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GADV仮説

 RNAワールド仮説は現在、多くの研究者によって支持されているが、疑問をもつ研究者もいる。その中には「生命はタンパク質からはじまった」という説が古くからあり、「タンパク質ワールド仮説」と総称している。その中でも奈良女子大学理学部の池原健二教授は、GADV仮説を唱えている。
 NewTon別冊にGADV仮説が述べられているが、るいネットの「GADV仮説」 [1]ではそれを要約し考察を述べている記事があるので紹介したい。
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 「タンパク質ワールド仮説」の一つであるが、先ずグリシン(G)、アラニン(A)、アスパラギン酸(D)、バリン(V)の4種類のアミノ酸が出現したというところがユニークな点だ。

>これら4種類のアミノ酸は、ミラーの実験やそれに類似する実験において、無機物から容易に合成されることが分かっている。また、隕石にこれらのアミノ酸が含まれている例も知られている

>これら4種類のアミノ酸を含む水溶液をくりかえし蒸発させると、4種類のアミノ酸が中心となってランダムに結合しただけのタンパク質ができます。このようなタンパク質でも、わずかながらタンパク質の分解反応を触媒できることを確かめています。生命の誕生には、設計図を必要とするような高級なタンパク質でなく、4種類のアミノ酸がランダムにつながったタンパク質で十分だったのではないでしょうか

>①4種類のアミノ酸が出現した
→②波打ち際でアミノ酸がつながった→タンパク質ができ、「擬似複製」(正確な複製ではないが、自身と似た分子をつくる)がはじまった。
→③細胞膜を獲得した(アスパラギン酸(D)は親水性が高い、バリン(V)は疎水性が高い。)
→④RNAを獲得した(多彩な機能をもつGADVタンパク質が出現し、RNAなどの核酸を合成できるようになった。その後、RNAがもつ遺伝情報にもどづいて(さらに高級な)タンパク質を合成するシステムが出現した

●RNAワールド仮説の問題点

原始地球の環境を想定した実験ではアミノ酸やポリペプチドは容易に合成されるが、リボヌクレオチドの合成は困難である。(実験でつくられた例はないらしい。リボヌクレオチドを含む隕石の例もないらしい。)RNAが自然状態でいきなり登場したとは考えににくい

RNAは化学的に不安定で分解されやすく、タンパク質などと複合体を形成しない限り、RNA単独では原始スープの中で安定して存続する事は難しい

RNAが触媒活性を持つ(リボザイム)とは言うものの、それが極めて限られたものであり、タンパク質酵素の活性とは比べ物にならない。実際、タンパク質と結合していない裸のRNAの活性は非常に低い

原始地球の深海底で、RNAよりはるかに多く存在したと考えられるタンパク質と相互作用する事なく、RNAだけで生命を形作ったとは考え難い

●考察

・ある時点で、生命はRNAとタンパク質の両方を利用する(RNP)段階に移行したという点では、多くの学者の説は一致しているらしいが、さらに原点を探るうえでは、RNAが先か、タンパク質が先かという問題が追求される必要があるだろう。

・現在学者の間では、RNAワールド仮説が主流らしいが、リボヌクレオチドよりは、アミノ酸やポリペプチドの方がはるかに合成されやすいという事実を考えると、RNAワールド仮説はかなり怪しいのではないか。

・GADVの4種類からつくられるタンパク質だけでも、弱い触媒能力をもつという事実は、それらのタンパク質が酵素原基となり、リボヌクレオチドからRNAを合成する触媒の役目をしたという可能性を示唆している。GADV仮説は注目に値する。

・タンパク質だけで細胞膜を形成し得るのか?については現在追求中(マリソームやマリグラヌール)だが、タンパク質とリン脂質二重膜は、非常にくっつきやすいという性質を考えると、安定的な構造を獲得するために、かなり早い段階からタンパク質とリン脂質二重膜からなる生体膜は形成されていたのではないだろうか?

・「ヌクレオシドに水に溶けない疎水性のリン脂質を結合させて複合体(5′ホスファチジルヌクレオシド)を作ると、この複合体は水溶液中で自然に自己集合し、40~50程のヌクレオチドが連結した、DNAやRNAに似た直線状や環状のらせん構造体を形成するリンク」という事実は、リン脂質二重膜(タンパク質と複合した生体膜)ができることによって、ヌクレオチド→RNA合成の反応が加速されたことを示唆している。

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