- 生物史から、自然の摂理を読み解く - http://www.seibutsushi.net/blog -

生命の起源(DNA、RNA、タンパク質ワールド説)の紹介

DNAに保存された遺伝情報が、RNAを介して、タンパク質を作る。
今では当たり前のように言われているこの一連の流れをセントラルドグマといいます。
DNA・RNA・タンパク質、それぞれ生物にとって、とても大切でなくてはならないものです。
生命の起源を考えるとき、この大切な3つの物質のどれが一番古くから存在しているのか、ということが度々議論されてきたようです。
🙄 やっぱりDNAが一番古い?
…と思いきや、酵素(タンパク質)の触媒作用がないと、DNAやRNAを長い鎖状につないでいくことができないとされています。
じゃぁ、タンパク質(酵素)が先にあったのかな?
…というと、タンパク質はRNAの鋳型をたよりに作られているので、RNAが先に登場していないとタンパク質は登場しないということになってしまいます。

うぅ~…。どうなってんの? 🙁

1950年代から、こうした議論がされてきたのですが、それらは「DNAワールド仮説」、「RNAワールド仮説」、「プロテインワールド仮説」と呼ばれています。
今日は、このへんの話を紹介します。
応援お願いしますおねがいします  
ブログランキング・人気ブログランキングへ [1] にほんブログ村 科学ブログへ [2]   [3]


解明の鍵となるのは、「情報伝達機能」「触媒機能」の連携がどうなっているのかということや、自分自身で増殖できる機能があるかということです。
現在では、「情報伝達機能」を持つRNAに、実は「触媒機能」もあることが発見されたりしたため、RNAがもっとも古くから存在しているのではないだろうか、というのが主流のようです。(でもまだ矛盾があって断言できない。)
では、せっかくなので、3つの説を紹介します。

<RNAワールド仮説>
RNAには自体の分子を切断、貼り付け、挿入、あるいは移動したりする活性を持ったものがあり、これをエンザイム(酵素)にならって「リボザイム」と呼んでいる。
また真核細胞では、mRNA分子には遺伝情報を持ったという部分(=イントロン)の間に多くの情報を持っていない部分(=エクソン)が介在しているが、mRNA自体の「触媒作用」によって、エクソンを切り捨ててタンパク質への翻訳をしやすくする「スプライシング」という反応が行われている。
さらにレトロウイルスというウイルスは、1本鎖RNAでできているが、これに逆転写酵素という酵素が作用して、原RNAが保有していた遺伝情報をコードしたDNAを合成することができる。この場合にもRNAの「触媒機能」が発揮されている。
以上のような事実から、原始環境下ではRNAがまず生まれ、その触媒作用によってDNAがつくられ、以後はDNAを持った原始生命体に進化していったと考えるのがRNAワールド仮説である。この仮説で有力な点は、RNAはDNAに比して変異導入率が高く、進化速度の速いことが期待される点である。

<プロテインワールド仮説>
この説は、ユーリー・ミラーの実験に見られるように、原始大気組成の下でアミノ酸が合成されたこと、特にグリシン(G)、アラニン(A)、アスパラギン酸(D)、バリン(V)から成るペプチドが形成されており、このペプチドは高い触媒活性を持っていることを考慮に入れて組み立てられた仮説。まずタンパク質からRNAに遺伝情報が伝達され、それがDNAに渡されて原始生命体がが出来上がったとされる。
タンパク質の触媒活性が高いことから、支持者は多いが、ペプチドに複製能力がない点は欠点の一つとなっている。

<DNAワールド仮説>
セントラルドグマの図式が生命誕生以来活動していたとすれば、遺伝情報を担っていることが確実で、複製機構も整っているDNAが生命誕生のスタート台に立っていたと考えるこの仮説は不自然ではない。だが、DNA自体に触媒活性がなために遺伝情報の伝達はできず、複製もできないことになるので、この仮説には致命的な欠陥があった。
ところが最近、DNA分子をつなげることのできる触媒作用を持ったDNA(=デオキシリボザイム)が発見されたので、DNAにも触媒作用を持つものがあることは分かったが、その触媒作用は著しく低レベルなので、少なくとも現状ではDNAワールド仮説の支持者は少ない。

身近な微生物の話 [4]から引用し一部編集しました。
————————-
ちなみにRNAとタンパク質は、大雑把にいうと、次のように展開していったと考えられています。

原始スープ(注1)
  ├────────┐
  ↓          ↓
RNAワールド  プロテインワールド
  ├────────┘
  ↓
RNPワールド(RNAとタンパク質が協働)
  ↓
DNAワールド
(注1)46億年前の原始地球の海洋中ので、硫化水素、メタン、アンモニアなどに、雷の放電や宇宙線、紫外線などのエネルギーが加えられて、アミノ酸やヌクレオチドなどの有機化合物が、少しずつ合成され凝縮した状態を「原始スープ」と呼んでいます。

いろいろな物質の協働作業によって、生命は進化してきたんだなぁ~ 、とあらためて感心するばかりです。
参考文献「RNA学のすすめ」柳川弘志著 講談社

[5] [6] [7]