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生命のオスメス分化に学ぶ-2- 性の差異促進により生命は進化した

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拡大版はコチラ [1]から
★真核生物~多細胞生物によって、分裂システムという大進化を遂げました。
その後の生物進化は、「性の分化」から「性の差異促進」へと移行していきます。性の差異促進がもたらしたものはどんなものなのでしょうか?
今回は、現存生物の祖先の登場→両生類(+爬虫類+鳥類)→哺乳類までの進化の過程を外圧変化と獲得した性機能を手がかりに探っていきます。
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□ 現存生物の祖先の登場

約5億5千年前、生物が爆発的に増加したのがカンブリア大爆発です(リンク [4])。この時期に現存生物の基本的な形ができたといわれています。

なぜこのようなことが起きたのでしょうか?

カンブリア紀の少し前に全球凍結と呼ばれる、地球全体が氷で覆われるような超寒冷期が繰り返しありました。
⇒環境外圧への適応が必要

この超寒冷期のあと、地球は安定期に入っていきます。環境外圧が弱まったことにより、自然と生物の個体数が増え、今度は種間闘争圧力が大きくなってきます。
⇒運動能力=体細胞進化が必要

これらの外圧に対して、生物は適応を迫られました。
では、この外圧に適応すべく、生物の変異システム(=性システム)はどうであったかというと、約10億年前頃には有性生殖を獲得し、雌雄分化もしていたといわれています。

※有性生殖とは、2つの個体が遺伝情報を出し合うことにより、2つの個体から自分たちとは微妙に違う個体が作られます。ちなみに無性生殖とは、細胞が二分裂し、自分と同じ個体が増えていくだけです。
※雌雄分化(=精子をつくるオスと、卵子をつくるメスに分かれる)も変異を促進する方法で、DNAをより多様化することが可能になります。

この有性生殖と雌雄分化により変異を促進し、生命は外圧(環境圧力や種間圧力)に適応したため多様に進化できたと言えます。

自然外圧+種間圧力を、有性生殖+雌雄分化という性システムを用いて、様々な可能性に向って変異(=進化)したのが、カンブリア大爆発だといえます。

<ポイント>
自然外圧⇒種間圧力⇒生殖(生存)の為には、体細胞進化⇒躯体分化(=多様な種の登場(脊椎動物の登場))※まだこの時期は有性生殖・無性生殖は併存、雌雄同体・雌雄異体も併存
【参考投稿】
カンブリア大爆発の原動力は種間闘争圧力 [5]
多細胞生物の急進化~カンブリア大爆発~ [6]
無性生殖から有性生殖へ [7]
なんでや劇場「有性生殖へのみちのり」レポート③ 有性生殖の起源とは [8]
どうして生き物にはオスとメスがあるのか? [9]
雌雄同体から雌雄異体への分化史 [10]

□魚類の登場(約4.8億年前)

約4.8億年前に魚類が登場したとされています。
両生類に繋がる魚が獲得した大きな機能は
①アゴの獲得
②骨、腎臓、鱗の獲得
③ヒレの獲得
④肺呼吸、内鼻孔の獲得(←肺魚)
が挙げられます。

生物の進化は逆境に基底されるので、獲得した機能から外圧を想像することは難しくありません。
大きな流れは
『生存闘争圧力の上昇⇒摂食機能の高度化→種間闘争圧力△(以下循環的繰り返し)』
となります。
詳しくは参考投稿(コチラ [11])を参照してください。

では、上記機能の獲得を促した、魚類の性機能についてみてみましょう。

魚類の生殖は多様ではありますが、多くは体外受精で、雌が水中に放卵し、同時に雄が放精します。
この受精方式から考えてもわかるように、魚類はほぼ有性生殖であり雌雄異体です。

注)魚類の段階では、体格差により性転換する生物(カクレクマノミ)などもいるため、遺伝子決定による雌雄分化は発展途上であり、成体でも性転換が可能なものもいます。

【参考投稿】
魚類から両生類への進化 [11]
魚類の性転換の事例 [12]
躯体のオスメスってどうやって決まる?~第87回なんでや劇場より~ [13]
淡水魚から肺魚へ [14]
魚類の性(雌雄同体) [15]

□両生類の登場(4.2億年前)
哺乳類に繋がる両生類が獲得した大きな機能は
①陸上に適した骨格(肋骨や筋肉)の発達
②呼吸器機能(肺呼吸+皮膚呼吸)の発達
③聴覚・発声機能の発達
などが挙げられます。詳しい両生類の外圧状況や獲得した機能は参考投稿をごらんください。
両生類ともなれば生殖形式は有性生殖のみになります。そしてほぼ雌雄異体になります。

両生類はヘテロ染色体(性染色体)を雄ヘテロ型(XY型:雄変異推進型)・雌ヘテロ型(ZW型:雌変異推進型)の両方もった種がいるということも特徴です。
これは、変異を推進させる役割を雄が担うものと雌が担うものが同じ種でも違うものがいるということです。

ちなみに両生類の雌雄決定はアバウトで、遺伝子決定以外に卵の温度状況によって性決定されるものもいます(イモリなど)。性染色体(≒性決定因子)があるにもかかわらず、性決定が温度(環境)により変化するというのもポイントです。

【参考投稿】
両生類から哺乳類への進化 [16]
性決定のタイプ(両生類から哺乳類) [17]
外圧の高まりと共に、性決定は固定化されてきた。 [18]
XYとZW~ツチガエルの性決定機構 [19]

□爬虫類の登場(約3.6億年前)
哺乳類に繋がる進化系統とは外れますが、爬虫類の外圧と性についてもふれておきたいと思います。
爬虫類は、乾燥適応を迫られた両生類から進化した種とされています。
簡単に外圧と獲得機能を整理しておくと下のようになります。
乾燥→皮膚が乾いてしまう⇒鱗の復活
   →卵も乾く→孵化できない⇒卵殻の獲得

つづいて、性についてです。爬虫類も性染色体(雌ヘテロ型が主流)をもっていますが、両生類と同様、温度によって性が決まるものがいます。
両生類も爬虫類も雌雄は孵化時の環境により決定するということが特徴です。

【参考投稿】
両生類から爬虫類へ [20]
オスメス(性)決定の仕組み [21]

□鳥類の登場(約1.3億年前)

爬虫類が、寒冷化に加え低酸素という外圧を受け進化したのが鳥類といわれています。
簡単に外圧と獲得機能を整理しておくと下のようになります。
寒冷化+低酸素⇒恒温性(体温調節、体毛等)や横隔膜(代謝効率)の獲得
       →気温により卵が孵化しない→卵を温める必要⇒卵殻の強化


そして、性についてです。鳥類も爬虫類と同様の性染色体(雌ヘテロ型が主流)をもっています。雌へテロ型の特徴は、生殖役割(=雌)に変異推進を担わせているというところです。なんで屋劇場では、乾燥化に対応する=卵の殻の強化等の生殖系の変異に賭けた進化を遂げたのが、雌へテロ型ではないかという仮説を立てました。

鳥類に関して、もう1つの特徴は、遺伝子により性が決定するということです。進化に応じて雌雄の差別化・明確化が促進されるということですね。

【参考投稿】
鳥類の生殖の秘密 [22]

□哺乳類の登場(約3億年前)

詳しくは次回のレポートに掲載されるので、ここでは性決定因子に関することだけをまとめておきます。
哺乳類は両生類から進化し、爬虫類とは別系統となる雄ヘテロ型(XY型:雄変異推進型)の遺伝子をもって進化しました。雄へテロとは、闘争役割が変異促進を担うという遺伝子です。
つまり、哺乳類=人類は闘争(→変異を受けやすい)存在が変異を推進するという効率的な進化をしているといえます。

また、鳥類と同様、遺伝子により性が決定します。今の人類で考えると分かりやすいと思います。
雌雄固定生物は、へテロ染色体による変異(闘争機能の向上)・雌雄差別化のメカニズムを取り入れた生物です。

闘争力の向上⇒変異のスピードUP⇒雌雄躯体固定分化

変異スピードをUPするため、相同染色体がその相同性を捨て、修復されにくく変異蓄積度が高いヘテロ染色体をつくりだしました。

【参考投稿】
なぜ拘禁因子でオスメス分化を決定するようになったのか?~第87回なんでや劇場より~ [23]

【まとめ】
今回は現存生物の祖先の登場→両生類(+爬虫類+鳥類)→哺乳類までの進化の過程を外圧変化と獲得した性機能を手がかりに探っていきました。
性の差異促進により生命は進化したということがよくわかりますね。 😀

(masamune)

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