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人類の進化と脳容量の拡大 3 ~過酷な外圧が脳進化を促した

250万年前、現生人類へと続く初期人類の脳容量は飛躍的に拡大しています。その変異がなぜ起こったのか?前回の自然外圧を元に考えてみます。


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300万年前、地球は最後の氷河期をむかえていました。地球規模で寒冷乾燥化が進み、その変動に適応すべく植物にも変化が生じています。イネ科や、カヤツリグサ科が誕生し、アフリカに広く分布していったのです。
 
草原化で、平地の栄養供給量が増大する中、草食獣が増え、次いで肉食獣にも変化が生じました。そして時同じく、人類種にも変化が起こっています。
 
この時期、草原適応したパラントロプス [1]が枝分かれしています。
 
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イネ科の植物は、茎や根に栄養を集中させるため、彼らはこれを食すべく、顎の筋肉を発達させ、咀嚼能力を向上させました。発達した側頭筋は、固い食物を噛み潰すことができ、草原での生存をより優位にしています。しかし、その筋肉は、頭蓋を押さえつけ、脳拡大を阻害。パラントロプスは、本能(=身体能力)で自然外圧に適応しようとしましたが、その後、地球上から姿を消してしまいました。
 
 
他方、現生人類へとつながる初期ホモ属は、パラントロプスのような発達した顎の筋肉はありませんでした。このため、適した食物を探すのに、随分、苦労したと思われます。
 
ホモ属の遺跡からは、裂けた動物の骨が無数に発掘されています。食物の一つに骨髄を選択していた可能性があるようです。肉食獣が骨を食べると、その骨は横に割れます。しかし、遺跡の化石は縦に裂けていました。現在でもアフリカ原住民ハザ族は、骨を火であぶり、石器で砕き、ぞうきんを捻るように骨を絞り、縦に割って食べています。随分、工夫して食べていたんですね。
 
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適した食物を探すのに苦労し、肉食獣が増えた草原で生きる必要に迫られ、外敵多く、安全域が少ないという、2重3重の外圧を受け、過酷な状況におかれた初期人類。草食獣はいるものの、まだ狩りをする能力はなく、肉食獣に出会う危険に怯えながら、それでも骨髄他、食べるものを探し、なんとか命をつないできたんですね。
 
この状況下では、とても一人では生きていけません。受け継がれてきた「共認機能」を最大限活かし、仲間と協力することで、生きる術を探していたのではないでしょうか。本能(=身体能力)では、外圧適応できない以上、頭脳の新たな機能を使い、発展させることでしか、生き残る方法がなかったのかもしれません。
 
一貫した過酷な外圧状況に集団で適応すべく、脳容量が飛躍的に拡大したと考えることができそうです。
 
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同時期、人類は、森林に変わる新たな安全域を発見しています。「人類のゆりかご」と呼ばれる南アフリカの渓谷では、多数の人類化石が発掘されているのです。次回は洞窟=初期人類の安全域について扱っていきたいと思います。
 
参考:「地球大進化6 ヒト 果てしなき冒険者」(NHK出版)

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