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哺乳類の排卵

さて、産卵のシリーズ2回目は、哺乳類。

哺乳類にだってもちろん、卵細胞はあります。しかし、体外へ産み出されるわけではないので、「産卵」ではなく、「排卵」と言います。

身近な哺乳類たちは、どのように排卵し、受精しているのでしょうか?

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哺乳類の生殖戦略http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsar/jrd/jpage/vol47/470102.html

から、ご紹介します。

 哺乳類では、排卵した卵が交尾の後受精して、妊娠を経過して子が生まれる。受精卵がつくられなかった場合は次の排卵が起こってくるが、この繰り返しを排卵周期という。

 排卵周期のパターンは、動物の種間で大きく異なっており、排卵の起き方と黄体のはたらき(後述)によって3つに分類することができる。まず排卵の起き方には2種類あって、ウサギ、ネコ、フェレット、ラクダなど、交尾の刺激が加わらないと排卵が起きない交尾排卵動物と、排卵のために交尾が必要でない自然排卵動物がいる。ヒト、家畜、ネズミなど多くの動物は、自然排卵動物である。自然排卵動物は黄体のはたらきでさらに二分されるが、その前に交尾排卵動物の適応が何であるかを考えてみたい。

 動物の雌が雄の性行動を許容して交尾をするのは、発情したときに限ってである。発情は、卵巣から分泌されるエストロジェン(卵胞ホルモン)というホルモンの作用でひきおこされる。このエストロジェンは排卵可能な成熟した卵胞から分泌され、排卵とともに分泌されなくなる。つまり、受精が可能なときに限って雌は発情し交尾が起きるのである。以上のことから、交尾排卵動物が交尾しないと排卵しないということが、交尾しない限り発情が続いていることも意味していることが判っていただけると思う。

 交尾排卵は、普段は雄雌が別れて棲んでいるような動物の適応で、交尾しない限り発情が続くから、その間遠くからも雄が集まって、雌の獲得をめぐって雄の間で争いが起こる。争いに勝った雄が、負けた雄に比べて優れているとは一概には言えないが、このような生殖戦略が優れた子孫を残す可能性を高めていることは確かである。イエネコは身近な交尾排卵動物で、雌が発情すると沢山の雄が集まり、大変賑やかなことになることは経験されていると思う。

 ひるがえって自然排卵動物では、エストロジェンは、発情を引き起こすとともに排卵に必要な性腺刺激ホルモンの分泌をもたらすので、卵胞が成熟するとすぐに排卵が自動的に(自然に)起こり、発情はせいぜい1日程度しか続かない。このような状況を前提に、つまり、雌と雄が容易に接触できるような前提で生態系ができ上がっているのである。交尾排卵動物は、エストロジェンの排卵誘起作用を欠いたことによって、特別な生態系を作っている動物と考えることができる。

鮭などの魚類と異なり、哺乳類にとっては生殖とは死への一里塚ではありません。卵細胞が続く限り継続的に子孫を残せます。

単独生活をするネコ科動物はいつでもオスに出会えるとはかぎりませんから、少ないチャンスを確実にものにするため、交尾したあとに排卵する仕組みが備わっていると考えられます。補食行動は単独で行うため、オス同士がメスとの交尾を巡って激しく争うという形で、(下図は、左がメスネコの生殖器、右はオスネコのペニス。一旦挿入されるとなかなか抜けないようになっているとともに、膣を刺激して排卵を誘発します。)

雌ネコの生殖器雄ネコのペニス

生殖機能についても、それ単独では決して成立せず、種としていかに生き延びていくか、すなわち外圧への適応がすべて、と言えます。

また、いずれにしてもメスが発情、すなわち受精可能な状態にならない限り交尾は行われません。そして、オスは、メスが発情してはじめて発情するという構造も変わりません。

生殖とはあくまでメス発であり、あくまで受精→子孫を作るために行われるもの。イヌやネコといった哺乳類では、発情・交尾といった性機能は産卵・受精と不可分でした。

こうした生殖機能の位置づけは、サルやヒトになると変化していきます。

(次回、「サルにおける発情と交尾」へと続く)

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