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マリグラヌールって何?生き物といえるの?

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この画像は理科ネットワーク [1]マリグラヌールの生成 [2]からお借りしました。
このブログでも紹介された事のあるマリグラヌールですが、一般的にはあまりなじみが無いもので、初めてこの名前を聞いた方も多いのではないかと思います。
実験で作られた、自己複製の能力があるタンパク質で、生命の起源に近いものではないかといわれています。興味をもたれた方は応援もお願いします。
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■マリグラヌールの作り方
マリグラヌールの材料は9種類のアミノ酸混合物、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンです。
これを太古の海を模した環境である修飾海水に入れて、4週間105度で反応させて作ります。修飾海水はモリブデン・亜鉛・鉄・銅・マンガン・コバルトのような遷移金属濃度を現在の海水の1000倍から1万倍多く含んでいる模擬海水です。
この修飾海水のように高濃度の遷移金属を含む海水は現実には存在しないと思われていましたが、深海底の熱水噴出孔海水が以上に高濃度の金属イオンを含んでいることが分かりました。

■マリグラヌールってどんなもの?
海(marine)環境で生成した粒子(guranule)という意味でマリグラヌール(mariguranule)と名づけられました。マリグラヌールは直径0.3から2.5ミクロンの球形状で多くのものは連結構造をしているそうです。
また、マリグラヌールの精製初期の段階で、マリソームと名づけられた中空の小胞も見出され、これはマリグラヌールに比べ柔らかく弾力性があるそうです。マリソームを水に分散させると一部パンクし外界との間に明確な柔らかい境界膜を持っていることが分かるそうです。

■マリグラヌールは自己複製するの?
マリグラヌールで検索して調べると自己複製することが出来るという記載が多く見られます。
「幾つかの球体がつながった連結構造をして発芽によって増殖すると言う。」 [6]
「このマリグラヌールは出芽のような様式で新しい球状体を分裂させていくこともできる。」 [7]
「連結構造は2つの粒子が結合した結果できたものではなく、内部からの発芽によってできたものである。連結構造は酵母の発芽を彷彿させる。」 [8]
自己複製の詳しい仕組みは、はっきりしません。しかし、DNAのような複製の設計図を持っていないことは間違い無さそうです。どうも、材料となるアミノ酸と、触媒の役割を果たすと思われる金属と、高い温度があれば結晶が出来上がるように、自己組織化して出来ていくようです。

■マリグラヌールは生き物といえる?
マリグラヌールの発見者のお弟子さんが次のように述べています。「私の先生である江上不二夫先生はマリグラヌールという膜で包まれたものを作り出されたんです。もっともこれは続く能力はもっていませんが。」 [9]
どうも、マリグラヌールは普通の環境で増殖し続けるものではないようです。実験的環境下で球形の連結構造が出来上がることから、出芽のような形で形成されていると考えられているようです。
そして、形成の初期の過程にマリソームといわれる中空の膜が出来、その中にアミノ酸が入って連結増殖し、出芽しながら増えていくようです。
実験環境では、最初に入れた材料しかありませんから、それが無くなればそれ以上成長しませんが、原始海洋のように材料が沢山あれば、材料がある限り出芽が続くのかもしれません。
いずれにしても、一定の環境と材料がそろえば、RNA・DNAが無くても、アミノ酸とアミノ酸重合体が化学反応しながら、同じような形態を複製していくことが可能なのは間違いないようです。
生命活動は化学反応の組み合わせではありますが、感覚的には生命活動というよりも、まだ、化学反応の段階という感じがします。生命と物質の中間にいて、生命の3歩手前といったところでしょうか。

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