2009-06-15

生命のオスメス分化に学ぶ-1- 性の起源と意味

みなさん、こんにちは
以前「生命の起源と進化に学ぶ」と題しまして、2007/06/17~2009/03/29まで全16回にわたって追求してきたなんでや劇場の認識を振り返りながら、そのエッセンスをお届けしました
(記事は2009/05/17~2009/05/23にわたって掲載されました)
今週は「生命のオスメス分化に学ぶ」と題しまして、前回辿った生命起源と進化を、『性』を着目点として振り返っていきたいと思います 😉
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■性とは何か?
「性(せい)とは、有性生殖を行う生物において、生殖可能な相手を制限する生物学的な区分(性別)である。」とウィキペディアリンクにはあります。
でもこの定義って、有性生殖を前提とした定義ですよね??
なんでや劇場的には、性分化ってとっても重要な出来事
そもそも性分化がなければ、小変異=交配(受精)や遺伝子組み換えによる変異を組み込むことは出来なかったのです! 詳しくはコチラ
それゆえ性とは「遺伝子を組み替えて、より外圧適応的な個体を作り出すためのシステム」と言えるのです!!
■生殖のはじまり~原核生物の分裂
 人間がいくら現代に適応していても、いつか個体は滅びる=死にます。つまり、子孫を残さないと種は続いていかないわけですね。
 「細胞分裂」は「生殖(生物の最重要課題=種の保存)の起源」でもある。リンク 
と以前の記事で言われたとおり、私たちが子どもを残す営みははるか原核生物の細胞分裂にさかのぼることが出来ます。(約35億年前)
その細胞分裂の際に、ごく稀にDNAのコピーミスが生じて、適応できずに死ぬ個体や、逆に今までの個体より適応的な個体ができていきました。しかしこの段階では、DNAの変異は偶然に任せるしかなく、通常はもともとの個体と全く同じクローンが増えていくだけです。これでは、環境に変化があったとき一発でやられてしまいますね!!
■遺伝子を混ぜる性のはじまり~接合
ある研究者が1倍体細胞をわざと危機的状況 👿 に追い込む実験をしました。すると…

ジョーンズというアメリカ人の研究者がクラミドモナスという単細胞の藻類を培養し、頃合いを見はからって培養液からチッソだけを抜き取ってみたのです。
すると、すべての細胞が相手を探して合体(接合)してしまったのです。外部環境からチッソがなくなるということは、細胞が生きていくのに欠くことのできないタンパク質が細胞の中でつくれないことを意味し、それはただちに死を意味します。クラミドモナスは、死の脅威に対して、合体という方法で立ち向かったのです。
ところで、ハプロイド(一倍体)細胞が合体(=接合)する、これこそ有性生殖です。チッソ飢餓がタンパク質をできなくし、結果的に有性生殖のきっかけとなることを、この実験はみごとに示しています。

リンク
↑このように、1倍体細胞のクラミドモナスは合体ダー!! を試みて2倍体クラミドモナスになってしまったのです。この合体過程を接合と呼びます。
引用にあるとおり、接合のもともとの意味は、遺伝子を混ぜ合わせることにより危機状態を生き延びてより適応的な個体を作るため。よって、これが性の始まりと言えるのです!!
接合という手法を生み出した生物は、その後DNAを一組しか持たない1倍体細胞から、常時二組のDNAを保持する2倍体細胞へと進化していきます。なぜ、生物は2倍体を選んだのでしょうか?

一倍体では適応しにくい外圧とは何か。まずは飢餓状態が考えられます。飢餓状態に入ると活性化エネルギー不足に陥り、体内のシステム維持が困難になり活性化酸素の影響を強く受けたり、ウィルスなどの外敵にさらされたりと危機逃避できなくなる。一セットのゲノムが損傷されて回復できずに死ぬ。ところが、二セットもっていたものはスペアーがあるので生き残る。
つまり、二倍体の最大の適応機能上の利点は優れた「安定性」という点だったでしょう。

しかし、同時に困った問題がおこる…この安定な二倍体は裏返せば、新しい環境の激変に適応する変異体を生み出しにくいという欠点を持つことになる。(一倍体は絶えず変異体を生み出し、多くは死ぬが中に強い適応体を生み出す)

リンク
1倍体という変異を生み出す形態を選ぶか、2倍体という安定を選ぶか…迷った生物はどちらも取る! というシステムを生み出します。それが『有性生殖システム』です。
■変異と安定の両立~有性生殖システムの確立
有性生殖システムについては、前回のシリーズ5の生物の起源と進化に学ぶ-5-安定と変異の両立にくわしいので、そこから一部抜き出していきます

二倍体単細胞生物は、通常状態では単純分裂によって子孫を残します。しかし、これだけでは安定的に変異体を作り出すことができません。そこで、減数分裂により一倍体細胞を作り出し、同種の個体から発生した一倍体細胞と接合することで、次代の二倍体単細胞生物となります。
一倍体生物と二倍体生物の減数分裂の違いは?というと、一倍体生物の減数分裂は、『安定期(冬眠)と変異期(減数分裂)をずらして成立している』のに対して、二倍体生物の減数分裂は、『単純分裂と減数分裂による遺伝子組み換えを安定して行うことが可能』になったというのがポイントです

その後生物進化の歩みを辿っていくと、この二倍体単細胞生物の中から多細胞生物が生まれます。
多細胞生物は、単純分裂を子孫を残すためではなく「体細胞を作り出すためだけ」に使います。また、減数分裂を「子孫を残すためだけ=受精卵を作り出すためだけ」に使っていきます。
つまり多細胞化(=細胞の役割分化)への布石は、この二倍体単細胞生物の分裂システムにあるのです。

「二倍体生物⇒減数分裂⇒有性生殖」という変異システムは、実は生物史上非常に大きな意味を持ちます。
多細胞生物以降に生まれるほとんどの生物は、この変異システムを元に進化を遂げていくことになります。それは、私達人類も変わりません。
つまり、遺伝交差という小変異を組み込んだこのシステムは、外圧適応態たる生物の最も重要な適応システムであり、生物の大進化と位置づけられるのです。

ついに生物は、種の存続という安定を維持しつつ、より適応的な個体を作り出すための変異を組み込んでいく「有性生殖システム」を生み出したのです。これで性がシステムとして確立したことになります。
■性の差別化とその促進の歴史~殖産分化・精卵分化、そしてオスメス躯体分化
有性生殖システムを確立した生物は、その後獲得した性をいかにより安定的に、かつより効率よく変異を生み出すようにしていくかという可能性に収束して、どんどん分化(差別化)を進めていきます。

①保存と仕事の分化(殖・産分化)
・種の保存上、最も負担の大きい生殖を専門に分離することによって、体細胞系列を高度に機能分化させていくことも可能となった。
・特に動物の場合・・・動物は動いて栄養を摂るしかない⇒摂取機能の高度化⇒種間圧力上昇⇒摂取機能の高度化⇒種間圧力上昇・・・という循環的な外圧上昇構造にあり、これが、保存と仕事の分化の軸線上で、多細胞動物の進化を促進してゆくことになる。
②精卵分化
・精子と卵子に配偶子が分かれたのは、運動と栄養の役割分担により、受精過程(出会い)と発生過程(エネルギーを要する)の両方に適応的な形態への分化。
(※ 精子と卵子に配偶子が分化したのはなんで?
・このように考えると、精卵分化の本質は、精子:変異配偶子と卵子:保存配偶子への分化であることが見えてくる。変異と保存の分化、これがオスメス分化の原基となる。
・これは、変異+不変の組み合わせによる、生物的に安定な生殖システムとも言える。
(※生物史から学ぶ『安定』と『硬直』の違い
③雌雄躯体分化・動物の場合、精卵分化から、雌雄の躯体が固定的に分かれるようになるまで、かなり長い歴史がある。脊椎動物の系統でも魚類の段階まで、雌雄同体と雌雄異体が併存。
・雌雄の躯体が分化していく背景には、摂取機能の高度化⇒種間圧力上昇・・・という循環的な外圧上昇構造が前提にある。
・体細胞系列の高度化の要請と同時に、各々の配偶子、生殖巣、生殖器etcを緻密につくりあげるためには、精子をつくる躯体(オス)と卵子をつくる躯体(メス)を分化させたほうが合理的。
・また、動物ゆえの種間圧力⇒摂取能力高度化・・・に対応するため、幼体保護と防衛力上昇の要請が加わる。これは必然的に(保存性に特化した卵子を持つ)メスの生殖負担の増大、そして、それとバランスするようにオスの闘争負担が増大させる方向へつながる。これは脊椎動物の進化史とも符合する。
・これらにより、動物の雌雄の躯体は分化していったと考えられる。

オスメス分化の塗り重ね構造 より引用
性の歴史を振り返ると、それは生物が、いかにより安定的により適応的になっていくかの可能性の実現の繰り返しだと見ることが出来ると思います。そしてそれはもちろん私たち人類にも脈々と受け継がれている可能性へのベクトルなのだと感じます。
生物の営みに学ぶたびに、生物学会の、通説といわれる学説がいかに片手落ちかが分かります。
例えばネオダーウィニズム。こんな 学説ですが…
>①遺伝子に無方向な突然変異が起こる
②この突然変異が環境に適応的ならば集団中に広がり、不適応ならば集団から除去される
③この繰り返しにより生物は徐々に進化する<
リンク
より詳しくは
進化論の変遷 その1 
進化論の変遷 その2 
突然変異説って何?総合説って何?
そもそも遺伝子の無方向な突然変異に任せていて、適応的な個体が生まれるのを待つだけなんて、そんなこと考える方が今までの生物に失礼な気がします
このシリーズ、まだまだ続きますので、ぜひ応援お願いします

List    投稿者 yukie | 2009-06-15 | Posted in ③雌雄の役割分化1 Comment » 

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コメント1件

 さんぽ☆ | 2009.08.17 16:42

抗生物質がウイルスには効かないということを初めて知りました!
抗生物質に適応すべく耐性を獲得していく菌のすござに、生命エネルギーのすごさを感じます。

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