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中心体とDNAを結ぶ情報伝達物質

今日はDNAと中心体が情報交換をしながら細胞分裂を進めているというお話です。
核の外で作られるタンパク質や核内で作られるRNAは核膜を通して交換されます。核内に輸送されるタンパク質は核タンパクと呼ばれ外部情報を伝達していると言われています。これら高分子量タンパク質やRNAなどは核膜孔(脊椎動物では10nm)より大きいためエクスポーチンとインポーチンと呼ばれる輸送タンパクと結合することでコンフォメーション(形)を切り替え核膜輸送を可能としています。
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これら輸送タンパクの活性を調節するのがRanタンパクで、GTPやGDPと結合します。RanとGDPが結合すると輸送タンパクは核内に入り、RanとGTPが結合すると核の外に出ます(エクスポーチンは核外輸送をインポーチンは核内輸送を担う)。
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画像他理研ニュース [1]を参考にしています。
RanGTP濃度勾配によって核内外の物質輸送が決まるだけでなく、微小管形成の方向性や核膜形成にも関与しています。さらにRanのGTP,GDPの交換物質が染色体にも存在し、細胞分裂の制御の重要な役割を担っているようです。

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細胞分裂時に染色体と中心体との間でRCC1やRanなどの物質を通じて情報交換を行っているようです。RCC1は染色体(クロマチン)に、Ranは細胞質に存在し、染色体が凝縮されるとクロマチンにあるRCC1がRanGTP,GDPを介して中心体にシグナルを伝達します。
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細胞複製は時間的制御と空間的制御を合わせた四次元の機構により制御されている。クロマチンにあるRCC1はDNA複製と言う時間的事象とRanによる空間的事象の接点として機能していると推測している。つまりクロマチンにおけるRCC1はDNA複製の状況を感知して、Ranサイクルを制御することで、時間的制御と空間的制御をカップリングしているのでは。
染色体サイクル 「動物由来体細胞の細胞増殖温度感受性変異-RCC1とHCF-」西本毅治 [5]

さらにRanは他の情報タンパクとともに核膜が崩壊した後に、中心体から伸長された紡錘体を染色体の動原体に誘導しています。
RanやRanと結合するGTP、GDPヌクレオチドの組み合わせによってDNA(染色体)と中心体の間で様々な情報を交換し細胞分裂の周期を制御しているようです。
参考:細胞核内への分子の取り込みをつかさどる2種類のタンパク質は、細胞分裂時の標的輸送で意外な役割を担っていた [6]

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