- 生物史から、自然の摂理を読み解く - http://www.seibutsushi.net/blog -

生命の起源と進化に学ぶ-2-生命の誕生

なんでや劇場「生物史から学ぶ自然の摂理」を振り返るシリーズの続き、今日は「生命の誕生」です。
生命誕生のシナリオ解明(仮説構築)は、シリーズ開始当初からの大きな追求テーマでした。シリーズの第1回に大きな切り口が提示されましたが、その後の様々な角度からの追求により、当初の仮説も塗り替えられ、より整合性の高い仮説に至ったと思います。

生命起源の謎については、専門家の間でも、DNA/RNAワールド、タンパク質ワールドetcといった○○ワールド仮説が議論に上り、百花繚乱の状況ですが・・・(実際どれもスッキリしない)
生命誕生のシナリオは再現不可能な事象ですが、こうした領域こそ仮説思考力と論理整合性の検証が問われる場面。固定観念や専門家の言説にとらわれることなく、自在に思考を組み立てていくことの重要性を感じました。

今日はその生命起源仮説の概略を紹介します。

1.生命誕生のシナリオ
・生命の舞台となった原始地球
・生体活性分子の登場
・生体膜の形成と濃縮型内部空間の獲得
・RNA/DNAの成立
・DNA複製システム/細胞分裂システム

2.生命は内圧(エネルギー)を高める方向で可能性収束
※原始生命と群れ(追求ポイント)


気になる続きはポチっと押してからどうぞ
ブログランキング・人気ブログランキングへ [1]
にほんブログ村 科学ブログへ [2]


なんでや劇場における追求のなかで注目されたのは「中心体」です。
(専門家の間ではDNA、RNA(ばかり?)が注目されることが多いようですが、なんでや劇場では、変異を主導する生体活性分子としての中心体原基、認識機構としての生体膜も重要なポイントとして追求しました)

真核細胞の特に分裂プロセスにおいて、この中心体は統合役(司令塔)の役割を担っています。原核細胞には(真核でいう)中心体そのものはありませんが、その元となる器官(中心体原基と呼ぶ)は存在しています。この非常に重要な器官、かつ特徴的な物性を持つ中心体、中心体原基は生物進化(変異)の中でどのような役割を担ってきたのか。こうした追求の中で、中心体原基は生命起源においても、最初期から重要な生体活性分子であったであろうことが浮かび上がり、独自の生命起源仮説が構築されました。

1.生命誕生のシナリオ
●生命の舞台となった原始地球
地球という惑星が登場したのが約46億年前。
原始大気の主成分は微惑星から放出された二酸化炭素(全成分中の約96%)、窒素、メタン、アンモニアなどで構成。また原始の海は、水素、ナトリウム、カリウムなどの元素や、シアン化水素、硫化水素、リン酸、塩化ナトリウム、水などの物質がどろどろに溶け合ったスープ状態であった。
これらにエネルギーが加えられることによって、後に生命の元となる素材は作られた。エネルギーは太陽光、雷の放電、放射線や熱、紫外線などによってもたらされた。
こうして生命を構成する基本的な物質(アミノ酸、核酸塩基、糖や炭水化物などの低分子の化合物)は合成されていった。

[3]
(※出典:なんでや劇場資料46)

●生体活性分子の登場
原始地球の豊かな反応系(高エネルギー、原始スープ)を背景に、生体分子材料の相互反応によって、生体活性分子は登場した。
最初にキーとなったのは、プリンヌクレオチドATPとGTP。(生体内で、ATPは生命活動を支えるエネルギー源として、GTPは細胞内シグナル伝達やタンパク質の機能の調節に用いられている物質)
このプリンヌクレオチドがリン酸を放出する際に生じるエネルギーを使って、アミノ酸(低分子)→チューブリン様タンパク(高分子)を合成。高分子の形成によりエネルギーを高めることができた。エネルギーとは仕事量であり、反応を活性化させる触媒作用により、高い成果を上げることができる。
このヌクレオチド+チューブリン様タンパクの複合体が生体活性分子(中心体原基)を形成、これは生命史最初の自前の触媒機能≒仕事機能を有したものと考えられる。(かつ原始地球の自然エネルギー反応で合成されうる程度に単純である)

●生体膜の形成と濃縮型内部空間の獲得
生体活性分子(中心体原基)が形成されると、その反応活性からピリミジンヌクレオチド(UTP/CTP)が作り出され、そしてこのUTP/CTPが脂肪酸と糖を誘導し、生体膜や膜タンパク質(糖鎖含む)を合成する。
特に注目すべきは生体膜の獲得である。膜により内外を区分けし、細胞という小宇宙を作り出した。さらに選択的透過性により外部からの物質・エネルギーを蓄積することが可能となった。生体膜が作り出す「濃縮型内部空間」とは、原始地球が持っていた豊かな反応系のエネルギーを閉じ込めた空間に他ならない。
生体膜が持つ「選択透過性」は生命の認識機構の原基でもある。これを実現する「膜タンパク質」も中心体原基の反応活性により作り出されたものである。

[4]
(※出典:なんでや劇場資料46)

●RNA/DNAの成立
生体膜によって形成された濃縮型内部空間、このエネルギーの蓄積が次のRNA形成に繋がっていく。中心体原基がヌクレオチド(ATP・GTP・CTP・UTP)を凝集し、RNAを形成。
RNAが作られたのは、何故か? それは、中心体原基よりも分子量の多い物質を組成することにより、エネルギーを蓄積し、より触媒機能(反応活性)を高める方向への可能性収束と捉えることができる。この結果、多様なタンパク質の生成も可能となった。そして、さらに安定性蓄積とエネルギーを高めるためにDNAが登場。

●DNA複製システム/細胞分裂システム
さらに、分子量(エネルギー量)を増やすため、DNAを鋳型に、同じDNAを複製。また、DNA→RNA→タンパク質合成により、細胞は大きくなる。そして、体積-表面積のバランスが臨界点を越えると、細胞を分ける方向へ可能性収束、つまり細胞分裂へ。分裂により、細胞の数が増え全体としてはエネルギー量が増大する。
細胞分裂システムもまた中心体原基が主導した。(細胞分裂に関わるタンパク質…原核生物の収縮環、細胞骨格、真核細胞の紡錘糸、微小管も中心体同様の組成である)

こうして最終的に細胞分裂システムの完成をもって、原核生物は誕生した。「細胞分裂」は「生殖(生物の最重要課題=種の保存)の起源」でもある。

2.生命は内圧(エネルギー)を高める方向で可能性収束
ヌクレオチド⇒中心体原基⇒生体膜⇒RNA獲得⇒DNA獲得⇒複製・分裂システムの獲得・・・と生命誕生のシナリオを見てきましたが、ここから導き出される摂理(法則)は、全て内圧(エネルギー)を高める方向に可能性収束してきたということです。
このベクトルは、後の単細胞⇒多細胞化(細胞の共同体を形成)⇒群態化(集団や社会を形成)のベクトルとも合致します。

自然界をより大きな視点で見るならば、生物が登場した40億年前あたりから、地球環境は大きくは安定に向かいます。大気の組成はCO2→酸素に変わり、オゾン層が形成され、紫外線が遮断されていく。地球がもっていた豊かな反応系のエネルギーは生物に継承されていったと捉えることができます。

つまり生物誕生以来40億年、生物は一貫して、内圧(高エネルギーの蓄積場+反応系としての組織化)を高める方向で適応可能性へと収束してきた存在であると言えます。

※原始生命と群れ(追求ポイント)
最後に生命起源に関連するもうひとつの重要な論点として、挙げておきます。
生命誕生に至る過程は、必然的なベクトルを持つものの、極めて不安定、不完全なプロセスの連続であったことは想像に難くありません。そうした中で、「生命は誕生時点から不完全なもの(完結したものでは無い)であり、ゆえに共に生きてきた=群れる結果になった」という視点は極めて重要であると考えられます。
※参考:原始生命と群れ【仮説】 [5]

※参考:なんでや劇場レポート
●2007/06/17① 生命誕生~種の保存が最重要課題~
6/17なんでや劇場レポート1「生物史から学ぶ自然の摂理① 生命誕生」 [6]
6/17なんでや劇場レポート2「生物史から学ぶ自然の摂理① 生命誕生」 [7]
6/17なんでや劇場レポート3「生物史から学ぶ自然の摂理① 生命誕生」 [8]
●2009/01/25⑭ 生命の起源にせまる2~中心体が指令塔になれたのはなんで?~
1/25なんでや劇場レポートⅢ『生命の起源にせまる3~どうやって生命は誕生したの?(仮説)~』 [9]
●2009/03/01⑮ 生命の起源にせまる3~細胞の分子反応の“幹”は?~
なんでや劇場レポート1『生命誕生のシナリオ~「エネルギー」とはなにか?』 [10] 
なんでや劇場レポート2『生命誕生のシナリオ~進化とは「エネルギー」の増大と保存』 [11] 
なんでや劇場レポート3-1「生物=内圧を高める方向に進化してきた可能性収束の実現体」 [12] 
なんでや劇場レポート3-2「地球の安定化」と「生物の進化」、そして「宇宙」の関係性① [13] 
なんでや劇場レポート3-3「地球の安定化」と「生物の進化」、そして「宇宙」の関係性② [14]
 

[15] [16] [17]