- 生物史から、自然の摂理を読み解く - http://www.seibutsushi.net/blog -

病気ってなんだろう?

人間以外にも、病気ってあるんだろうか?
この単純な疑問からスタートし、仲間達と議論を重ねて来た内容を整理してみたい。
まず、魚類、哺乳類、植物などにも病気と言われるものは沢山ある。
が、これらはほぼ人類の生活に密着した領域にのみ特定されているものに過ぎず、自然界においては果たして病気と呼べる状態があるのだろうか?というと疑問が残る。
何故ならば、病気というものは所謂異常状態を指し示すものなのだが、どこからが異常と言えるのか?その定義付けが生物の多様性を前提とした環境においては非常に困難になるからだ。
よって、ある状態を指して病気か否か?を議論する、という事に拘るよりは、異常状態が発生する過程とその原因を整理した方がスッキリするのでは?という結論に落ち着いた。
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まず、一般的に病気とされる症状の原因部分を整理すると、次のようになる。
a)縄張り・種間闘争
  病原菌による感染症等も、ここに含まれる。
  被感染側から見ると異常状態が発生する事もあるが、種間闘争の過程と見れば、
  淘汰適応の為の自然の摂理に過ぎず、病気と言うには違和感のある領域。
  寄生・淘汰・共生などを通じて生態系バランスが保たれている。
wild_life_photo.jpg [4]
写真はGIAZINさん [5]よりお借りしました。
  良く考えてみると、我々人類も、基本的には日々感染している。細菌やウィルス
  の侵入を防ぐ事などほぼ不可能であり、無菌状態で産まれたばかりの赤ん坊も、
  3日もすれば腸内に大腸菌やブドウ球菌、乳酸菌などが早速住み着き始めている。
  しかし、だからと言ってすぐに異常状態とは成らない。何故ならば、それら細菌から
  体細胞異常の発生を防ぐ仕組み=免疫機能があるからだ。
b)免疫不全
  多細胞化以降、同類認識=異物排除の必要性が高まり、免疫機能が組み込まれる。
  この免疫が適切に機能しなくなると、多くの場合異常状態となり、異物の増殖が免疫
  機能による攻撃力を上回ると、死滅してしまう。
  逆に、風邪をひくといった軽い症状は、a)の細菌と宿主との闘争過程であり、闘争の
  結果抗体を作れれば、宿主の勝ち=病気ではない、と考える事もできる。
  HIVウィルス等の場合、免疫細胞そのものが攻撃を受け機能不全に陥る為、異常状
  態に陥ると殆どの場合回復できずに死滅してしまう。
c)統合不全
  種間闘争圧力により多細胞化⇒高機能化が進むほど、複雑化した各器官を統合する
  という課題も重要になる。分化と統合、このバランスが崩れたときもまた、異常状態の
  発現である。生物個体単体でみた場合の遺伝子異常等による病気はこれに該当。
  しかし、生殖過程において変異を組込むシステムを取り入れた時点で、一定割合の
  遺伝子異常は発現する。しかし、変異の組み込みは種の存続を掛けた適応戦略でも
  あり、種全体から見れば必ずしも遺伝子異常は正常ではない、とは言い切れない。
  或いは、人類特有の精神的な病についても、統合不全(頭と心と体のズレ)の表れと
  言えよう。
  しかし、この原因はさらに次の社会不全へと原因を求める事が出来る。
d)社会不全
  人類社会に特徴的な領域であるが、実はこの社会不全は人類の病気の最も根底的な
  原因であると考えられる。人類社会は観念によって統合されており、この社会観念が
  現実の様々な問題に対する答えを出せなくなった時、観念の混濁から恒常性の維持が
  困難になると、統合不全や免疫不全を起こしやすい状態となってしまう。
  あるいは、過剰消費や環境破壊等も、社会不全の一つであり、これらの影響を受けて
  様々な病気だけが増えていく社会は、個体を越えた社会そのものの異常状態と置き換
  える必要がある。対処療法的な個体治療では、既に追い付かない状況であろう。
  近年増加の一途を辿る癌やアレルギー、うつ等の様々な病気についても、これら社会不
  全に原因を辿らない事には解決しない領域だと想われる。
結局のところ、どこが病気か?どこからを病気と呼ぶか?に拘るのはお医者さんだけ。
これは、職業病。 🙄
しかし、生物史的に見た場合、病気か否か?という視点は然程重要では無く、所謂生態系バランスを崩している原因は何か?に視点を置くこと、即ち自然の摂理に立ち返っての追求が必要なのだろうと感じた。
生態系バランスとは、適度の闘争と共生のバランス、である。
この二つの適応戦略が、お互いに外圧を生み、内圧を高め、進化適応の推進力となるのだ。
人類は今、同類間ですらこのバランスを保てない状態へと陥っている。様々な病気と闘う為には、まずこの社会を取り巻く誤った社会観念、即ち市場原理と近代思想の見直しへと着手し、自然の摂理にもっと学ばなければならないのだろう。

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