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共認機能が人類への進化につながった~人類化石から~

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約53万年前の人類化石から、障害を持つ子供の世話を何年も続けたと推測される頭蓋骨が発見されたようです。
 


障害児を育てていた初期人類 [1]

この頭蓋骨からわかるのは、この子供が約53万年前に生きていて、重度の障害があったが、それでも5年、ひょっとするとさらに数年生きていたと考えられることだ。10才頃という説もある。これは両親または共同体が、障害を持つ子供の世話をしていたことを示している。
 
人類が病気や身体の弱い者の世話を共同体の中で行なうことは、他の動物にない独特の特徴であると考えられている。研究者たちはこれを同種の世話と呼ぶだろうが、一般的には同情や共感と呼んでよいだろう。他の霊長類で同じような行動を見せるものはいないとされているので、人類はどこかの時点でこの能力を進化させたはずだ。科学者たちはその時期を明確に特定できていないが、今回の研究は、それが約50万年前であることを意味する可能性がある。
 
ばらばらの破片から頭蓋骨を復元した研究チームは、この子供が頭蓋縫合早期癒合症を患っていたと結論付けた。これは衰弱性の遺伝子疾患で、頭蓋骨の一部が早期に癒合してしまうため脳内の圧力が高くなる。これが原因で生じた精神遅滞が正確にどの程度だったかは特定できないが、かなり重度であり、共同体からかなり特別な世話を受ける必要があったと推測されている。
 
一方で、スタンフォード大学のDavid DeGusta氏(人類学)は、数種類の霊長類で、障害のある子供の世話をすることが観察されていると指摘する。これは、大人が別の大人の世話をするのとは異なる種類の行動だという。
 
重病の幼児が生きながらえることは、多くの霊長類で観察されていると、DeGusta氏は書いている。このような幼児に対する特別な育児行動は、野生のサルでも記録されている。結局のところ、幼児の世話は、哺乳類全体で基本的に見られる行動なのだ。
 
障害のある霊長類の子供が母親から何らかの世話を受けていることは、複数の研究で明らかにされている、とDeGusta氏は述べる。たとえば1973年の論文では、マカク属のサルの複数の母親が、盲目で生まれた赤ん坊の世話を1年まで続けたと報告されている。
 
頭骨は、スペイン北部で2001年に発見された。ネアンデルタール人の直接の祖先と考えられている初期人類ホモ・ハイデルベルゲンシスのものとされている。

 
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賛否あるようですが、自然界では生き残れない障害を持った子供の世話を、霊長類が行うのは、概ね事実のようです。
 
人類は樹から落ちたカタワの猿 [5]
 
足の指が先祖返りし、樹上生活にハンディのある個体が、集団から追い出されること無く、集団の中で生き残ることができた可能性があります。カタワ状態=本能的な障害があっても生きていけるのは、本能を超えた共認機能があったからこそ。人類への進化には、共認機能が大きな役割を果たしていたのではないでしょうか。

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