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新型インフルエンザ H5N1型ウイルス

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近年大きな問題となっているのが、H5N1型ウイルスの新型インフルエンザ。この新型ウイルスは人が免疫を持っていないため、世界的に大流行(パンデミック)すれば誰もが命の危険にさらされる危険性があるという。
その正体とは?
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12月1日、内閣官房は「新型インフルエンザ対策行動計画」(改定案)および「新型インフルエンザ対策ガイドライン」(案)に対するパブリックコメント(意見の募集)について発表した。
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新型インフルエンザは、毎年流行を繰り返してきたインフルエンザウイルスとは表面の抗原性が全く異なる新型のウイルスが出現したことにより、およそ10年から40年の周期で発生しています。ほとんどの人が新型のウイルスに対する免疫を持っていないため、世界的な大流行(パンデミック)となり、大きな健康被害とこれに伴う社会的影響をもたらすことが懸念されています。
 このため、「新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザに関する関係省庁対策会議」(以下「関係省庁対策会議」という。)では、平成17年12月に国の取組と対策を明記した新型インフルエンザ対策行動計画を策定し、その後も最新の科学的知見を取り入れ、見直しを行ってきたところです。

この発表にあるとおり、新型ウイルスの脅威はかなり大きなものになると予測されている。その被害の大きさを厚生労働省では以下のように予測している。

日本政府は人口の約1/4の人が感染し、医療機関を受診する患者数は最大で2500万人と仮定して、対策を講じています。
 また、過去に流行したアジアインフルエンザやスペインインフルエンザのデータに基づき推計すると、入院患者は53万人~200万人、死亡者は17万人~64万人と推定されています。しかし、これらはあくまでも過去の流行状況に基づいて推計されたものであり、今後発生するかも知れない新型インフルエンザが、どの程度の感染力や病原性を持つかどうかは不明です。
 これ以上の被害が生じる可能性を否定できない一方、より少ない被害でとどまる可能性もありますので、実際の発生状況に応じて柔軟な対応がとれるように準備しておく必要があります。

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このように今回の新型インフルエンザに対しては、国をあげての対策が講じられようとしている。
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※ではその正体とは何者か?
▲新型インフルエンザの歴史
新型インフルエンザは、毎年流行を繰り返してきたインフルエンザウイルスとは表面の抗原性が全く異なる新型のウイルスが出現したことにより、およそ10年から40年の周期で発生している。
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・上記表は20世紀に登場したウイルスの歴史 リンク [7]
※共通項として上げられるのは全てインフルエンザウイルスA型ということです。
▲A型とはなにか?

A型インフルエンザウイルスは、直径80-120nm程度の、エンベロープを持つマイナス鎖の一本鎖RNAウイルスである。ただし患者から分離した直後に実験室で培養したものでは1-2μm程度の繊維状の形態を示すことがあり、この場合は光学顕微鏡での観察も可能である。
インフルエンザウイルスのエンベロープは、ウイルスが放出されるときに宿主となる細胞の細胞膜を獲得したもので、その表面には10nm程度の長さの2種類のスパイクが存在しており、それぞれヘマグルチニン(血球凝集素、HA)、ノイラミニダーゼ(ニューラミニダーゼ、NA)と呼ばれる。

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▲ヘマグルチニンはウイルスの脱殻に重要な働きを示す。

ウイルス核酸が実際に細胞質に放出されるには、これに加えてヘマグルチニンのもう一つの性状が重要になっている。ウイルス粒子表面のヘマグルチニンは、最初HA0と呼ばれる一つのタンパク質であるが、気道や消化管の細胞や黄色ブドウ球菌などの細菌が分泌するタンパク質分解酵素の働きによって切断され、HA1とHA2という二つのタンパク質になる。この現象をHAの開裂と呼ぶ。HAの開裂は、ウイルスの吸着や細胞内への取り込みには関係がないが、その後、ウイルス粒子が細胞内部で分解されてウイルス遺伝子を放出する脱殻の過程には必須である。
HAが開裂するとその立体構造が崩れるため、ウイルス粒子が壊れやすくなるが、HA0の状態のウイルスでは強い立体構造のままであり脱殻が正常に起こらないため、その後のウイルスの増殖が起こらない。インフルエンザウイルスが、ヒトでは呼吸器に、トリでは消化管に感染する理由は、レセプターの発現の有無に加えて、このタンパク質分解酵素が存在するかどうかも重要であると考えられており、ヒトにおいては、気道に存在するクララ細胞が分泌するトリプターゼ・クララというタンパク質分解酵素やプラスミンが、この役割を担っていると言われる。また、黄色ブドウ球菌などの細菌とインフルエンザウイルスの混合感染が起きると重篤化しやすいことも、HAの開裂から説明される。

▲強毒型あるいは高病原性インフルエンザウイルスとはなにか?

インフルエンザウイルスの一部には、これらの特殊なタンパク質分解酵素(トリプターゼ・クララ)に頼らずとも、細胞内に存在する通常のタンパク質分解酵素によって容易にHAの開裂を起こすものがある。このようなウイルスは気道や消化管だけでなく全身の細胞で増殖できるために、急激かつ重篤な感染を起こす。
強毒型あるいは高病原性インフルエンザウイルスとよばれるものには、このように変異したHAを持つものが多いことが判っており、ニワトリに大量死を発生させる高病原性トリインフルエンザがこの代表例である。ヒト由来のウイルスはほぼすべて弱毒型であるが、唯一、1997年に香港で発生した「H5N1亜型」が高病原性であった。

※今回話題になっているH5N1亜型ウイルスは高病原性であることが最大の特徴である。低病原性のウイルスが呼吸器などの限定された細胞に感染するのに対して、高病原性ウイルスはほとんど全ての臓器に感染する。この結果致死率は70%以上とされ、史上最強といわれたスペイン風邪(これは低病原性)をもしのぐパンデミックの脅威だといわれています。
しかしウイルスという脅威はまだまだ解明が不十分でもあり、発生周期といわれる10年から40年周期もその因果関係の解明はされていません。
また鳥からの感染経路についても疑問視する 意見 [9] もあり、事実解明以前に、その予防対応の方法だけがクローズアップされています。
どことなく違和感の残る報道ですが、こういった問題こそ事実追求の必要性を感じます。

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