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免疫機能の進化に学ぶ-1-免疫を学ぶ着眼点は?免疫機能のしくみって?

こんにちは、andyです
ここ数ヶ月のインフル騒動で、にわかにウイルス危機が叫ばれています。
ウイルスの特徴の一つに、その変異スピードが異常に早いというのがあります。新しいワクチンも新型ウイルスには全く効かないというのは、その最たる例といえるでしょう。
さて、このように変異の早い外敵に対して、私達生物はどのように対抗しているのでしょうか?
私達生物に備わっている『免疫機能』とは一体どのようなものなのでしょうか?
今週は『免疫機能』から自然の摂理を学んでいきましょう。
<目次>
第1回 免疫を学ぶ着眼点は?免疫機能のしくみって?
第2回 免疫はどのように進化してきたの?
第3回 リンパ系ができたのは?
第4回 DNA進化(変異)の袋小路
番外1 独自の免疫進化を遂げた昆虫
番外2 昆虫の免疫VS菌類

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免疫を学ぶ着眼点とは?
生物は外圧に適応することで進化(=変異)を遂げてきました。つまり、生物史を学ぶということは、『生物が塗り重ねてきた変異システムを体系化・構造化する』ということ。
免疫機能は、生物が外圧に適応する中で身につけた変異システムのひとつですが、「変異のしかた」が実に多様で、変異の象徴物といえるでしょう。
→★免疫を学ぶ着眼点のひとつに、免疫機能がもつ多様な変異システムから生物の外圧適応のしくみを体系化すること。
また免疫とは、異物の侵入に対して、身を守る体内防衛機能。
そして、それを機能させるには、浸入物質に対して、同種と異種を認識する体内認識機能が不可欠となります。
→★免疫を学ぶ着眼点のふたつめは、生物の認識機能を探ること。
以上の2つが免疫を学ぶ上での着眼点ではないでしょうか。
それではさっそく、免疫機能のしくみについて追求してみましょう!

免疫機能のしくみ~細胞間の連携プレー
免疫とは、異物から身を守る防衛機能のこと。人類を含む脊椎動物の防衛機能は、大きく3つの防衛段階があります。
【3つの防衛段階】
①上皮障壁(異物を体内に入れない機能)

皮膚や粘膜のこと。第一段階は、体内に入ろうとする異物を外から防御します。
例えば、皮膚は物理的に内部と外部を遮断したり、弱酸性を保つ事でバクテリアなどの増殖を化学的に抑える機能を持っています。また、呼吸器や消化器から分泌される粘液は、微生物などを捕捉する事で、病原体の体内への侵入を防ぎます。
「上皮障壁」についてはコチラ [4]
②自然免疫(主に病原体等を食べる、消化する機能)
それでも異物が体内に侵入した際に作動するのが、第二段階の「自然免疫」です。
体内に入った異物、病原体などを食作用をもつ細胞によって排出する機能のことをいいます。
細菌や感染細胞、細胞の死骸までをガツガツと食べるマクロファージや、体内に発生したガン細胞を死滅させるNK細胞(ナチュラルキラー細胞)などが該当します。
「マクロファージ」についてはコチラ [5]
「NK細胞」についてはコチラ [6]
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③獲得免疫(抗体を作り出し、病原体を攻撃する機能)
脊椎動物に見られる第3段階の防御体制であり、自然免疫をすり抜けた病原体に対して、抗体を作り出して攻撃する免疫機能のことを指します。
獲得免疫は、骨髄から作られるB細胞、胸腺から作られるヘルパーT細胞やキラーT細胞などが該当します。
異物への攻撃は、免疫細胞同士の連携のもとに行われ、実に組織的な動きを見せます。
マクロファージなどの自然免疫では対処できない病原体が体内に侵入すると、ヘルパーT細胞がマクロファージから病原体の情報をもらい、B細胞とキラーT細胞に「攻撃指令」を出します。
※正確には、マクロファージ(自然免疫)とヘルパーT細胞(獲得免疫)間で、情報伝達の橋渡しをする樹状細胞が関与しています。
B細胞は、指令を受けて病原体に合う「抗体」を大量に産生。この抗体を標的にしてキラーT細胞がパーフォリンと呼ばれる「ミサイル」を発射します。
このミサイルによって感染細胞の細胞膜を破壊し、感染細胞ごとウイルスを退治してしまうのです
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獲得免疫は、その名の通り一度抗体を作り出すと、病原体が排除された後も免疫記憶として残り、再び同じ病原体が浸入した際に、より素早い攻撃を加えられるように準備することが事が可能となります。
予防接種は、この免疫記憶の仕組みを利用して、抗原物質(ワクチン)を事前に投与し、抗原抗体反応を起こしやすくさせているわけですね。

【免疫細胞の分類】
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【免疫細胞間の連携プレー】
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<参考投稿>
免疫とは-1 [7]
免疫とは-2 [8]
免疫とは-3 [9]
以上体内防御体制についてまとめてきました
私達のからだの中に、このような複雑かつ組織的な動きをみせる細胞群が存在する事自体が驚きです。外敵をキャッチする者、先制攻撃を仕掛ける者、情報伝達に徹する者、次回の闘いに備える者など、個々ではなく組織的視点に立って連動して動くことで、初めて外圧適応しているんですね。
この細胞群の進化の過程を辿ると、ある時期に作られたものではなく、『①上皮障壁⇒②自然免疫⇒③獲得免疫』の順に塗り重ねられてきたことが分かります。
果たして、免疫機能を高度化させるに至った外圧状況とは一体どのようなものなのでしょうか?
次回の記事で、免疫進化史を紐解いていきましょう 🙂
お楽しみに

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