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「群れ」についての過去記事紹介

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今日は、蓄積された過去の記事やるいネット投稿の中から「群れ」についてピックアップしてみたい。
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■群れのメリット
●免疫力が上昇 [4]
群れることで、外敵圧力に対するストレスが弱まり、免疫細胞が活性化する。人間でも同じだが、免疫系はストレス(不安)に極めて過敏に反応する。群れる仲間が存在せず、生存可能性の低い外敵圧力下では、免疫細胞が活性化せず、容易に病気になる構造にあると考えられる。
ウィルスや病原菌が群全体に繁殖→その分抗体製作スピードが上がると言うこと。ウィルスの感染などは一気に群全体に広がる。これは適応上不利だと感じるが、早期に多様なウィルスに感染することは、それだけ抗体製作も早くなり、群全体では適応力が上昇する。これは人間の子供の実験データとしても解明されており、集団遊びを幼少期から積極的に行っている子供程、免疫力が上昇することが判明している。
●エネルギー消費量を抑えられる [5] 
小型哺乳類は、寒いところでは固まりあうことで、生き抜きます。お互いの身体が熱源になるわけです。ヘビでも、一匹でいるより数個体が固まっている時の方が代謝が低下し、酸素消費量が少なることが知られています。
●外敵から身を守れる [6]
鳥やサルなど群れでいる生物では、ある一匹が敵を見つけて声を上げることで、群れ全体が敵に気づくことによって被害を最小限にするという行動様式がよく観察されます。
●安定して子孫を残せる [6]
群れでいると、生殖のチャンスが増え、安定して子孫を残すことができます。また、群れの個体が様々な組み合わせで生殖の機会を持つことができれば、群れの中の個体の多様性が保たれ、外圧(急な環境変化)や病原体に対して耐性(生き残る確率)が高くなります。
■原始生命の群れ(仮説) [7]
最初の生命あるいは細胞は、我々が今日考える生物とは大きく異なり、極めて未熟な発展段階にあったと考えられる。
こうした不完全な原始細胞が多数集合して代謝産物を次々と交換していく事で、初めて1個の独立した生命として機能を果たしていたのだろう。いわば、様々な異なる機能を持ち互いに補い合う原始細胞の集団が、1個の完結した生物であったと見る事もできる。
つまり、全生物の共通祖先は「1つの細胞ではなく、共同体的にゆるく連帯した多様な原始細胞」の一群であった。生命は独立した細胞とは言えない様な段階から、一種の生態系を形成する事で生きてきたのである。以後、少しずつ1つの細胞内に必要なDNAを集中させていく事で細胞の機能を拡大し、徐々に生物としての完結性・独立性を高めていったと考えられる。
生命は誕生時点から不完全(完結したものでは無い)なものであり、ゆえに共に生きてきた=群れる結果になった。
■組織的階層進化 [8] 
真核単細胞生物とは原核単細胞生物が寄り集まって、より上位の階層で全体を統合する組織機構を実現したものと見なすことも可能だ。生物界では真核細胞内に存在する小器官をオルガネラと総称するが、それ以前にはひとつの生命体として存在していた原核細胞生物が、真核細胞時代には、単独では生きていけないかわりに、新しい生命体‘全体’を協働して支えていくオルガネラという‘部分’に継承されることで、生命体自体は真核細胞という新しい次元での生存を勝ち取ったとも言えるだろう。
このような‘組織的階層進化’とも呼べる様相は、真核単細胞生物が多細胞生物に進化していく段階にも見てとれる。言うまでもなく多細胞生物は数限りない真核細胞で構成されているが、これは、原核単細胞がオルガネラに言わば‘後退’することで真核単細胞生物という新しい位相に進化したのと同様に、真核単細胞が要素や部分(≒オルガネラ)に‘後退’することで、多細胞生物という次のステップの統合様式が登場したように見える。
さらに、真核細胞の集合体・統合体として生存している多細胞生物も、次の階層では群れ=集団を形成し、生存そのものを集団に依存しながら、種としての存続を続けている。もっと言えば、集団動物の中でも共認機能を手に入れた霊長類は、集団単位の同類闘争という新しい様式に適応して、集団という階層のさらに上位に位置する社会という場を主要な生存域としようとしている。
つまり生物史とは、前の生命体が部分として活躍できる新組織を実現していく中で、新組織の統合様式が階層的に進化することで今日までの系譜を残してきた。この‘階層進化’とは‘新パラダイム’の到来・獲得に他ならないと思う。我々が最近よく耳にする‘パラダイム・シフト’という言葉も、生物史を紐解いてみれば、生命の進化メカニズムの基底的な構造や摂理のひとつと捉え直すことができるだろう。

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