されている。
 個々の行動の相互作用は単純で,例えば,アリの場合,別のアリが残したにおいを追うだけだ。しかし,集団として見ると,餌(えさ)場までの無数の経路のうち,最短のものを選ぶといった難しい問題に答えを出している。社会性昆虫に共通のこうした性質は群知能と呼ばれるものの一種だ。
 最近,群知能をさまざまな問題に応用する研究が活発になってきた。餌を探し回るアリの行動をもとに,電話回線網の混雑を調整する新しい方法が生み出された。大きな餌を運ぶアリたちの協調行動を参考に,複数のロボットが荷物を運ぶ効率のよいアルゴリズムができている。アリが仲間の死骸を集め,幼虫を大きさごとに分類する方法にヒントを得て,銀行が顧客のデータを解析する新たな方法が生まれた。ミツバチの役割分担の仕方を研究して,工場の生産ラインを合理化する試みもある。

生物が群れることで発揮される「群れ知能」。これも「群」による外圧適応と言えます。
生物に対する疑問の中で「なぜ群れるのか?」と言うことがよく聞かれます。しかし、以上のように見てくると、この疑問そのものがズレていることが解ってきます
「群」は生物の外圧適応において、極めて重要な適応形式であり、生物は、根源的生物である(原核)単細胞の時代から、群れています。
すなわち、外圧適応の為に「群れている」のが自然の摂理なのであり、「単体」でいる生物の方が特殊なのです。

例えば、哺乳類の場合は先日の記事「哺乳類の縄張り闘争本能(性闘争本能)の獲得過程」 [7]にあるように、淘汰適応の必然から性闘争(=縄張り闘争)本能を強化しました。その為に群れずに単独行動する種が多くなっています。
自然の摂理を理解する上では、「群の根源性」を認識した上で、各生物種ごとの「置かれた環境を貫く外圧状況」を捉え、その活動様式を探る必要があると言えます 😀
このような「群の根源性」を捉えず、「群れるのはなんで?」と考えてしまうのは、どこかに個人主義観念に基づいた「単体が基本である」と言うズレた考えがあると言っても過言ではないかも知れません 👿

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