2009-05-13

両生類から哺乳類への進化の整理

 こんにちは。arincoです。なんでや劇場、生物史シリーズが終わって早1ヶ月。最近は、仲間と脊椎動物の誕生から哺乳類の誕生までを整理しなおしてみよう。という試みを行っています。
皆さんが既に追求している分野でもあるので、まとめるだけかなと思っていたら、結構大変だぞというのがわかった今日この頃です。
 さて、そのような訳で、本日は両生類から哺乳類までの進化をざくざくっと整理していきたいと思います。
 整理する前までは、
両生類に追われて爬虫類は乾燥適応、両生類にも爬虫類にも追われた哺乳類が寒冷適応
と考えていたのですが、単純にそういう訳でもなさそうです。
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①石炭期前期(3億6,000万年前~)の乾燥適応 両生類→有羊膜類へ
 両生類から進化を始めるのが概ね石炭紀と呼ばれる3億6,000万年程前からです。この時代は湿潤な熱帯気候で水際世界は肉食両生類が席巻していました。この肉食両性類に追われた種が陸に上がらざるを得なかったと考えることが出来ます。
 水辺→陸上生活に適応するために重要な課題は、「生殖」です。陸上では、両生類のような環境変化に弱く水中でしか発生することができない卵では駄目で、乾燥等の環境変化に耐えて発生を進ませることができるよう、防御する必要がありました。ここから卵の殻が出来てきます。殻で閉じられた卵になると、次に胚の発生に伴う老廃物の処理のための装置や生理機能が必要になります。こうして、羊膜をはじめとする胚膜が形成されました。この羊膜を持つ生物を有羊膜類と呼んでいます。
 有羊膜類としては、ウエストロティアーナ(3億3,800万年前)等が知られています。
Westlothiana_BW2.jpg
ウエストロティアーナ
②石炭紀中期(有羊膜類→単弓類(哺乳類の祖先)、竜弓類(爬虫類の祖先)へ
 乾燥適応した有羊膜類は、単弓類と竜弓類と呼ばれる生物へそれぞれ進化していきます。
単弓類は、哺乳類の祖先と言われ、分かっている中での最古の単弓類としては、アーケオシリス(3億1,130年前)です。アーケオシリスの生息地は、暑く湿った森林という事で、まだ寒冷適応はしていない段階です。
 a-keosirisu2.jpg
アーケオシリス
 また、竜弓類は、爬虫類の祖先とされており、特にその中の双弓類が知られています。最古の双弓類としては、ペトロラコサウルス(3億年前)とされています。
petororakosaurusu2.jpg
ペトロラコサウルス
 単弓類と双弓類の違いは、側頭窓という骨にあいている穴の数で分類されています。側頭窓が開くことによって、顎を大きく開けることができ、また下顎内転筋の付着面が広くなり、噛む力が増大します。
 分岐したのはほぼ同時期という事から、哺乳類と爬虫類の分岐は、最初期は、捕食機能の分岐だったと考えることも出来ます。(竜弓類系は以下爬虫類と表記)
③石炭紀後期 寒冷化による寒冷適応へ
 石炭紀後期には数百万年に及ぶが氷河期に突入しますが、ここで単弓類系は、寒冷適応する為に
「体温調節機能や摂取した食物を熱エネルギーに変え、かつ熱を汗腺によって発散する機能」
を獲得しています。つまりある程度の恒温性を獲得したのです。またこの延長で卵を胎内で育てる卵胎生も誕生しています。
 一方爬虫類は変温動物のままでしたので、この時点では、単弓類の方が、より広域の生息域を確保することで、石炭期後期からベルム期にかけて単弓類が繁栄することにあります。
 この時繁栄した単弓類は、エダフォサウルスやエステンメノスク等がいます。エダフォサウルスからは体温調節に使われたと考えられる帆、エステンメノスクからは汗腺の化石が発見されています。
 edafosaurusu2.jpg
エダフォサウルス
esutenmenosukusu2.jpg
エステンメノスク
④ベルム期 隕石衝突による火山爆発→温暖化及び酸素濃度低下へ
 しかしながら単弓類系の繁栄も長くは続きません。ベルム期(約2億5千万年前)に入り、大逆境を迎えます。この時期には、地球上の生物の95%が死滅した、P/T境界(ペルム紀-Perumianと三畳紀-Triassicの境界)と呼ばれる大絶滅が起こりました。この大絶滅は、南極への巨大隕石の衝突、若しくは激しい火山活動により地球全体が温暖化し、加えて著しい低酸素状態となったことが原因とされています。
 
 こうなると恒温動物であった単弓類は、一点して、爬虫類に比べて不利な状況に立たされます。というのも例えば現在の恒温動物の標準代謝量(=体内で使うエネルギーの量=呼吸による酸素量)は変温動物の5~30倍であり、恒温動物は、それだけ多くの酸素を必要とする生物なのです。
 この結果、ほぼ全種の単弓類は絶滅します。その中で唯一生残ったのが哺乳類だったのです。
 一方、変温動物である爬虫類は、相対的に多くが生残りその後恐竜等に進化して制覇種となっていきます。
 さて、哺乳類はなぜ生残ったのか。その適応方法が、「小型化」と「胎生」だと考えられます。
 例えば2.25億年前に生息していた原始哺乳類、アデロバシレウスは、体長10~14cm、体重が20~30gで、ペルム期末に生息していた単弓類である体長1.2mのディキノドンと比べると1/10まで小型化しています。
aderobasireusu2.jpg
 アデロバシレウス
dhikinodon2.jpg
 ディキノドン
  これは、小型化によって酸素消費量(代謝量)を低下させ、低酸素及び食料の恒常的な不足という逆境に適応していったと考えられます。単弓類の段階でも、すでに横隔膜を獲得し呼吸効率を改善していたものの、酸素濃度の低下には十分適応できなかったようです。
 
 さらに、単弓類は卵胎生であったのに対して、哺乳類は胎内保育をより長期化する胎生へと進化していきます。この生殖システムの進化も、わずかな酸素を確実に胎児に届けるためだったのではないか。と考えることが出来ます。
 このようにして、哺乳類は、大逆境を乗り越えていきました。
 とは言っても、逆境はそれだけでは終わりません。単弓類より有利な状況であった爬虫類が同じく大絶滅を乗り越えて恐竜類が登場したため、地上では相変わらず哺乳類は弱者です。しかも胎生化により生殖負担の増大という弱点も抱えることになってしまいました。
 そこで、哺乳類は強者の遺伝子を残すために、従来は成長過程で起こる淘汰過程を成体後に引き伸ばす事で、オス同士がメスの獲得を巡って激しく争う性闘争本能を激化させていきました。
画像は、古世界の住人様からお借りしました。
 このようにして現在の哺乳類の原型が出来あがりました。
次回は、爬虫類側の進化も少し整理してみようと思っています。
□大きな流れに関する参考投稿
両生類から哺乳類への進化
両生類~爬虫類・哺乳類の進化系統樹
哺乳類の進化(恒温→授乳→胎生)
逆境の連続が哺乳類を生んだ①
逆境の連続が哺乳類を生んだ②
古生代の地球環境と生物進化
哺乳類最大の危機「ペルム期大絶滅」
□哺乳類の機能進化に関する参考投稿
卵の進化過程
哺乳類への機能進化の流れ
哺乳類の恒温性獲得に伴う呼吸器官の発達

List    投稿者 arinco | 2009-05-13 | Posted in 1)海から河へ、そして陸へ(魚類→両生類)1 Comment » 

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コメント1件

 Me | 2017.07.20 23:13

今朝、5歳の息子から恐竜について質問責めされ、即答できない部分が多くあったので、こちらの記事で勉強させていただきました。とても助かりました☺

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