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免疫機能の進化に学ぶ-2-免疫はどのように進化してきたの?

Macrophage.jpg
画像はコチラ [1]から
masamuneです 8) 。
つづいて免疫の進化史をみていきましょう。
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免疫機能とは、そもそも外部から身を守るシステムだと言えます。

ではその起源を紐解いていきましょう。

原初的な防衛機能
生体防御機能の行き着くところは「膜」だといえます。膜があることにより内部を保護し、外部からの異物の進入を防ぐことができます。
膜といえば選択透過という性質を持っています。必要なものを取り入れ不要なものは取り入れない。そして不要なものを取り入れた場合は排出します。
この流れは「食」作用とも言えます。

例えば大腸菌などの菌類は基質表面に体を接触させ、それを消化して体表から吸収するという方法をとっています(リンク [4])。
また、真核生物はエンドサイトーシス(リンク [5])に代表されるように、異物を包み込み消化酵素を出し、取り入れ排出を行っています。
このように生物は異物を攻撃して自己を守る機能があります。これは初期的な防衛機能であり、免疫の起源といえるでしょう。

また、群れをつくり集団で外敵から身を守るという機能もあります。単細胞生物でさえそういった機能があり、具体的に言えばバイオフィルム(リンク [6])(例:排水溝のヌメヌメ)が当てはまります。群生し、外敵から身を守るだけでなく養分のやりとりなども行うことにより、単独でいるより有利な環境をつくります。

ここまでは、原初的な防衛機能ということで、大まかに単細胞生物や細胞レベルでの免疫(=防衛)機能を見てきました。

続いて多細胞生物の免疫について見ていきましょう。
ポイントは、単細胞生物は万能細胞ともいえ、生体防御機能を含む全ての機能を1つの細胞でまかなうのですが、多細胞生物になると、専門分化し、免疫細胞というものが登場します。それが自然免疫や獲得免疫です。

参考投稿 4月29日なんでや劇場レポート(1) 免疫細胞の認識機能 (リンク [7]
       細胞の認識機能と食作用 (リンク [8]

自然免疫
   マクロファージ
マクロファージは貪食細胞と呼ばれています。先ほど述べた食作用に特化したのがマクロファージであり、これが免疫細胞の起源であると言われています。

では、生物史上いつ登場したのでしょうか?

るいネット 『4/29なんでや劇場の要点 ~免疫機能の起源と進化~』 [9]より引用

殖産分化(多細胞化)の段階=エディアカラ動物群レベル(海綿動物)で登場。

カイメンのマクロファージ(アメーバ細胞)は、死細胞や、エリ細胞から送られた栄養を摂取する。後に生殖細胞にもなる。
⇒初期のマクロファージは、免疫細胞というより「栄養細胞=生殖原細胞」。

殖産分化→多細胞化していく過程の中で栄養細胞(食細胞)から徐々に免疫機能を担っていったのがマクロファージだといえます。

参考投稿 4/29なんでや劇場レポート2 マクロファージの起源は・・・・・ (リンク [10]

   ナチュラルキラー細胞
NK細胞は文字通り生まれついての殺し屋で、殺傷力が高く、常に体内を独自でパトロールし、ガン細胞やインフルエンザなど、ウイルス感染細胞や細菌を見つけると、単独で直接殺してしまいます(リンク [11])。

免疫細胞としてすごく便利なやつに見えますが、よくよく考えてみると超危険なやつです。こういった相手を殺しまくる細胞は普通に考えれば寄り添いたすけあってきた生物の歴史 [12]からすると現れるはずがありません。だからこそ学会ではその起源がわからないのでしょう。

しかしなんでや劇場では、論理整合性を武器に起源にせまりました。
るいネット 『4/29なんでや劇場の要点 ~免疫機能の起源と進化~ [9]』より引用

(体細胞と生殖細胞が専門分化した)有性生殖の推進段階=大変異システムの確立期(ex.ミミズやヒトデ)で登場。

⇒NK細胞は、大変異の過程で誕生した「変異細胞」そのものであった可能性が高い(一種のガン細胞で、たまたま適応的だった)!

生物が変異を促進したカンブリア紀にできたもので、たまたま適応的だったものがナチュラルキラー細胞ではないでしょうか?これはかなり奇跡的な共存であったと言えます。

参考投稿 4/29なんでや劇場レポート3 NK細胞は「変異細胞」そのもの?! (リンク [13]

自然免疫まで軟体動物や節足動物、原索動物など多くの生物が獲得しています(これもカンブリア紀にNK細胞を獲得したという根拠になるのではないでしょうか?)。この自然免疫に加えて脊椎動物では獲得免疫というものをもっています。それはどのようなものなのでしょうか?

獲得免疫
  T・B細胞 (リンク [14]

T細胞はリンパ球の一種で、骨髄で生産され胸腺で分化します。
胸腺は英名でThymusであり、その頭文字をとってT細胞と呼ばれています。
細胞自体が免疫作用を有するので「細胞性免疫」とも呼ばれています。

B細胞は骨髄で生産され骨髄内で分化します。
骨髄は英名Bone Marrowであり、その頭文字をとってB細胞と呼ばれています。
B細胞は形質細胞に分化して、血液中に抗体が生産され免疫能を有するので「液性免疫」とも呼ばれています。

T・B細胞は連携し選択的に異物を攻撃する高度化した免疫細胞です。こういうと素晴らしい機能のように見えますが、、、詳しくは次の記事に

<まとめ>
単細胞から多細胞生物へと進化したことにより万能性を失いくっついて(寄り添って)1つとなった生物は、進化が多様化するという可能性は開けたものの、ウイルスが進入できる隙(=弱点)をつくってしまいました。これに適応すべく分化したものが免疫細胞です。

多細胞生物とは万能ではなく、異物との共生・つながりによって生きている物だと改めて思います。

そういえば、獲得免疫は脊椎動物にしかないのですが、それはなんでなんでしょうか?
これは獲得免疫がリンパ系という脊椎動物特有の循環系にいるということがヒントになりそうです。
このあたりも次の記事で明らかにしてくれるそうです。楽しみですね 😀

(masamune)

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