2009-05-16

自然の摂理と「野生種⇒栽培種」の関係の歴史(2/2)

→前回 の続きです。
『●紀元前4000年頃:オリーブ、イチジク、ナツメヤシ、ザクロ、ブドウなどの果樹栽培』
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▲オリーブ(Wikipedia)    ▲イチジク(Wikipedia)    ▲ザクロ(Wikipedia)
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③繁殖システムを踏まえた選別
突然変異個体は、通常個体と交配すると、変異によってもたらされた有用な特性が薄れたり、消滅してしまうことがあります。それをどうやって克服したのでしょう?
根や塊茎などの栄養器官が分離して新しい個体をつくる栄養繁殖(栄養生殖)性の植物は、自植(自家生殖)性 なので、突然変異体でもその遺伝子を保存することが出来ます。また、雌雄同体で自植性の植物も突然変異の遺伝子を保存することが出来ます。
→イモ類や球根
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しかし、野生植物の圧倒的多数は、他植性の雌雄同体であるか雌雄異体です。にも拘らず栽培種となし得たのもは、定住生活に移行が完了していた人々が「挿し木」をするとか種子をまくことでした。
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『●ギリシア・ローマ時代:リンゴ、ナシ、スモモ、サクランボなどの果樹栽培』
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▲リンゴ(Wikipedia)          ▲ナシ(Wikipedia)        ▲スモモ(Wikipedia)
植物の突然変異は、繁殖システムに影響するものが多く、種無しバナナや種無しブドウもその類いだといいます。また、自家不和合性の植物が自家和合性となり、自分の花粉で結実できるようになる突然変異の例としては、リンゴ、スモモ、サクランボ、アンズなどがあるようです。
これらの果樹類は挿し木で育てる事が出来ず、種子をまいても実りの特性にばらつきがあって、骨折り損になることが多かった、といいます。それを克服する技術とは、「接ぎ木」だったそうです。原理自体は意図的に実験を繰り返さないと発見できないこともあって、農耕時代になってからも多くの時間が経てから実現した技術でした。
この項目に掲げた果樹類の野生種の多くは他植性の植物ですので、栽培種とするには、
・他家受粉を要しない突然変異体を見つけて育成する、とか
・遺伝的に異なる株を同じ場所に何種類か植えて、他家受粉を促す、とか
・雄株と雌株を同じ場所に意識的に植えてやるしかありませんでした。

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「野生種⇒栽培化」は、確かに「排泄場は栽培実験場」というような素朴な気付きに始まったかも知れません。しかし、ひたすら「果実が大きい/苦味がない/果肉部がたくさんある/油分が多い/繊維組織が長いetc.」などの選別栽培を続けることは、その効果を見極めるための対象同化・観察・探求を促進する事となり、背後に、今日で云う所の分子生物学や遺伝学などの自然の摂理をイメージできていたのではないか、と想えてなりません。
農業生産とは、そのような先人たちの功績を、悠久の時を重ねた塗り重ね構造の上に成り立っているようです。
参考図書:「銃・病原菌・鉄――1万3000年にわたる人類史の謎(上)」
      ジャレド・ダイアモンド゙著 /株式会社 草思社 発行
   by びん

List    投稿者 staff | 2009-05-16 | Posted in 6)“祖先の物語”番外編2 Comments » 

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コメント2件

 さんぽ☆ | 2009.07.25 19:58

冬虫夏草って、死んでいる虫に寄生するものだと思っていましたが、生きている虫に寄生して、だんだん身体を侵食していくのですね。
菌の威力、すごいです!

 s.tanaka | 2009.07.25 20:07

セミの幼虫から生えてくる冬草夏虫の姿は衝撃的ですね。
カビ・キノコが寄生する病気は、人間では白癬菌(水虫)やカンジダなどがありますが、
真菌類は動物と同じ真核生物なので、細菌より治療が難しいことも多いそうです。
wikipedea
キノコ侮りがたし・・・。

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