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様々なヌクレオチドの働き

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なんで屋劇場に触発されて、生化学の基礎を勉強しようと、「トコトンわかる図解基礎生化学 [1]」と言う本を読んでいましたら、ATP・GTP以外のヌクレオチドの働きが出ていましたので紹介します。UTPがグリコーゲンを作るのに、CTPはリン脂質を作るのに使われているそうです。その他にも、エネルギー作り出す過程で働いている重要なヌクレオチドもあります。
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■UTPがグリコーゲンを作る過程

まず、グリコーゲンを作るUTPですが、遺伝子の材料になるヌクレオチドの一種で、DNAには用いられず、RNAに用いられます。DNAはA・G・C・Tの4つのヌクレオチドから作られ、RNAはA・G・C・Uの4つのヌクレオチドから作られます。分子構造は次の通りです。塩基部分がピリミジン環と言われる構造になっていますので、ピリミジンヌクレオチドに分類されます。
UTP.png
グリコーゲンは、糖(グルコース)があまったときに貯蔵するために肝臓で作られます。ただし、グリコーゲンとして貯蔵される量は比較的少量で、蓄えられる限界に達するとグルコースは脂肪に変えられて蓄えられます。
グルコースからグリコーゲンが作られる過程を簡略化すると次のようになります。
グルコース+ATP→グルコース1リン酸
グルコース1リン酸+UTP→UDPグルコース
UDPグルコース+グルコース→グリコーゲン
グルコースにATPがリン酸をくっつけて反応しやすくし、リン酸がついているところにUTPがくっついてUDPグルコースになり、UDPがグルコースを他のグルコースにくっつけて離れていきます。

■CTPがリン脂質(細胞膜の材料)を作る過程

CTPはUTPと同じピリミジンヌクレオチドの一種で、分子構造は次の通りです。
CTP.png
リン脂質は細胞膜の材料にもなっている重要な物質です。疎水性の高い脂質と、親水性の高いアルコール類をリン酸がつないでいる構造をしています。CTPの役割は脂質にアルコール類をつなげる事です。その過程を簡略化すると次のようになります。リン脂質もいろんな種類がありますが細胞膜に使われているホスファチジルイノシトールと言うリン脂質で見てみます。
ホスファチジン酸+CTP→CDPジアシルグリセロール
CDPジアシルグリセロール+ミオイノシトール→ホスファチジルイノシトール+CMP
ホスファチジン酸は脂質で、脂質とアルコールをつなぐリン酸もくっついている状態です。ここにまず、CTPがくっいてCDPジアシルグリセロールになります。このCDPと入れ替わるように、ミオイノシトールがくっつくことで、リン脂質が完成します。

■クエン酸回路からエネルギーを伝達するNAD、FAD

NAD、FADは一般にはあまりなじみのない物質ですが、生命のエネルギー源であるATPをつくる過程で重要な役割を果たす物質です。食物として摂取した糖などの栄養分をエネルギーに変える過程は、解糖系→クエン酸回路→電子伝達系+酸化的リン酸化という3段階で構成されます。
それぞれ、反応が進む場所も違って、解糖系は細胞質で、クエン酸回路はミトコンドリアの細胞質で、電子伝達系+酸化的リン酸化はミトコンドリアの内膜で行われます。
この中でクエン酸回路(ミトコンドリアの細胞質)から電子伝達系(ミトコンドリアの内膜)にエネルギーを伝えるのがNADとFADです。1個のNADから3個のATPが、1個のFADから2個のATPが作られます。
NADはコチンアミドデニンヌクレオチドの略称です。この意味は、ニコチン酸アミドを塩基に持つヌクレオチドと、アデニンを塩基に持つヌクレオチド(AMP)の二つがくっついたヌクレオチドと言う意味です。ニコチン酸はビタミンの一種で、体外から摂取すると同時に、アミノ酸からも合成しています。分子構造は次の通りです。
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FADはラビンデニンヌクレオチドの略称でフラビンを塩基に持つヌクレオチド(フラビンモノヌクレオチドFMN)と、アデニンを塩基に持つヌクレオチド(AMP)の二つがくっついたヌクレオチドと言う意味です。分子構造は次の通りです。構造の特徴はFMNの糖鎖が環状ではなく直鎖状になっているところです。
Flavin_adenine_dinucleotide.png
FMNはビタミンB2のリボフラビンにリン酸が結合して出来ます。リボフラビンは、糖であるリボースと、塩基であるフラビンの化合物ですから、ヌクレオシドの1種です。そして、このFMNは単独で電子伝達系で重要な働きをします。クエン酸回路でつくられたNADが運んでくるエネルギーを、電子伝達系で最初に受け取るのが、FMNなのです。
この二つのヌクレオチドのつながり方は、遺伝子がつながるときと違ったつながり方をします。遺伝子はリン酸と糖がつながるのに対して、NAD、FADではリン酸同士がつながります。

■クエン酸回路を動かすCoA

CoAはATPとビタミンBの一つ(パントテン酸)の化合物でヌクレオチドではないようですが、構造の一部にヌクレオチドが使われており、働きが重要なのでここで紹介します。分子構造は次の通りです。%EF%BC%A3%EF%BD%8F%EF%BC%A1.jpg
末端にあるSHのところ(チオール基)に様々な化合物が結合することによってクエン酸回路などの代謝反応に関わります。クエン酸回路では、アセチル基が結合したアセチルCoAが重要な役割を果たします。具体的には、クエン酸回路は、クエン酸が様々な化学反応を経てオキサロ酢酸に変化する過程で、先ほど紹介したエネルギーを伝えるNADやFAD、GTPなどの物質を作り出すのですが、最終生成物であるオキサロ酢酸をクエン酸に戻して、クエン酸回路を再起動させるのが、アセチルCoAなのです。その過程を簡略化すると次のようになります。
グルコース→解糖系→ピルビン酸
ピルビン酸+CoA→アセチルCoA+CO2
アセチルCoA+オキサロ酢酸→クエン酸
クエン酸→クエン酸回路→オキサロ酢酸+NAD、FAD、GTP
NAD、FAD、GTP→電子伝達系+酸化的リン酸化→ATP
余談ですが、2段目で出てきているCO2が呼吸で吐き出される二酸化炭素です。良く、体内で炭素を燃やして(酸素と結合して)エネルギーを作り出すと言われますが、酸素が使われるのは一番最後の段の電子伝達系で水素イオンと結合し水にするためです。エネルギー代謝の過程全体を見ると酸素を燃やしてエルギーを作り出し、二酸化炭素を排出しているように見えますが、実際の科学反応は間に何段階もの別の化学反応をはさんでいるのです。
また、CoAはATPがあまった場合にアセチルCoAをつなげて脂肪酸をつくり、脂肪として蓄え、逆にATPが不足した場合に、脂肪を代謝してアセチルCoAを供給し、クエン酸回路を動かしてATPを作り出すといった役割もしています。

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