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11/23なんでや劇場レポート2 (補足)

生命原理の探究では、より原始生命に近い、原核の細胞分裂に踏み込む必要があります。しかし実は、分子生物学の世界でも、原核研究は真核ほど進んでいません。なんでや劇場で「仮説」とされたのは、このため。
 
本日は『生命の起源にせまる~細胞分裂の司令塔は誰?~』第二弾。研究発表されている事実を元に、原核と真核の各細胞分裂を比較しながら、分裂システムの原基構造に迫ります。
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■細胞分裂はエネルギーを要する仕事
 
真核生物は、微小管形成中心から微小管を伸ばし核を分配します。第1弾 [4]では、微小管形成にGTPやGDPのようなヌクレオチドが関係していると紹介されました。細胞分裂には、エネルギー交換が必要とわかります。原核生物の細胞分裂システムを探る上では、このヌクレオチドが重要な着眼点と考えられます。
 
 
■原核の細胞分裂でもヌクレオチドに関する機構が存在する
 
GTPやGDPで細胞分裂する機構が、原核生物にも存在します。FtsZリングと呼ばれています。普段は、細胞膜の螺旋状細胞骨格に分布していますが、細胞分裂を開始する際、細胞中央に集まり、リングを形成するようです。
 
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下図は、原核細胞を輪切りに示したモデルです。原核生物は、図のように反応を繰り返すことで、細胞膜をくびれさせ細胞分裂します。
 
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図は蛋白質核酸酵素2008年10月号からお借りしました。
 
 
※さらに詳しく知りたい方はこちらもどうぞ
 原核の細胞分裂 [5] Zリング [6] MreB [7] 葉緑体を中心とした植物の細胞分裂 [8]
 
 
■真核に至る進化で分裂システムが専門分化した (仮説)
 
原核には、FtsZリングのようなエネルギー交換による細胞分裂機構が存在します。しかし真核の微小管形成中心のような、細胞分裂全般を統合する器官は、今のところ確認されていません。
 
原核の場合、核と細胞内容物がおよそ半分に分裂できれば、それぞれ生存可能ですが、真核は核だけでなく、主要な細胞内小器官も含め、正確に分裂する必要があります。このため、細胞分裂全般を統合する器官が、専門分化したのではないかと考えられます。
 
 
■細胞内エネルギー計測機構が分裂システム原基 (仮説)
 
FtsZは、エネルギー交換を利用して細胞分裂を担います。逆に考えると、エネルギーが細胞内に必要な量だけ溜まらないと、細胞分裂できないということです。FtsZを構成するヌクレオチドは、細胞分裂役割と同時に、細胞内のエネルギー計測役割も担っている可能性があります。
  
このセンサー機能を特化し、真核では微小管形成中心が、細胞分裂を統合する専門器官になったのではないかと考えられます。
 
 
なんでや劇場では、エネルギー交換に着目すると分裂機構の組織群がさらに鮮明に見えてくるのではないかと示唆されていました。非常に重要な着眼点ではないかと思います。生物史グループでも、引き続き注意深く調べていきたいと思います。
 
明日は、中心体の重要な役割について、迫りたいと思います。お楽しみに。

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