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インフルエンザウィルスの感染過程1

Posted By hayabusa On 2009年6月21日 @ 8:43 PM In ⑤免疫機能の不思議 | No Comments

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みなさん、こんにちは。
先月末、「新型インフルエンザ騒動 どーする?」 [1]の記事を皮切りに、インフルエンザについて連続して記事を書きました。
そのときは、ちょうど新型インフルエンザ騒動の最中。あの時期と比べると、世間のインフルエンザ騒動はだいぶん落ち着きましたね。あの騒ぎはなんだったのだろう?という気さえしてきます。
一方で、騒ぐだけ騒いだ挙句、何も得るものがなかったというのはさびしい。せっかくなら、ちゃんとインフルエンザについて知っておきたいと思います。
ということで、以後数回にわたって、引き続きインフルエンザについての記事をお届けします。
で、今日と明日は、インフルエンザウィルスの感染過程について書こうと思います。
詳しく調べてみると、前回の記事 [2]では、ちょっと勘違いしていた部分もありました。それの修正も含めてお知らせします。
それでは、いってみましょう。
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●感染の必要条件=くっつく
(これは、前回の記事 [2]と重複する内容です。復習を兼ねて読んでください)
インフルエンザウィルスが感染するためには、当然ですが、宿主となる細胞に「くっつく」必要がありあます。この「くっつく」作用を担っているのがインフルエンザウィルスの表面に分布する「HA」=ヘマグルチニン(haemagglutinin:赤血球凝集素)です。
インフルエンザウィルスは、イメージ的には、冒頭の絵のように、いが栗のような形をしています。そのいが栗の針をよく見ると大きく3種類あって、そのうちの一種類が「HA」です。
●HAがくっつくためには?⇒キャップをはずす
生まれたままのインフルエンザウィルスは、HAが不活性な状態で存在します。不活性なままだと、細胞にくっつけません。HAの先端を活性化してやる必要があります。
イメージ的には、
いが栗の針の一種であるHAの先端に“キャップ”がはまっているような状態が不活性な状態です。キャップがはまったままだと、針が刺さらないので目的の細胞にくっつけません。キャップを外すのが「活性化する」ということです。
●HAの活性化と「プロテアーゼ」
HAの不活性状態を活性化するのが「プロテアーゼ」です。プロテアーゼは、蛋白質分子のペプチド結合を加水分解する酵素の総称。実際は、色々な種類のプロテアーゼがあります。この酵素が、HAの特定の箇所を分解=切断し、活性箇所を露出させることでくっつけるようになります。
当初は一本で不活性だったHA(HA0)を二つに分解して活性化させるということですね。これを「開裂」といいます。
プロテアーゼがHAを開裂するイメージ図がこれ
↓↓↓↓↓
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鉤(かぎ)状になったHAをプロテアーゼが開裂しています。結果、HA1とHA2に分かれます。宿主細胞にくっつくのは、ウィルスの本体側にのこったHA2の先端(ピンク色の部分)です。
●特定のプロテアーゼで活性化するHA
通常のインフルエンザの場合、ある特定のプロテアーゼでHAが開裂されます。つまり、特定のプロテアーゼがないとHAが活性化しない=くっつけないわけです。
もともと、プロテアーゼには、分解する配列をあまり選ばないもの(基質特異性が低い)もあれば、決った配列の蛋白質の特定部位のみを分解するもの(基質特異性が高い)があります。インフルエンザウィルスのHAを活性化するのは、そのうち、後者のプロテアーゼ。
上の画像にもありますが、通常(弱毒性)のインフルエンザウィルスのHAを活性化するプロテアーゼは、トリプシン、トリプターゼクララなどです。
●HAがくっつく特定条件
(これは、前回の記事 [2]と重複する内容です。復習を兼ねて読んでください)
プロテアーゼがHAを活性化し(針のキャップが外れ)たとしても、実は、どこにでもくっつけるわけではありません。通常のインフルエンザウィルスのHAは、以下の二つの条件を満足した場合のみ、それが「くっつけるものだ」と認識するようになっています。
その条件とは、
1)とりつく細胞表面に糖タンパク質の糖鎖の「シアル酸残基」があること
2)シアル酸に結合している「ガラクトース」の結合様式(結合位置)が認識可能であること
です。

シアル酸とガラクトースの結合様式は専門的に「α2→6結合」や「α2→3結合」などと呼ばれているのですが、
ヒト由来のインフルエンザウィルスは、「α2→6結合」しか認識できない
トリ由来のインフルエンザウィルスは、「α2→3結合」しか認識できない。
この違いが、鳥インフルエンザが人に感染しないと言われていた理由です。
イメージ的には、
キャップが外れたHAの針は、どこにでも刺さるわけではない。刺さるためにちょうどよい穴が必要で、その穴には特定の条件があるというこです。そして、この条件が、シアル酸に結合するガラクトースの結合様式ということですね。
●まとめ
これまでの内容で、インフルエンザが感染する=宿主細胞に「くっつく」には、以下の条件が必要とわかります。
①特定のプロテアーゼと反応してHAが開裂され活性化していること
(≒イメージ:HAのキャップが外れて、針がむき出しになっていること)
②宿主細胞側に特定の結合様式を持ったシアル酸残基が存在すること
(≒イメージ:針が刺さるための条件を揃えた穴が宿主細胞表面にあること)
いかがでしょう?
ちょっと複雑ですが、そんなに難しくありませんよね。
~インフルエンザウィルスの感染過程2 に続きます~


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[1] 「新型インフルエンザ騒動 どーする?」: http://www.biological-j.net/blog/2009/05/000767.html

[2] 前回の記事: http://www.biological-j.net/blog/2009/05/000769.html

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